1403 どこまでも素直な沙那ちゃん
親父さんの楽器を、嶋田さんや遠藤さんに売り込もうと企む倉津君。
そんな訳で、ライブ前の楽屋にまでやって来たが。
楽屋から出てきた山中君と鉢合わせして、ショウモナイ糞話をする羽目に(笑)
***
「……って言うかマコ。そんな事より、そのオマエが連れとるチッコイ子は、誰やな?」
「うん?あぁ、この子か?この子は橘沙那ちゃんだ。【無名】のファンらしいから連れて来てやったんだよ」
「こんにちわ」
ペコッと丁寧にご挨拶。
可愛いのぉ。
あぁでも、あれだな。
こんな毎回毎回ライブ中にうんこを垂れる様な野郎に対して、そんな可愛らしい挨拶は勿体ないな。
……って言うか。
このスカトロ陰獣が嫌なら嫌で、もっと汚物を見る様な嫌そうな表情で挨拶しても良いんだぞ。
まぁ、沙那ちゃんは、そう言う事を思う様な子じゃないから、なにがあってもそんな真似はしないだろうがな。
「おっ、ちゃんと挨拶出来るねんな。偉いな、お嬢ちゃん。それに別嬪さんやな」
「えっ?あっ……ありがとう」
おっ。
沙那ちゃんの一発で女の子と見抜くとは、流石、淫獣と呼ばしめるだけの事はあるんだな。
高性能な『女の子見分けセンサー』搭載型だな。
まぁ実際は、沙那ちゃんの名前も言ってるし。
これだけ可愛良い仕草を見せつけられれば、誰だって十分に女の子だって見破れるだろうけどな。
(↑初見の沙那ちゃんも可愛かったのに、女の子と見破れなかった男の言葉)
「いやいや、ホンマ別嬪さんやな。……ほな、そっちのオッちゃんは、その子の父親か、なんかか?」
「おぉ、そうだ。コチラはビルダーの橘龍二さんだ」
「あっ、あっ、あぁっと初めまして、橘龍二と申します」
橘龍二。
これ……親父さんの本名なんだがな。
完全に名前と、容姿が一致して無い様な気がする。
ヤクザや不良が好む凶暴な代名詞である『龍』って文字が入ってるのに、本人は至って気弱で、腰の低い人だからなぁ。
まぁけど、親が付けた名前だから、これバッカリはどうしようもないんだけどな。
なんかスゲェ違和感を感じる(笑)
「あぁ、宜しゅうに。山中ですわ。……そやけど。橘龍二って、聞かん名やな」
「このバカタレ。失礼な事を言ってんじゃねぇぞ。この人はな。マジで、すげぇビルダーなんだぞ」
「そうだよ。お父さんは凄いんだから」
うむ。
沙那ちゃんも、この馬鹿に、もっと言ってあげなさい。
でも、馬鹿だから、言葉が通じないかも知れないけどな。
しかしまぁ、なんだな。
情報通の山中のアホンダラァが親父さんを知らないと言う事は、親父さん、相当マイナーな部類の人間なのかもしれないな。
けど、それって逆に言えばな。
俺、今世紀最大の発見をしたんじゃね?
世に隠れていた、これ程、腕の立つビルダーを発掘したって事にもなり得る訳だしな。
凄くね?
まぁ親父さん達と出会ったのは、ただの偶然なんだがな。
「コッ、コラ、沙那!!オマエまで調子に乗って、倉津さんの真似しちゃダメだろ」
「えっ?……でも、お父さん凄い……」
「いや、構へん、構へん。って言うか、ゴメンやで沙那ちゃん。そら、お父さんの悪口言われたら誰だって嫌やわな。ほんまゴメンやで」
「うん。じゃあ沙那も、ごめんなさいだね、山中お兄ちゃん」
子供は素直ですな。
それに、少し照れたように謝る沙那ちゃんは抜群に可愛いですな。
「うわっ!!なんや、この子メッチャ可愛いやんけな。なんか買うたろか?」
「えぇっと、じゃあ、ジュース」
……っと言う、沙那ちゃんと山中のやり取りが謝罪後にあったんだがな。
それにしてもなんだよな。
沙那ちゃんって、誰に対しても物怖じしない子だよなぁ。
初対面の人間に対して、自分の意思を、これだけハッキリと伝えれる子は珍しい。
だったらこれって。
人と余り接してなかったのが逆効果に成って、ある意味、良い方向に行ってるって事なのもかもしれない。
こんな事って有るんだな。
「コッ、コラ、沙那!!なんて厚かましい事を言うんだ」
「えっ?だって、山中のお兄ちゃんがなにか買ってくれるって……」
「あぁ、怒ったらんとたってや。俺が『なんか買うたろか?』って言うたんが、元はと言えば原因や。その子に罪は無いで」
うんうん、その通りだ。
此処に関してだけは、珍しくも馬鹿の親玉の言い分は正しいし、純真無垢な子は、それで良いんだと思う。
ある意味、それは沙那ちゃんだけに許された特権みたいなものかもしれないしな。
「あぁ、ですが」
「オッちゃん、ホンマ、構へんって。沙那ちゃん、ほな早速、なんか買いに行こか?」
「うん♪」
「あぁ、なんか、すみません」
「構へんって」
そう言って沙那ちゃんは、山中に付いて行くんだが……
なんか寂しいな。
なんと言うか、山中に沙那ちゃんを取られた感を凄く感じるしな。
あぁ、それはそれとよぉ。
そんなに仲良く手まで繋がなくても、良くねぇんじゃねぇか?
沙那ちゃんの安全の為に手を繋いでるのは、十分な程に解るんだがな。
オマエが沙那ちゃんの手に触れたら、無造作に沙那ちゃんが穢れそうだから、手は繋がなくても良くね?
って言うか!!その汚らわしい手を、沙那ちゃんから、は・な・せ・このスカトロ淫獣!!
なんか生理的嫌だぁ……
……そんな俺の心の叫び虚しく。
沙那ちゃんは、スカトロ淫獣と手を握ったまま、自動販売機のある場所へと共に消えて行った。
うぅ……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
あまり他人と接した事がない沙那ちゃん。
それ故に、受け答えが凄く素直な感じに成ってるみたいなのですが。
それでも相手に嫌悪感を与えないと言う事は、ある意味、天然で真上さんの気質を持ってるのかもしれませんね。
なので案外、色んな事を学んで成長したら、怖い子に成るかもしれませんよ(笑)
さてさて、そんな中。
沙那ちゃんと山中君がジュースを買いに行ってしまった以上。
今の倉津君に出来る事は、そんな沙那ちゃんの心配……ではなく。
親父さんを嶋田さんや遠藤さんに紹介する事がメインに成ってしまいました。
(元から、それが目的ですが(笑))
次回、上手く親父さんを紹介できるのか?
……ってなお話を、次回は書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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