靴底一億センチのシークレットブーツ

 某大手通販サイトの薄っぺらい段ボール箱の中には、俺が心から待ち望んでいた「ブツ」が入っていた。

「靴底一億センチのシークレットブーツ。これさえあれば……」

 思えば俺の人生は常に身長との戦いであった。小・中・高の十二年間では、常に先頭で腰に手を当て続け、社会人になってからは「百六十ない人はちょっと……」と言われ続け、屈辱にまみれ枕を濡らし続けたものだった。しかし、それも今日で終わりなのだ。少々値は張ったものの、このシークレットブーツ。これさえ履けば夢にまで見た高身長を手に入れて、モテまくり勝ちまくりの人生を歩むことができるのだ。身長が高くなりすぎて、天井に頭をぶつけたりしてもいけないと思い、天井もぶち抜いた。これならどんなに身長が高くなっても、頭をぶつけない。

 靴ひもをしっかり結び、俺は立ち上がる。さあ、夢にまで見た高身長ライフ――。


   ◇


「なあ、西やんの死因、窒息死だったってよ」

「バカだなぁ、靴底五千万センチなら、まだギリギリ成層圏だったのに」

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