第10話:全てがうまくいく時
6月初旬、札幌ウォーリアーズはここ数試合で好調な滑り出しを見せていた。リーグ上位のチーム相手にも粘り強い試合を展開し、観客席には熱狂的な応援が広がっていた。
翔太も、守備固めや代打で出場する中で確実に結果を残し、ベンチ内での存在感が増していた。派手な守備と勝負強いバッティングで、徐々にファンからの注目を集めていた。
◇
その日の試合、翔太は6回裏にライトの守備固めとして出場した。相手チームのクリーンナップから放たれた打球は、高い弧を描きながらライト線ギリギリに飛んでいく。
ベンチからの声を聞きながら、翔太は全力で追いかけ、ジャンプしてキャッチした。フェンスぎりぎりのファインプレーに、観客席から歓声が沸き起こる。
実況「天羽翔太! 見事なフェンス際のキャッチです! この守備力、チームの貴重な戦力になっています!」
翔太はグラブを掲げながら、少し得意げな表情で観客席に手を振った。
(よし! 今日も俺、注目されてるぞ!)
8回裏、翔太はそのまま打席に立った。この日のスコアは3対3の同点。観客の視線が一斉に翔太に集まり、スタジアムの空気がピリついていた。
ピッチャーが投げた初球、外角低めの変化球にバットを合わせると、打球はセンター方向に飛び、外野手の間を抜けてフェンスまで到達。翔太は迷いなく二塁を駆け抜けた。
実況「天羽翔太、タイムリー2ベースヒット! ウォーリアーズが勝ち越します!」
セーフティーゾーンでヘルメットを外し、拳を突き上げる翔太。ベンチではチームメイトたちが喜び合い、観客席からも拍手と歓声が巻き起こる。
(俺、やっぱり持ってる! この調子でどんどん目立っていこう!)
◇
試合後、翔太はロッカールームで田中や他のチームメイトに囲まれていた。
「翔太、お前すげえな! 守備も打撃も完璧じゃねえか!」
「今日のヒーローは間違いなく翔太だな!」
翔太は笑いながら答える。
「いやー、まぁ俺だから当然っすよ!」
(いやいや、それ言いすぎだろ俺! でも……なんか楽しい!)
鷹司監督が通りすがりに翔太を見て、少し笑いながら声をかける。
「調子が良いのはいいことだ。ただ、あんまり浮かれるなよ。」
翔太は軽く敬礼するように答えた。
「もちろんです! 次もこの調子で行きます!」
監督は一瞬立ち止まり、何か言おうとしたが、そのまま足早に去っていった。
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