1414 複雑な心境ではあるが

 無名のライブを見て、なにやら思い出さされる事があったらしく。

例の裏切った3人組(訳アリ)についての認識を考えさせられる倉津君。


さてさて、どうしたものか?


***


 ……無名が、代々木第一体育館でのライブを終えた後。

そんな心境を抑えて、橘親子と代々木第一体育館のステージの袖を後にしようとしていた。


此処は勿論、そんな後悔の念よりも、橘親子の引越しの件を早期に解決してしまいたかったからだ。



……いや、違うな。

それは、沙那ちゃんや親父さんの引っ越しを名目にして、奈緒さんや崇秀や眞子から目を逸らす為に、自分に都合の良い解釈をしようとしてるだけだな。


情けねぇ。


そんな心境の中……



「なんやマコ。もぉ帰るんかいな?打ち上げ行けへんのか?」


ライブを終えた馬鹿の親玉が、目一杯の汗を掻きながら話し掛けてきた。


この光景には、なんか清々しさすら感じるだけに、これまた、なんとも言えない心境になるな。



「おぉ、今日は、ちょっと野暮用があってな。悪いけど打ち上げは遠慮しとくわ」

「なんやなんな?野暮用やねんやったら、そんなもん後でしたらえぇやんけな。取り敢えず、打ち上げだけでも参加せぇや」

「まぁ、そうしたいのは山々なんだけどな。此処に居る親父さんが、ウチの近所に工房を構えてくれるって話が成立しててな。ビジネス的にも、出来れば今日中に片付けちまいてぇんだよ」


この野郎、この調子じゃあ、俺が打ったメールをまだ見てやがらねぇな。


まぁ言うて。

今さっきライブが終わった所だから、まだそんな余裕はねぇか。


なら、許してやる。

(↑何故か謎の上から目線)


そんな感じで、慈悲深くも山中のアホを許してやっていると……



「あぁ、いや、倉津さん。我々の事は明日でも構いませんから、打ち上げに参加なさって下さい。そうだよな、沙那」

「うん。明日で良いよ。そうすれば、おにぃちゃんに、また明日も逢えるし」


ってな感じで、親父さんと沙那ちゃんから言われたんだが。


いや……お2人さん、その気持ちはh上に嬉しいんですが、これはそう言う問題じゃなくてですな。

俺としては『今現在、打ち上げに行く様な心境じゃない』って方向なんですけどね。


なんか、余計な気を使わせてしまった様だ。



「なにを言うてはりますん?そんなメデタイ話があんねんやったら、是非、お2人さんも打ち上げに参加してぇな。俺等も、お祝いしたいがな」

「えっ、ホント?沙那行きたい!!」


沙那ちゃん……ホント我欲に従順ですな。

ファラリスの信者なら、間違いなく司教クラスだな。


けど、それだけに……この展開にはまいったなぁ。


どう対処すべきかな?



「こっ、こら、沙那!!お兄ちゃん達は、ライブの成功を仲間同士でお祝いしたいんだ。邪魔しちゃダメだろ」

「えっ?ダメなの?」

「いやいやいやいや。そんな事ないって。オッちゃんも、沙那ちゃんも、俺等の知り合いやんけな。そんな寂しい事言いないな」

「ですが」

「ですがも、ヘッタクレもあるかいな。オッちゃんのお陰で嶋田さんも、遠藤さんも、いつも以上に満足出来る結果を得れたんやで。それやったらオッちゃんも、沙那ちゃんも、俺等のメンバー同然やん」

「……この人も」

「それにやな。メンバー同然のオッちゃん等の引越しが決まった上に、工房まで構える言うんやったら、それを、みんなで、お祝いせなどないすんねんな?それこそ意味わからんわ。そやから、遠慮なんかせんとってくれ」


