1409 ちょっとしたマナーの話

 ライブ前にトイレに行った沙那ちゃん。

その間に親父さんと話をしていたのだが、倉津君の言動が少し説教臭い感じに成ってしまい……

***


「・・・・・・」


だが親父さんは、なにか、この話に感じる所があったらしく、完全に黙っちまったな。


けど、もぅ少しだけ伝えて置きたい事があるので、お付き合い下され。



「勿論、こんなのは、ただの俺のエゴだし。世間で言う所の綺麗事だとは思うんッスけどね。ただ綺麗事も実行出来れば、それは綺麗事じゃなくて、真実に成ると思うんッスよ」

「そうですか。……色々と、ご高説ありがとうございます」


『ご高説』と来ましたか。


どうやら、この様子からして。

俺が言葉の使い方を誤ったのか、親父さんには余り良い印象を持って貰えなかったみたいだな。


(´Д`)ハァ…

こんな事に成るなら、調子に乗って余計な事を言わず、黙っとけば良かったよ。



「いや、あの、なんか、すんません。なんか俺、また生意気な事を言っちゃいましたね」

「あぁ、いやいや、そう言う意味じゃなくてですね。本当に、そう言う、お考えなのだと言うのが伝わったと言う意味ですよ。誤解があったのでしたら申し訳ありません」


おぉ……少しは伝わってましたか!!


なら、調子に乗って良かったッスよ٩( ゚Д゚)و

(↑直ぐに調子に乗る馬鹿な俺)



「ですが倉津さん。あの子は寅蔵から預かった大切な子。もう少しだけ考える時間を下さい。矢張り、今直ぐに、安易な答えを出す訳には行きませんので」


だよな。

まぁ、そうなるよな。

沙那ちゃんが関わってる話なだけに、この程度の事じゃあ、まだまだ、そう簡単には信用出来る案件じゃないよな。


……っとは言え、その辺は俺も織り込み済み。

この件に関しては、、程々には、のんびり行くさ。



「そうッスね。それで正解だと思うッスよ。安易に人を信じちゃいけないッスからね」


実体験的にも……疑う事も大切ッスからな。


馬鹿の俺みたいに、なんでもかんでも信用して裏切られ。

思いも寄らない様なしっぺ返しを食らってりゃ、世話ないですしね。


自分で言ってて……笑えねぇ。



「すみません」

「いやいや、本当に俺が自分勝手な我儘を言ってるだけなんッスから、気にせんで下さい」


利潤関係と、信用関係は表裏一体にして、物凄く間近にある。

故に、此処を使って、上手く話を打開していく方法なら幾らでも有るんだけどな。


これは、俺の意に反する。

ある意味、そんな利潤関係を排除してでも、信用を勝ち取って行きたいからな。


でも、必要とあらば、そこを追求するスタイルを使うのも大切な事なのかも知れない。


チビ太が、そう言ってたしな。


***


 ……そうこう親父さんと話してると。

ライブ開始5分位前に、沙那ちゃんがイソイソとトイレから帰って来た。


大丈夫だったか?

トイレに行くまでに迷わなかったか?

途中で、変な関西人に遭遇しなかったか?


