タコノカミサマ
僕の目の前で、彼女はタコのお寿司を食べている。
それはもう、とっても幸せそうな顔で。そんな彼女の表情を見ていると、こちらまでなんだか幸せな気分になってくる。
しかし、僕には気がかりなことが一つだけあった。
それは、彼女がタコの神様だということだ。
もしも僕が神様だったら人間を食べるのか? いや食べないと思う。あるいはインドの神様、ガネーシャ神はゾウを食べるのか? 多分食べないと思う。インドの神様のことなんて、僕はちっともわからないけど。
しかし、目の前で確かに彼女はタコのお寿司を食べ続けている。僕がうんうんと思考を巡らせている間にも、お皿はどんどん積み重なっていく。インドの神様のことよりかは、ちょっとはわかるはずなのに、彼女が同族(?)を喜んで食べていることが、僕には全くわからない。
もしかしたら、彼女はタコの神様なんかじゃないのかもしれない。はじめてその事実を彼女から聞かされたとき、疑う僕を背中から飛び出た八本の足で締め上げていたけれど、あれだってもしかしたら何かタネや仕掛けがあったのかもしれない。
というか、そもそも神様なんてこの世に存在するのかな? いたずら好きの彼女のことだから、そういって僕をからかってるだけかもしれない。うん、そうに違いない。
「ちょっと、ふみくん。もっと食べなよ~。せっかく可愛い彼女のおごりなんだからさ」
「あ、あのさ……」
「ん? どしたの?」
「さっきから、タコばっかり食べてるけどさ……。神様的にそれって大丈夫なのの?」
彼女は一瞬きょとんとした顔をし、やがて大きな声で笑った。
「えー、なんかぼーっとしてると思ったら、そんなこと考えてたんだ~。心配しなくても大丈夫だよ。何もいっつもタコばっかり食べてるわけじゃないしさ~。タコもそんなことで怒ったりはしないよ~。それに、ちゃーんと、ニンゲンも食べるようにしてるからさ~」
「なーんだ。食べても大丈夫だったんだ。心配して損したよ!」
「え?」
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