確かに、そうだな。

俺は自分の都合でものを考えていたが。

この場合、山中のアホンダラァの言い分の方が間違いなく正しい。


……今になって思えば、俺もそう思う。


それに【無名】のメンバーと、橘親子の親密度を上げる為にも、この機会を逃す手はねぇよな。


だったら……


まぁ俺自身は、気持ち的に、まだ少し気が引ける部分がなくもないんだが。

そこは一旦、心の奥底にでもしまい込んで、打ち上げに参加する方向で考えた方が良さそうな雰囲気だな。


この空気で『帰る』つぅのも、なんだしな。



「そうだな。契約より先に、お祝いをしても問題ねぇか」

「そやろ。……って言うかやな。引越しの手続きとかやったら、オマエの得意分野やんけな。ほんだら、こんな遅い時間から無理にせんでも、明日1日で出来るやろが」


これも然りだな。


山中の言う通り、所詮、今動いた所で「親父の了承を取る」ぐらいしか出来ねぇしな。

まぁ、手続きの書類なんかも片付けられるが、それが出来たからと言って、そんなに変わるもんじゃねぇしな。



「だな。……まぁ、そんな訳なんッスけど、一緒に打ち上げ行かないッスか?みんな、親父さんと、沙那ちゃんが来るのを待ってるみたいだし」

「良いんですか?お邪魔に成りませんか?」

「だから、成れへんって。寧ろ、そんなメデタイ事があるんやったら、参加して貰わな、楽しさが半減してまうがな」

「そっ、そうですか。……では、ご迷惑をお掛けするかも知れませんが、参加させて頂いて宜しいでしょうか?」

「是非とも、お願いしますわ。勿論、沙那ちゃんの来たってや」

「うん!!」


これはもぉ決定だな。


当初の目的である『沙那ちゃんを学校に行かす』を果たせて。

その上、親父さんが、ウチの近くに工房を構えてくれる話まで合意を得れた。


これは現段階では、文句の付け様が無い程、非常に満足の行く結果なんだから。

打ち上げで、橘親子の門出をお祝いをして貰う為にも、参加しない理由なんてないもんな。


だから、もぉ四の五の考えずに、決定だ決定!!


まぁ……その目的を果たした気持ちとは対照的に、あの3人に対する悩みどころが浮上しちまったけどな。


此処は、自分で何とか解決するしかないんだろうな。


マジでどうッスかな?


***


 こうして、橘親子と、俺は【無名】の打ち上げに参加する事に成ったんだが。

この後、打ち上げに行った『とある場所』で、思っても居なかった事態に巻き込まれていく。


俺は一体、どうすれば良いんだろうな?


そういった必要の無い悩みだけは尽きない。


いや、寧ろ、増える一方だな。


***


次回予告。


なんだ?なんの話なんだよ、これ?

打ち上げの場所に行って、思ってもみなかった人物と、その場で再会を果たすんだが、ソイツが、また、おかしな事バッカリ言って来やがる。


オマエは一体、なにが言いたくて、そんな事を言ってるんだ?


何故、俺に、そんな選択を迫るんだ?


意味が解らねぇぞ。



そんな訳で次回。


『Route select』

「己が行く道」


なにがどうなって、こんな話に成ったんだ?


本当に意味が解らねぇぞ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>

これにて第一章・第八十五話【Full heart(満たされていく心)】はお終いに成るのですが。

倉津君の心境の変化は、楽しんで頂けたでしょうか?


冷静に成れば解る事なんですが。

奈緒さんや崇秀、それに眞子なんかが倉津君を裏切る事なんて言うのはあり得ない話……なのですが。

今回の一件は、そんな中にあっても、倉津君にとってはあまりにもあまりな話だったので、完全に思考が混乱してしまっても仕方がなかったのかもしれませんね。


まぁでも、沙那ちゃんや親父さんとの出会い。

それに、山中君を見捨てなかった無名のメンバーの行動を思い出して、少しづつ冷静には成れて行ってるみたいでもあります。


さてさて、そんな倉津君なのですが。

次回から始まる第一章・第八十六話【Route select(己が行く道)】では、またなにやら厄介な事に巻き込まれる模様。


ホント、ダイソンの掃除機に吸われるゴミの様な男ですね(笑)


まぁまぁ、なんにせよ。

そんな感じの話を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月19日 06:00 毎日 06:00

最後まで奏でられなかった音楽(シーズン17) 殴り書き書店 @nagurigakisyoten

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