第2話
翌日、花と拓海の三人で中庭のベンチでランチをしている時に、瑞希は思い切って昨日の出来事を二人に話してみる事にした。
「それで付き合っちゃったの!?」
「しーっ!!花ちゃん声が大きいよー!」
「危ない、危なすぎる。類は良い奴だけど、付き合うとなるとな〜。」
「た、拓海くんまで……。」
「だってそれ、もし瑞希だけが好きになっちゃったらどうするの?」
「えーっと……。(好きっていうかなんて言うか、まだよく分からない……。)」
「他の女子と確実に同じ道を辿ることになるなぁ。」
拓海にそれを言われると、確かにと妙に納得して空気が重くなる。
「不破さん!」
そんな重苦しい空気を払うように、校舎から類がこちらに駆け寄ってくる。
「類くん!どうしたの?」
「はぁっ…はぁっ…、教室に行っても居なかったから、探し回っちゃった。」
「そ、それはごめんね。」
「いやいや、何も言ってない俺が悪いから。」
「うちの瑞希に何か?」
花が警戒した様に類を牽制する。
「いや、お昼ご飯一緒に食べようと思って。ほら。」
類は購買で売っているたまごサンドと焼きそばパンを持っていた。
「ふーん……。それならどうぞ。私達は向こうに行くから。」
「えっ、花ちゃん……。」
「大丈夫、向こうからこっそり見てるから。」
こっそり耳打ちしてくれた花に安堵の表情を浮かべる瑞希。
「拓海、行くわよ。」
「了解〜。」
拓海は類の肩に軽く手を置くと、花と校舎の方へ移動して行った。
「あ、ここどうぞ。」
「ありがとう。」
瑞希がベンチの空いている左隣をポンポンと触ると、類はそのまま座った。
「いただきまーす。」
手を合わせてからたまごサンドにかぶりつく類を見て、瑞希も改めて手を合わせてからお弁当を食べ進める。
「美味しいね。」
「そうだね。不破さんのお弁当の卵焼き、美味しそうだね。」
「あ、これ?甘くて美味しいよ。食べてみる?」
「俺も卵焼き甘い派だから、食べてみたい。」
「じゃあ、あーん。」
「えっ!?」
「ほら、早く早く!」
「い、いただきます。」
類がパクッと一口で食べると、口の中に卵の柔らかい食感とお砂糖の甘さが広がる。
「ん、美味い。毎日食べたい。」
「えへへ。嬉しいな。今日のお弁当私が作ったの。」
「本当に?不破さん、すごいね。」
「あ、ありがとう。」
柔らかな雰囲気が二人を包む。
「……はい!私今とってもドキドキしました!類くんはどうですか?」
「ん?うーん。ドキドキとはまた違うような気持ちだったかもしれないな。」
「確かに、私のこのドキドキは恋とは違う気がする。」
「難しいね恋って。」
パクッパクッとたまごサンドを食べて、口いっぱいにもぐもぐ咀嚼している類を見て可愛いと思う瑞希は、ハッとして胸に手を当ててみる。
「(可愛い……?この気持ちはどうなんだろう?)」
「不破さん、どうしたの?」
「じ、じゃあ可愛いと思う気持ちはどうかな?」
「可愛いか〜。確かに俺も不破さん可愛いと思う。」
「初めて言われた……。じゃなくて、それは恋じゃないって事?」
「そうだね。今のところは。」
「そっか〜。難しいなぁ。」
ガックリ肩を落とした瑞希を見て、申し訳なさそうに焼きそばパンを食べる類。
「あ、そうだ。不破さん連絡先教えてよ。」
「どうして?」
「今日みたいにまたお弁当一緒に食べたり、デートする為に知っておきたいからかな。」
「で、デート!?」
「ほら、早く。」
少し考えてから瑞希がお弁当をベンチの端に置いて、制服のポケットの中からスマホを取り出すと、QRコードを読み取った類からスタンプが送られてきた。
「こちらこそ、よろしくお願いしますっと。」
「ふふっ、文章なんだね。」
「スタンプでいいのか迷ってしまって。」
「可愛いね。」
そう言った類に頭を撫でられる瑞希。
ボンッと頭が破裂しそうな勢いで顔中に熱が集まる。
「(こ、これは少女漫画で何度も読んだ展開……!!)」
「あ、急に触ったりしてごめん。嫌じゃなかった?」
恥ずかしかった瑞希は頭を上下に動かすことしか出来なかった。
「良かった。じゃあ、お弁当食べよっか。」
「う、うん。」
不破瑞希十七歳、ドキドキする事と可愛いと思う事が必ずしも恋じゃない。と、今日知りました。
ちなみに花ちゃんは、私があーんしたところや頭を撫でられているところを見て、突撃しようとしたところを拓海くんに全力で止められていたそうです。
続く
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