1407 ブランド名

 ふっとした会話の中で、親父さんの店にはブランド名がない事が判明。

そこで山中君が「なら、うちと同じ【無名】やな」と言ったのが切欠に成り。

倉津君が「それ、wネームに成って良いんじゃね?」と思い始め、その話を進め様とするのだが……


***


「あっ!!それ、良いね!!私も、お父さんの楽器に、それ入れたい」

「おぉ、俺も、それ思った。ブランド名が【無名】とかって、ちょっと格好良いよな」

「うんうん!!じゃあ、じゃあ、お父さんが許してくれたら、おにぃちゃんのベースのヘッド部分にアバロン貝でネーム入れて良い」

「そんな事して貰って良いのか?」

「うん、良いに決まってる」


おぉ……そりゃあなんとも有り難い話だな。

沙那ちゃん自らがブランド名を入れてくれるなんて、なんとも貴重な話だしな。


……しかしまぁ、この年で、もぉそんな凝った細かい作業まで出来るんだな。


流石、生粋のエリート・ビルダー。


大したもんだ。


それにしても親父さん。

この様子じゃあ、かなり色々な技や技術を沙那ちゃんに教え込んでるんだな。


ひょっとして、もう1人で楽器自体も作れたりしてな。



「後ね、後ね。沙那が、おにぃちゃんの楽器のポジションマークも、なにか考えてあげようか?」

「あぁ、そうだな。それも良いな。じゃあ、追加料金を入れるから、なんか面白いのを沙那ちゃんが考えてくれるか?」

「うん。良いよ。……でも、追加料金って、なに?」

「まぁ平たく言えば、親父さんが多くお金を貰えるって事だな」

「あぁ、そうなんだ。じゃあ、うん!!」

「ちょっと待て、ちょっと待て、ちょっと待て!!」


なんだよ、糞っ垂れ?


人が沙那ちゃんと盛り上がてるって言うのに邪魔すんな。

特に、親父さんから楽器を買わない打楽器使いのオマエは黙ってろな。


シャラップ!!


そんで用なしなんだから、大人しく量販店で既製品でも買ってろ。



「んだよ?折角、盛り上がってる所に水差すんじゃねぇよ」

「いやいや、そりゃあ悪いとは思うけどやなぁ。それ以前に、この子、そんな器用なまで真似が出来るんか?」


そんなもん、出来るから言ってるに決まってるじゃねぇかよ。


そんな当たり前の質問をするなんて、オマエ、馬鹿じゃねぇの?


あっ……生粋の馬鹿だったな。


そりゃあ失礼しました。



「当たり前だろ。こう見えても沙那ちゃんはな。親父さんの手伝いを毎日してる様な親孝行な娘なんだぞ。だから、それぐらい出来て当たり前なんだよ。……だよな」

「うん♪」


家庭の事情までは言わん。

きっと此処で俺が下手な事を言ったら、親父さんにも、沙那ちゃんにも迷惑が掛かりかねない案件だからな。

なので『お手伝いしてる孝行娘』って言う部分だけで留めて置く。


俺だって、偶には、こう言う自制心が働く事もある訳だからな。


まぁ……極稀にしか発動しねぇけどな。

寧ろ普段は、発動した形跡すらないけど……



「凄いなぁ。なぁ、沙那ちゃん」

「なに?」

「沙那ちゃん、幾つやな?」

「10歳」


そうなんだ。


そう言えば、最初に俺が勝手に3年生だって決めつけてたから。

それ以降、沙那ちゃんの年齢については全然気にしてなかったな。


しかしまぁ10歳って事は、こんなに体は小さくても4年生か、5年生なんだな。


だったらドッチなんだろうな?



「10歳か。ほな、5年生って所やな」

「うん?5年生?なにが?5年生って、なに?」

「へっ?いや、だから……」


うへっ!!

ヤバイ!!ヤバイ!!ヤバイ!!

こりゃあ『ドッチか?』なんて呑気に考えてる場合じゃなかったな。


沙那ちゃんは学校に行ってねぇんだから、学年の概念が無いだけに、そんなもんが解る訳ねぇじゃん!!


これは即座にフォローを淹れないと、ややこしい事に成りそうだ!!



「あぁっと、沙那ちゃん」

「うん?」

「沙那ちゃんの誕生日って、いつだっけ?」

「うん?誕生日?えぇっと2月10日だから、みずがめ座だよ」

「そっか。2月だったら早生まれなんだな。まぁ、山中、そういうこったよ」

「いやいや、ちょっと待てや、マコ」

「気持ちは解るが、今は、そこは深く追求してくれるな。そこには色々と家庭の事情ってもんがあんだからよ。……つぅか、聞くな」


赤の他人が、土足で踏み入れてはイケナイ様な海よりも深い事情って奴がな。


だから悪いんだが、今はその説明で納得しててくれ。

(↑さっき脇目も振らずに、ドカドカとそこに入って行ってた男の言葉)



「さっ、さよか。ほな、そこはもぉ触れんとくわ」

「賢明だよ」


まぁ、だからこそ、今、そこの打開策を講じてる所だから、マジで下手に触れてくれるな。

特に、まだ沙那ちゃんには、その件に関しては何も話してないんで、余計に話がややこしくなろりそうだしな。


それによぉ。

話さえ上手く運べれば、来年からは、ちゃんと6年生に成れるんだからよ。


もしそうなったら、その時にはオマエも祝ってやってくれ。

事情についても、そこでなら話しても良いしな。


あぁけど、そう考えれば、沙那ちゃんって、龍斗の糞ガキの1つ上になるんだな。

アイツがマセてるのも有るけど、沙那ちゃんは小さいから、とても6年生には見えねぇ~~~!!


……なんて思いながら、沙那ちゃんを見ていると。

どうやら、親父さんの方の話も付いたらしく、嶋田さん、康弘の両名は即購入の方向で決定。


俺の予定通りに事が運んで、お2人さんには、ご満足戴けた様だな。


ヤリィ!!


あれ……そう言えば「ブランド名」の話は、どうなったんだ?


完全に逸れちまってたな。


まぁ、その辺については後でも良いか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


意気込んで話したものの。

ブランド名の話は流れてしまい。

取り敢えず此処では、保留っと言う形に(笑)


まぁ、途中で沙那ちゃんの話が出てしまったので、こればかりは仕方がありませんがね。


倉津君自身、今は他の誰かに、この事を触れて欲しくない気分でしょうし。

それになにより、ブランド名を決めるにしても。

親父さんが嶋田さん達と値段交渉中なので、どれだけ倉津君達が盛り上がろうとも、勝手に決めれるものでもありませんしね(笑)


さてさて、ともあれ。

これで一旦は倉津君の計画通り「親父さんを売り込む事」には成功した訳ですので。


次回からは、無明のライブがスタートいたしますです♪


なので良かったら、是非、遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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