第8話:監督の目に映る成長
試合後の札幌ウォーリアーズのクラブハウス。
翔太は今日の守備固めとしての役割を終え、ロッカーで一息ついていた。
(少しはチームに貢献できたかな……でも、まだまだだよな。)
翔太は自分の活躍を振り返りながら、田中からの助言を思い出していた。
「地味な努力がスターを作る――か。俺ももっとやれることがあるはずだ。」
◇
その頃、鷹司監督はオフィスで今日の試合のリプレイ映像を見ていた。
翔太がフェンス際でファインプレーを決めたシーンを再生しながら、笑みを浮かべる。
「やっぱり、いいもの持ってるじゃないか。」
鷹司監督は、翔太をドラフト指名した当時のことを思い出していた。5位という順位で指名された翔太に大きな期待をかけていたわけではなかったが、指名挨拶で見た真剣な眼差しと、記者会見でのビッグマウス。どちらの顔も「スター性」を感じさせるものだった。
「ただのビッグマウスじゃない。ちゃんと中身がある。」
彼の頭の中では、翔太をチームの中心選手へと育てる「スター育成計画」が形になりつつあった。翔太が努力を続ける姿を見て、それが現実味を帯びてきたのだ。
◇
翌日、翔太は早朝の練習場で黙々と打撃練習をしていた。誰もいないフィールドで、バットを振る音が響く。
「おい、翔太!」
背後から声をかけられ、振り返るとそこに鷹司監督が立っていた。
「監督、おはようございます!」
「お前、一番乗りか。昨日の試合のファインプレーだけじゃ満足できなかったか?」
翔太は少し照れくさそうに笑った。
「はい、まだまだ結果を出さないといけないんで……。」
鷹司監督はその言葉に満足そうに頷く。
「いい心がけだ。ただな、プロの世界では練習のやり方も考えないとダメだぞ。無駄なことをしても疲れるだけだからな。」
監督は自らバットを手に取り、翔太に一つのアドバイスをする。
「お前、打撃練習でもわかるがボールを追いすぎる癖がある。もっとポイントを絞れ。それだけで次の試合、結果が変わるかもしれないぞ。」
翔太は目を見開きながら、監督の言葉を噛み締めた。
「わかりました! 次はもっと良い結果を出します!」
翔太が再び打撃練習に戻る様子を見て、鷹司監督は静かに腕を組んだ。
「新人の中でも、こいつは特に素直だな。それに、覚悟もできてる。」
翔太の背中に目を向けながら、監督は思わずつぶやく。
「翔太、お前はまだチームの駒の一つだ。でも、その駒がチームを動かす歯車になれるか、スターへなれるかどうかは、お前次第だ。」
彼の胸には、翔太をチームの象徴的存在に育てたいという思いがさらに強くなっていくのだった。
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