1410 倉津君の話を聞いた親父さんの気持ち
沙那ちゃんがトイレから帰って来た時、手を拭いたであろうハンカチがベロ~ンと出てたので、それを直してあげる倉津君。
そして、マナーについて少し語ったら。
親父さんが、これは『必然的なものではないか』っと言い出し……
***
「いえね。私、さっきからズッと考えていたんですけどね。どうにも私には見えていない沙那のダメな部分が、余りにも多すぎるんですよ。それがもし、必然的に目の前で看破されているなら、沙那には、私の様なダメな人間ではなく。倉津さんの様な人が必要なのではないかと……」
なぬ?
親父さんが突然、必然なんて言い出すから、なんの話をするのかと思ったら、そういう話ですか!!
うわぁ……にしても、これは幾ら何でも不味い展開だな。
なので、なんとしても、この状況を打破しないとイケナイな。
「いやいやいやいや、それは流石に思い込み過ぎッスよ」
「そうでしょうか?本当に、そうなのでしょうか?」
「いや。本当に、そんなの、ただの思い込みだと思いますよ。第一、沙那ちゃんにとって不必要な人間なんて、この世には誰一人として存在しないッスから。それが父親である親父さんなら尚更。今日の沙那ちゃんがあるのは、親父さんが心を込めて育てて来たからッスよ。だから、軽々しく、そんな馬鹿な事を言うもんじゃないッスよ」
「そうですか。すみません。……ですが、現に私は楽器を作る事しか出来無いダメな人間。この子の人間性を、著しく低下させてるのではないでしょうか?」
「それは、断言して100%無いッスよ。絶対に、それも、そんな風に言っちゃあダメっすよ」
確かに、俺が指摘し続けてた事だから、此処で『俺が違う』って言うのも変な話なんだけどな。
かと言って、親父さんが、決して沙那ちゃんの人間性を『低下』させてるって訳じゃないんッスよ。
どういう事かと言えば。
まだ沙那ちゃんが、それを『知らない』だけであって、精神面が『育ち切ってない』だけの話なんッスよ。
だからまだまだチャンスがあるだけに、此処が幾ら似てるものだからと言って、絶対に勘違いしちゃダメっすよ。
「何故、いつも、そこまで断言出来るのですか?」
「そりゃあ、親父さん。現に沙那ちゃんは、誰かに嫌われる事なく、みんなに好かれてるじゃないッスか。これがなによりの証拠なんじゃないッスかね?そんで、そん風に証拠があれば、断言するのは難しくないッスよ」
そう言う事だ。
基本的な部分で言えば『沙那ちゃんが他人から嫌われない』以上、育て方自体は間違ってないんだ。
まぁ、さっきも言ったが。
確かに足りない部分があるから、それを完璧な育て方と言うのは程遠いのかもしれないがな。
「あぁ、確かにそうですね。それに初対面なのにも関わらず、皆さんには、沙那を可愛がって頂いてますね」
「そうッスよ。だから、親父さんの育て方は、決して間違ってはいないんッスよ。ただ……」
「ただ?」
「ただッスね。これが許されるのは子供の内だけなんッスよ。社会に出た時、学校なんかで自然に身に付く『上下関係』ってモノを知らなきゃ、間違いなく色々損をする。そこだけが問題ッスね」
そんで最終的な結論は、そう言う事だ。
子供の内なら、ある程度の年齢までは、大人が『庇護対象』として見てくれるから、誰もが無条件で可愛がってくれる。
だが、年齢を重ねて行くにしたがって、相手(大人)の、その気持ちが薄くなっていく。
コレが『大人に成って行く』って言われる行程なんだが。
この庇護対象から外れる年齢に達してしまったら。
例え、楽器造り1本で生きて行くにしても、社会のルールをある程度身に付けて置かないと『誰にも相手にされない』って意味にも繋がってしまう可能性があるんだよな。
それに付け加えて、それまでに『上下関係』を身に付けて置かなきゃ、後付の焼き付け刃では、どうにか成るものでもない。
それを加味した上で、今現在、沙那ちゃんの年齢は10歳。
これは、そろそろ危険な年齢に突入して行く時期に入ってる。
俺は、そこを懸念しているに過ぎないんだよな。
なにがあっても、こんな良い子が、そんな可哀想な目に遭うのは良くねぇからな。
「そう言う事だったんですね。そこを懸念されていたんですね」
「まぁ、俺の気持ちをストレートに言わせて貰うと、そんな感じなんッスけどね。生意気バッカリ言って、すんません」
「いえ、それについては、私も、以前から解っていた事なんですが。どうしても、沙那を手元に置いて置きたかったもんで……ついつい、事を先延ばしにしていただけなんです。でも、倉津さんにハッキリと言われて、漸く目が覚めた気分です」
いや……そこまで、感じて貰えたんッスか?
「ですので。ライブの後。沙那とはキッチリと話し合ってみます。この子が、本当はどうしたいのか、ジックリと話し合ってみます」
「……嫌だ」
「へっ?」
「……嫌だよ、そんなの嫌だよ、お父さん。私、別に学校になんか行きたくないよ。私、お父さんと、ズッと一緒に居たいよ」
「……沙那」
「私、お父さんが大好き。離れるのなんて、絶対に嫌だよ」
はぁ……ヤッパリ、こう成っちまったか。
だから、沙那ちゃんの目の前では、余り、この類の話はしたくなかったんだよな。
どうしたもんだ、こりゃあ?
・・・・・・
うん?いや……ちょっと待てよ。
あの方法を使えば、この2人を無理矢理引き離す事無く、この話自体も上手く纏まってくれるんじゃないのか?
少々博打要素が加わるかもしれないが、これはやってみる価値は有りそうだな。
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
親父さんは嫌味に感じる事なく。
倉津君が取っていた行動を『偶然』ではなく『必然』だと感じてくれたみたいで、話が上手く嚙み合って、また一歩進展したみたいですね♪
ですが、親父さんが、そうやって納得した感じではあるものの。
今度は、当の本人である沙那ちゃんが、それを気絶する様な発言をしてきました。
一歩後退のピンチです!!
でも、あれなんですよね。
倉津君って、ピンチの時ほど良いアイディアが浮かぶ傾向があるので、案外このピンチも上手く切り抜けてくれるかもしれませんね。
特に、他人の事となると、その本領を発揮する傾向にもありますし(笑)
……ってな訳で次回は。
そのあたりの舌戦を書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
ってか、倉津君や(*'ω') ( ゚Д゚)なんじゃい!!
他人事とより、自分の事をしっかりしなさい(*'ω') ( ゚Д゚)うっせぇわ!!
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