第4話【占星魔法少女リオン】後編

 我等イグジストと魔法少女は同じ種族である。どちらも物理法則を超越した力を使うのは、そもそも同質の存在だからだ。この次元での戦いは物質世界を利用しようとする異常存在者イグジスト勢力と、他の次元への干渉を許さない魔法少女勢力による内輪揉め、つまり人間達は巻き込まれているだけだ。


 われは元の次元があまり好きではない。魂とエネルギーしか存在しない世界。弱肉強食の徹底した実力主義で、強く巨大な存在であればあるほど強くあり続けられ、それ以外はいつ自分が自分で無くなってしまうか分からない。強くなろうと他の魂を喰らい続ければ、更に自分と他人の境界が分からなくなってしまう。

 われ等の次元から物質世界を観測することは出来たが、干渉することは出来なかった。しかし、物質世界に生命が誕生し、やがて心を持ち始めると話が変わってくる。エネルギー世界我等の次元のものと似たエネルギーが発生し、干渉する取っ掛かりが生まれたのだ。そして、人間の基準で12年前、ついに肉体を手に入れる方法が確立された。

 自分だけの身体を持つことが出来るという情報はわれにとって魅力的な話だった。我は異常存在者イグジスト界隈で有名な人物とコンタクトを取り、結果、人間が密集している平地星浦家がある住宅地一帯を割り当てられた。


 われはこの世界で肉体を持つ事のみを考えていたが、極力人間と関わりたくはなかったので、魂が存在しない場所を探して、誰もいない空間においてあった地球儀を選んだ。しかし運悪く人間に見つかってしまった。

 われは自分が自分であるために異常存在者イグジストになろうとしたが、その人間星浦福獅と会話を進めるうちに、あることに気がついた。他者と関わり続けていても、自分を保っていられるのである。今の身体は彼の持ち物なのだろう。その地球儀に染み付いた魂の破片に共感して依代に選んだので考えてみれば当然なのだが、彼とわれの相性が思いの外良かったのだ。

 彼の質問に答えたり、ズレた言動にツッコミを入れたりするうちに、彼のことを気に入り始めている事に気がついた。しかし、自分は自分だと確信を持って言える。こちらの次元に来てよかったと思えた。


 このまま異常存在者イグジストとして完全に受肉し、自我領域エクメーネを造りだしても、彼なら耐えることが出来るだろう。だが、ここである考えが浮かんだ。


 物質世界で孤高の存在となるより、人間と我等が同等の存在になる方が楽しいのでは?

 我等と人間が手を取り合っている関係性を見たことがある。それが魔法少女だった。


 こうして、われは魔法少女になる決断をした。




次回はリオンの変身シーン&初陣です


占星せんせい魔法少女まほうしょうじょリオン】


身長ハイト/167cm

体重ウェイト/61kg

妖精パートナー星浦ほしうら福獅ふくし

魔法杖ヨリシロ/地球儀

契約日バースデー/2039年4月5日


 異常存在者イグジストマニアの中学生・星浦福獅が持つ異種族への興味きょうみと共感して実体化した魔法少女。

 2時間ごとに88星座からランダムに一つの星座にちなんだ能力を使うことができる固有魔法オリジナルマジック【ドキドキ88星座占い】を持ち、同じ星座でも運勢によって使える能力が異なる場合もあり、全てが運任せのある意味凶悪な能力である。

 また、魔法杖ヨリシロの地球儀を縮小・変形させたキーホルダーを使い、球体部分を動かして地球上の一つの地域に目印をつけることで、その土地に伝わる星座の解釈を固有魔法オリジナルマジックに上乗せすることが出来る杖魔法ウェポンマジック【プラネテラス】を使用することもできる。

 決め技は固有魔法オリジナルマジックによって与えられた能力がどれだけ弱くても閃きで乗り切って魅せる【スターフラッシュ】である。

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