あぁ……それ以前に、もぉ変な関西人には遭遇してたか。


あれ以上、変な関西人は居ないな。



「お父さん、おにぃちゃん、ただいま」

「あぁ、おかえり」


そんな俺の不必要な心配を他所に、沙那ちゃんは笑顔で、親父さんと、俺に帰って来た事を告げる。


うん、可愛いですな。


……のは良いんだが、少々気になる点があってだな。

沙那ちゃんのポケットからは、手を洗った後に使ったのであろうハンカチがクシャクシャに成った状態で、ベロ~~ンっとハミ出したままに成っていた。


『これは、余り良い感じではないな』


俺は、咄嗟に、そう思ったのだが。

親父さんも、沙那ちゃんも、これと言って気にしてる様子はない。


なので俺は……



「はいよ、お帰り」


此処でも余計な事は言わず。

沙那ちゃんの視線まで下がる為に、しゃがんでから、彼女のポケットにあるハンカチを一旦取り出し、綺麗に畳んでから再度ポケットに入れ直してあげた。


女の子がだらしなく見えるのは、イメージが良くないからな。

折角、こんなに可愛いんだし、俺としてはもっとみんなに愛されて欲しいしな。


けど、沙那ちゃんの反応はと言うと、キョトンとした顔をしている。



「うん?どうかしたか?」

「あの、おにぃちゃん。どうして、ハンカチを畳んだの?」

「うん?あぁ、それはな。ハンカチがグチャグチャに成ってるより、綺麗に畳んであった方が良いだろ。それだけのこった」

「そっかぁ。楽器も埃を被って汚いより、綺麗に手入れしてあげた方が良いもんね」


どこまで行っても、例えが楽器なんだな。


実に沙那ちゃんらしい。



「そういうこった」

「うん。じゃあ、これから気を付ける」


頭を撫でてあげると、嬉しそうに、そう言ってくれてる。


けど、親父さんには、この光景が、どう写ってるんだろうな?

変な意味に捉えられて、宛て付けがましくも嫌味に見えてねぇかな?



「あぁ、すみません、倉津さん。どうにも、そう言ったマナーに関しては、余り教えてないもので」

「あぁ、良いんッスよ。気付いたら、誰かが、それを教えれば済むだけの話ッスから。多分、ウチの知り合いなら、誰が見ても同じ事をしたと思うッスよ」


奈緒さんとか、眞子とかな。

あの2人なら100%同じ注意をしたと思う。

特に、この2人は、女子の身嗜みについては、矢鱈とうるさいかったしなぁ。


間違いなく、放っては置かなかっただろうな。


なんて事を少し考えていたら……



「それが……世間での常識だと言う事ですね」


親父さんから、そんな言葉が漏れてきた。


これはヤバイなぁ。

言い分からして、嫌味には取られてなかったみたいだが、自分には常識が欠如してると思ったらしく。

気の弱い親父さんは、ちょっと凹んだ感じになっちまってるみたいだしなぁ。


ライブの開演も近いし、こりゃあ、よろしくねぇ展開だな。



「あぁ、いやいや、そんな重いものじゃないッスよ。親父さんも、沙那ちゃんも、俺の大切な知り合いッスから、ちょっとでも他人に良い印象を持って貰いたいだけなんッスよ」

「倉津さんは、我々が、そんなに大切……ですか?」

「勿論ッスよ。それにッスね。こう言うのって、商売にも繋がる話じゃないッスか。身嗜みをキチンとしてた方が、相手の印象も良くなるっしょ」


此処は、崇秀の理論なんだけどな。


人間は、必ずしも見た目から入る習性が有るから。

そこさえキチンとしてれば、相手の印象がグンッと上がる。


此処はアイツの言ってる事が正しいと思えたから、実践しただけの話なんだよな。


【相手が、どんなに嫌な奴であっても学ぶ所はある】って話でもある訳だ。



「あぁ……」

「あぁ、いやいや、本当に、そんな深く考える様な大層な問題じゃないッスよ。知り合い同士が悪い所を指摘して、良い所を補え合えば『みんなが幸せに成る』って法則なだけッスから」

「・・・・・・」


更にヤバイなぁ。


さっきから、これでも必至にフォローをしようとはしてるんだが。

俺が言葉を重ねれば重ねる程、期待していた効果とは、その真逆に行き。

今じゃあ、なんか説教がダダ漏れに成ってるみたいな嫌味な感じに成ってるじゃねぇかよ。


コイツは、本当に宜しくねぇ。


親父さんの顔も、大分、渋く成って来てるしな。



「まぁまぁ、そんな事、別に、どうでも良いじゃないッスか。こんなもんは、ただの偶然の産物なんッスから」

「偶然も……」

「へっ?」

「偶然も、これだけ続けば、流石に必然だとは感じませんか?」

「へっ?」


この程度の話で【必然】って、なんの話だ?


一体、親父さんは、これからなんの話をしようとしてるんだ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


説教が駄々洩れに成ってるみたいな状況にはなっているのですが。

これは逆に言えば、親父さんに倉津君の言葉が、ちゃんと伝わってると言う意味でもありますので、現状は、意外と悪くないと思います。


親父さんの性格上、嫌味に取る様な人でもありませんしね。


なので、此処からの倉津君次第では。

例の『沙那ちゃんを学校に行かせる件』に関しては進展があるかもしれませんので。

是非是非、倉津君には上手く話して、説得して欲しいものですね♪


ってな話を、次回は書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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