1390 奇妙な切欠から生じる出会い

 奈緒さんと別れた所だと言うのに。

何故か、ぶつかって来た子供と和気藹々を会話をしてる倉津君。


だが、ある約束する為に指切りしたら【奇妙な指切りげんまん】を聞かされて……


***


「これ……まさか流行ってんのか?」

「うん?これって、どれ?指切りの事?」

「おぅ」

「流行ってないよ。お父さんが『指きり』する時に、いつも、こう言うだけだから」


なるほど。

別に小学校で流行ってる訳ではないみたいだな。


ただそうなると、また新たなる疑問がわいてきたな。



「そっか。オマエのお父さんって、なにしてる人なんだ?」

「サラリーマン」

「どんな業種の?」

「おにぃちゃん。業種ってなに?」


小学校低学年ではわかんねぇか。


んじゃあ、もっと解り易く言ってやった方が良さそうだな。



「えぇっとなぁ。どんな仕事をしてるんだ?って話だ」

「楽器屋さん」

「あぁ、だからか。だからオマエ、矢鱈、音楽や楽器に詳しい訳な」

「うん」


なるほど、なるほど、これなら凄く納得の行く回答だな。

さっきの「指切り」にしても「俺の楽器を知っていた事」も「俺の存在を知っていた事」も、全て辻褄が合うからな。


しかしまぁ、中々の音楽エリートだな。



「そっか、そっか」

「あぁ、あの、おにぃちゃん」

「おぅ、どうした?」

「ペン取って来て良い?」

「あぁ、ペンな。なら、此処で待ってるのもなんだし、俺も一緒に行ってやるよ」

「ほんと?」

「おぅ。待つのは、どうにも性に合わねぇからな」

「ヤッタァ!!」


なんかホント可愛いな、コイツ。

一挙手一投足を全て体全体を使って表現してくるから、その感情が上手く伝わってくるんだよなぁ。


いや、ホント可愛いわ。


まぁ、そんな訳でだ。

ガキの歩くペースに合わせて、呑気に親元までチンタラ歩いて行く訳なんだが……まさか、人攫いとかに間違われないだろうな?


……ってか、あの女と別れた所なのに、なにやってるんだ俺?


マジで気落ちしてねぇんだな。


***


 ……んで、親元に到着するんだが。

この子の親って『如何にもサラリーマンです!!』って感じのオッサンだな。


ズバリ!!俺の見解では万年係長クラスと見た!!



「おとうさ~~~ん」

「あっ!!こら、沙那!!何所に行ってたんだ」


沙那?


って事は、名前から言っても女の子?


あぁ……けど、あれだな。

良く見てみると、女の子にしては髪の毛を短く切ってあるけど、女の子と言えば、女の子だな。


目もクリクリしてるし、色も白いしな。



「えぇっとねぇ。アッチ」

「アッチじゃないだろ。チョロチョロして迷子になったら【無名】のライブに連れて行かないぞ」

「うぅ……ごめんなさい」

「うん。解れば宜しい。……所で沙那。そちらの方は?」

「倉津おにぃちゃん。昨日、奈緒グリのライブに出てた人。ベースを格好良くビュ~~~ンって弾いてたでしょ」

「ブッ!!本当だ。……でも、なんでまた?」


いや……そんな仰々しく驚かなくても……

スゲェリアクションを取って来たな。

一瞬、この場にネットのオッサンが降臨したのかと思ってしまったわ(笑)


ってか、俺なんて、そこら辺で何所や彼処で出没してますから、そんなに驚く必要はねぇんッスけどね。


大体、確率で言えば、北海道の熊ぐらいの出没率ですな。



「すんません。俺の不注意で、娘さんに鉢合わせしちゃって」

「あぁ、いや、コチラこそ申し訳ない。どうせ、この子が、他所見しながらチョロチョロしてて、倉津さんに当たってしまっただけだと思いますんで。ホント申し訳ない」


やけに腰の低い人だな。


俺、まだ中学生なんだけどなぁ。

一体、この人には、俺が幾つに見えてるんだろうな?



「あぁ、いや、とんでもないッス」

「ねぇねぇ、お父さん。マジック貸して」

「こら、沙那。そんな事より、倉津さんには、ちゃんと謝ったのか?」

「うん。ちゃんと謝ったよ」

「本当か?」

「あぁ、いや、ホント、直ぐに謝ってくれましたよ。シッカリしたお子さんッスね」

「そうですか。そりゃあ良かった。どうにも男手一人で育ててるので、少々無作法な子に育ってしまっているもんで」


そんな事ねぇけどなぁ。

この子、シッカリしてると思うんだけどなぁ。


けど、片親なんだな。



「ねぇ、お父さん。そんな事よりマジック。おにぃちゃんにサインして貰うんだから、早くぅ」

「あぁ、そうなのかい。だったら、すみません。これで、お願い出来ますでしょうか?」

「あぁ、ウッス。全然良いッスよ」


まぁ無価値ですけどね。

こんなもんで良かったら、幾らでも書きますけど。


……幾らもイラナイッスね。


そうッスね。


……ってな訳で、サラサラッと汚い字(生まれ付き)で、沙那ちゃんのシャツにサインを書く。


すると……



「ヤッタァ!!沙那の超宝物GET!!ヤッタァ!!」


そんなに喜ばんでも。



「良かったなぁ、沙那」

「うん!!それに倉津おにぃちゃんね。凄く優しい人で、凄く親切!!格好良い!!」


おやおや、抱き付いてきましたな。


こりゃあまた、本気で可愛いもんですな。



「コラコラ、沙那。そんなにくっ付いたら、倉津さんに迷惑が掛かるだろ」

「おにぃちゃん……ダメ?」

「いやいやいやいや、良い良い。別に良いぞ」

「すみません」

「あぁ良いッス、良いッス。これぐらい、全然構わないッスよ」

「ホント、すみません。……あぁそうだ。ウチの娘が、色々ご迷惑をお掛けしたお詫びに、なにか飲み物でも買って来ましょうか?」


この人、ホント腰の低い人だな。


そんなに気を遣わなくても良いのに……



「あぁ、良いッスよ、そんなの。ホント、気にしなくて良いッスよ」

「そう言わずに。娘が、こんなに人に懐く所なんて久しぶりにみましたから。ホント、良かったらなんですが、なにか一杯だけでも、お付き合いしてやってくれませんかね」


この子が人見知り?

そんな風には見えなかったけどなぁ。


まぁ父親が、そう言ってるんだから、普段は、きっと人見知りなんだろうな。



「おにぃちゃん……」


懇願されたよ。



「あぁ、じゃあ、すんません。なにか頂いて良いッスか」

「勿論ですよ。なにが宜しいですか?」

「あぁ、なんでも良いッス」

「そうですか。では、買ってまいりますので。そのまま、そのまま、ちょっと待ってて下さいね」

「なんか、すんません」


そう言って父親は、何処かの売店に、飲み物を買いに走って行った。


ホント、何所までも腰の低い人だな。


此処まで徹底されると、ちょっと感心した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


はい、新キャラクターの沙那ちゃんと、そのお父さんの登場です♪

……っと言うか。

ホント倉津君は、何処やかしこで、直ぐ人との出会いをする子ですよね(笑)


さてさて、この新しい出会いが、倉津君に、どの様な影響を与えるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾



……それにしても、沙那ちゃんのお父さん。

この物語にしては、本当に腰が低い人ですね(笑)

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