第2話 回廊のこっちのお客様


俺は、南十字星の隣りにある別棟、

ゲストルームへと向かった。


今日も、二階の一番奥にある、

二段ベッドが2つ並んだ四人部屋。

新しくてとっても綺麗なんだ。

今日は出迎えの大歓迎はなかったけど、

花壇の手入れをしていたおばあさんさんがにっこり迎えてくれた。

扉を開けて、

中のおばあさんが、鍵をくれた。


「いらっしゃい。一番乗りね。」


少し長めの小窓から、

森の木々がみえる。

ベッドにごろんとしたら、空だって見えた。

俺たち四人は、この部屋をクラスIIと名付けたんだ。

鞄は部屋に運ばれていた。

パジャマがあった。

炎のモチーフに、金の刺繍ししゅうだ。



俺たち、

みんな見た目は中2なんだけど、

中身は、ばらばらなんだ。


俺、煉獄のレンは小2。


一緒にツインシュートをキメた、

妖精のサヤナ、緑と銀のラメの彼女は、

たぶん、ずっとお姉さんだと思う。

ボーイッシュなんだ。


お土産品にもなってた、

島のアロハンシャツは、

ドレスじゃなくて、俺と同じ、

シャツと白いパンツスタイルにしてた。


きっと、サッカーがやりやすいからだろうなあ。

優しい態度なのに、

おちょくるようなボールさばきをする。

負けず嫌いなんだ。



かもめのナギサは、

青と銀のラメ。控えめなんだけど、みんなと違うところを見てる。目ざといんだよな。

意外とからかってくるんだぜ。ちえっ。

あいつは年が近いと思う!!


腹ぺこのチワは、

まるっとした女の子。赤と銀のラメ

俺たちソックリの赤い泥棒竜が出てくる騒動があったんだ!!

俺たちは冤罪えんざいの被害者仲間だったんだよ。


胸に手を当てる。

ぼわわーんと煙が出て、俺はチビ竜へと変化する。

久しぶりっ。

背中にぐんと力を入れると、

低空飛行した。


面白いだろ?

最初期は、こっちがデフォだったんだ。

人型はなかった。


でも、

泥棒との人違い事件がきっかけで、

すぐに仕様変更になったんだよ。


森の神殿の売店じゃ、

みんな汗をかきかき謝ってくれたし、

お詫びのミルッシュソーダをもらったし、

シオンさんの神対応。

売店の兄貴たちだって、凄かった。

ここの島の大人はニコニコしてるけど、

すっげーんだよ。

ただもんじゃない!


結果オーライ★


泥棒にも感謝。

大っ嫌いだけどな!!



俺は再び半竜型に戻った。


そして、

鞄の荷物をクローゼットにあけたりしていると、

小窓から人影が見えた。


おっ、

サヤナたちかな?って思ったら、

違った。


なんか、凄い二人組が来たんだよ。



前を歩いてる、

てぶらのお兄さんは、

アトラスにもシオンさんにも似てた。

弟さんなのかな??


紫の髪。細い身体。背も高かった。

細マッチョってやつだ。

少し長めの髪を後ろで縛ってた。


白いシャツにネイビーのパンツなんだ。

でもツヤツヤした紫のリボンがくるくるしてる、

不思議な服を着てた。


後ろからやってくる、

大きな鞄をがらがらと、ひきずるお姉さんは、

ピンクのふりふりした服のメイドさんだった。

白いエプロンと、白いヘッドドレス(だっけ?)

ツヤツヤしたピンクのリボンがくるくるして、

顎の下でするりと結ばれてた。

黒縁の眼鏡。

紫の長い髪。


森の中で、

二人の姿は、

くり抜いたようにぽっかりと浮いていた…。

しかもゲストルームにやってきた。

きっと別部屋のお客さまなんだろう。

たまげた。


今回は、

小学生だけじゃないんだな!

二人は大学生とか、

大人と言われる年齢に見えた。


つか、前の男、

荷物くらい持ってやればいいのに?

だせえやつ。


そして、

後ろのお姉さまは、

なかなか、

おきれい。

ふふふっ。


俺はぺろっと舌を舐めた。


上目遣い。

鏡で前髪を整えて、

意気揚々と玄関までお出迎えに行くことにしたのだ。


ルン★

俺のほうが南十字星ココの先輩かもしれないからな。



ポーラとアトラスも一緒に部屋に入ってきた。

おばあさんのうちの一人が、

ロビーで二人に丁寧に説明してるのが見えた。

だから、二人は大人なんだなと思った。


それに、

回廊のこっち側のひとなんだろう。


火山列島じゃなくて、

遠くの大陸のお客様なのかもしれない。


「はいっ!」

ポーラがにこにこと、

白い風船と、花林糖かりんとうをくれた。

子ども向け。

彼らのおみやげなんだって!

へー!嬉しいっ!

なんだ!

いいやつじゃーん。

名前は、

お兄さんが葡萄ぶどう

お姉さんがアンズっていうんだって。


へえ。

ぶっきらぼうだし、

風変わりだけど、

俺たちとそんなに変わらないんだなと思って、

ホッとした。



いつのまにか、

背後にアトラスがいた。

アトラスはボールを持って二カッとした!!


あっ!

やったあ!


俺の目は、すっっっごくキラキラしてたと思う。

「今日もサッカー出来る?!」


アトラスは、斜めに首を振ってみせた。

「えー、

大人は忙しいんだよなあ。」

わざとらしく、

頭をぽりぽりかいたあとに。

「ササッカーならいいぜ?」

にんまりと笑った。


っしゃー!!★

みんな集まったら試合開始だって。



そうと決まったら、

さっそくあちこち調べなきゃな!!


なぜなら、

ササッカーは、

呪いあり、部外者オッケー、

ルール無用の、

五分限り、

スーパーへんてこサッカーだからだ!!


隠しアイテムがないか、

くまなくさがしてこようと思った。



南十字星の工房やリビングの周りをぐるりと一周、

こっちのゲストルームも、

ぐるりと一周しようと思った。


夏の草は、

踏みつけるたびに、

チクチクし、匂い立った。

いい気持ち。しかし暑いなあ。


俺は、

胸に手を当ててトランスフォームして、

赤いちび竜に変身した。


やっぱり!

こっちのほうが暑さには強い!

背中の羽根も練習しようっと。


そして俺は、

黒い羽を、ぱたぱたさせながら、

建物の周りをぐるりと、

ときどき屋根に登ってみたりして、

どったんばったんと探検していったのだった。


(続)
























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