第5話:プロの洗礼

翔太の代打ヒットは一瞬だけ注目を浴びたものの、キャンプ終盤の練習試合では目立った成績を残せず、開幕時には二軍スタートが決まった。


「まあ、しゃーないっすね。」

練習後のロッカーで、翔太は明るく言い放つ。周囲の選手たちが冷ややかな視線を送る中、自分を奮い立たせるために余裕の表情を見せる。

(いやいや、誰がこんなヘラヘラで乗り切れるんだよ!絶対に一軍に行ってやるからな。)


   ◇

札幌ウォーリアーズ 二軍キャンプ場


翔太は練習場の片隅で黙々と打撃練習をしていた。二軍のコーチ、藤木が翔太の打席をじっと見つめる。

「翔太、お前、バットスイングは悪くないんだがな……タイミングが遅れてる。」

「ですよね~!」

翔太は明るく答えながら、心の中でツッコミを入れる。

(いやそれ知ってんのよ!でも、どう直せばいいのか教えてくれってば!あんた打撃コーチだろ!)


藤木はため息をつきながら、次の言葉を続ける。

「まあ、何だかんだでその明るさはお前の良さだ。自分を見失うなよ。」

その言葉に翔太は少しだけ驚く。

(明るさが良さ?いや、どうゆう意味だよ。指導してくれよ。)


   ◇

その日の夜、翔太はスマホをいじりながら掲示板をチェックしていた。

案の定、ウォーリアーズスレ内で話題になっている。


「天羽翔太、二軍落ち確定www」

「少し期待してたのに草」

「翔太ァ、目立つ男はどうしたwww」


翔太は布団にゴロンと寝転びながら、苦笑いを浮かべた。

(いやいや、ほんと俺の扱い軽すぎだろ。でも、こういうのが俺の燃料になるんだよな……)


不思議な感覚が体中を巡る。掲示板やSNSで自分の名前が上がるたびに、内側から力が湧いてくるのがわかる。

翔太は枕元に置いてあったノートを手に取り、目標を書き込んだ。


「とりあえず一軍昇格。次は代打じゃなくスタメンで。」


「ふぅ、よし、明日からまたがんばるか。」


   ◇

翌日、二軍公式戦


翔太は7番・DHでスタメン出場を果たしていた。初回の打席、緊張のせいか初球をファウル。その後も球に詰まり、凡退。

(うわ、マジでヘタクソすぎるだろ俺!)


だが、3打席目。相手ピッチャーの甘いカーブが高めに入った瞬間、翔太のバットが一閃した。

打球はライナーで外野フェンスを直撃し、タイムリーツーベースを記録。ベンチや観客席がざわめく。


試合後、掲示板にはさっそくこんな書き込みが並んだ。

「翔太ァ!二軍でしか輝けないのかwww」

「なんか本当にネタ枠なのにちょっと結果出すの草」

「二軍の帝王になりそうで草ァ!」


翔太は試合後にスマホを見て、自分の能力がさらに強まるのを感じた。

(なんだこの感じ。全身が軽い……やっぱり、ネットでの注目でもある程度は効果あるんだな)


翔太は心の中で拳を握りしめた。

(よし、この調子でいくぞ。今世では絶対にでは夢を叶えてやる。)

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