第2話
次の日、4月17日、登校すると長野が僕の席に来た。
「おはよう」僕は言う。
「昨日温泉に行ったんだ。」
「どこの温泉。サウナとか入ってみたいな」
「めちゃくちゃ、ムキムキの人がいてビビった。」
「裸だから、より一層ムキムキだろうね。」
「サウナ入ったんだけど、10分も持たなかった。」
「だよね、10分持つ人はすごい。」
「今日、紅白戦だって。」
「マジで、俺たち試合出れるの」
「うん、そうらしい」
「頑張ろう」
やる気になって、授業は真面目に聞いた。
3限目の授業の英語は答えを間違えて恥ずかしい思いをした。
放課後になって、部活が始まる。
僕は紅組に選ばれてレフトの守備についた。
打順は7番レフト
「今日は紅白戦だ。来週の練習試合でスタメンを決めるために指標にする。
この試合で活躍したら、練習試合に出れると思ってくれ。」
「はい。」野球部員のみんなが言った。
1回表が始まった。
監督は全体を見てメモを取っている。
緊張感がある雰囲気になった。
僕のチームの紅組は守備から始まる。
僕は白組で、7番レフトで出る。
白組のピッチャーはエースの本城さん。
最速140kmのストレートを持っている。
ワインドアップから入る投球フォームで
大きく腕を振るスタイルで迫力があった。
遠くからボールを見ている僕だが、打てそうにないなと思った。
本城さんは、前回の夏のベスト32で悔しい思いをしている。
昨年の夏、5回6失点と大量リードを取られて負けた。
その悔しい思いをボールにのっけて投げている。
投球練習が終わって審判がプレーボールと言った。
1番バッターは、左打ちの2年生の水野さん。何回か素振りをした後に左打席に立った。
キャッチャーは東條さんで、プロテクターをつけている。
股の下で指を動かしてサインを出す。
本城さんがうなずいて、大きく振りかぶってボールを投げた。
高めのストレートにバッターは反応せずにストライク。
1球目の迫力のある投球で静まり帰った後、「ナイスボール」とショートの前園が言う。
Side長野
僕は長野1年生だ。藤沢とクラスが一緒でよく遊んでいる。紅白戦は、紅組になった。
今日の紅白戦は出れなかったが明日は出る予定になっている。
監督が選手たちを見る目線は能力を確かめているようで、選手たちも緊張感を持って試合に臨んでいる。
僕は、紅組の右のベンチに座って試合を見ている。
1回表 紅組の攻撃。
1球目のエース本城さんのストレートに驚いた。
こんなに速いストレートは打てないんじゃないか。
「前中、本城さんのストレート打てるか。」僕は紅組の前中に聞いた。
「いや、難しいかもしれない。」前中が答えた。
「じゃあ、変化球待ちかな。」
「変化球はフォーク、スライダー、カーブ、シュートが投げられるらしいよ」
「めちゃくちゃ球種持ってるじゃないか」
「これは難しいかもね。」
「前中は明日でしょ」
「うん、明日がんばるよ」前中が言った。
1年生の前中とは、藤沢を通して仲良くなった。
本城さんが1番バッターの水野さんをストレートで空振り三振にする。
戻ってきた水野さんが。僕の隣に行って話しかける。
「今日の本城さんは本気だ。」水野さんが言う。
「いつもと、違うんですか」僕が言った。
「いつもより、球が速くなってる。」
「打てそうですか。」
「フォアボール選ぶ方がまだ、塁に出れる。」
「攻略むずそうですね。」
僕は紅組なので、いちおう紅組の応援をしている。
2番打者の秋元さん。
3番打者の島津さんが両方とも凡退に倒れた。
「長野、エースの球の速さすごいですよね。」1年生の紅組の窪島が言う。
「うんすごい」
「長野は今日でないんですか」
「明日出る。」
1回の裏が始まった。
ピッチャーは2年生芦原。左ピッチャーでテイクバックが見にくくて打ちにくいらしい。
風が少し吹いていて、木が揺れている。
監督は観察するように芦原を見ていた。
1回表、本城の投球で3者凡退に抑えられたから、芦原さんも同じく三者凡退にしてほしい。
1回裏
1番バッターは本多、2年生である。
足が速くて、打率も高い。
本多が左打席に立つ。
セーフティバントがあるので、サードも少し前寄りになっている。
キャッチャーは宮島。
芦原が足を上げてボールを投げる。
バッターの本多はスイングするが軌道からはずれて、ボールが落ちてきて当たらない。
1ストライクになった。
「おお、フォークボールいいじゃん。」窪島が言った。
「うん、芦原さん。初球いい。」僕が言った。
5球目のインコースのストレートを本多さんが引っ張って打つがサード正面でアウト。
1アウトとなった。
「1アウト、1アウト」ピッチャーの芦原が野手に向けて、言う。
この紅白戦は、野球部専用グランドで行われている。
ホームから外野スタンドまで、センター120m 両翼92mとなっている。
学校から歩いて1kmの場所に野球部専用グラウンドがある。
2番バッター 安原
安原は3年生である。
右バッターボックスに立った。
「安原さん、バントが上手いらしいよ」僕が言った。
「芦原さんの左投げでリリースポイント見えにくいのが武器になるよ」窪島が言った。
3球目のフォークボールを安原さんが振って、空振り三振に倒れた。
その後の3番バッター冨尾がセンターフライに倒れて3アウトチェンジ。
1回の表は点がはいらなかった。冨尾は1年生で、露木に並んでバッティングが上手い。
長打力がある。
2回表になった。紅組の攻撃
本城さんの球の威力は落ちていなくて。
一年生の4番露木がバットの先に当ててピッチャーゴロになった。
「露木って1年生なのに4番なの」窪島が聞いてくる。
「いやいや、違うよ。あんまり打順は重要視してなくてランダムだって。
たぶん、どの打順でも自分の役割を発揮できるか見ているんじゃない。
打順通りにしたら、1年生出れないでしょ。下位打線になってしまうから
それを防いだんじゃない。」僕が言った。
「ああ、なるほどね」窪島が言った。
「なんか両投手とも、立ち上がりがいいね。長野はどう思う。」
「そりゃ、1番手と2番手の対決だから。」
「どっちが先に崩れるかな」
「初めて、高校の試合見るからそれはなんともいえない。」
「けど、僕ら紅組だから、紅組の芦原さんに勝ってもらいたいよね。」
「だよね、やっぱ試合は勝たないと。」
1アウトランナーなしで
5番 市田 一年生。
左打席に入った。
本城さんの初球のスライダーを積極的に振っていって。セカンドゴロに倒れた。
2アウトランナーなし。
「1年生が4番、5番打ってるの面白いね」窪島が言った。
「そろそろ、ヒット打ってほしいな。」僕が言った。
6番 北川 3年生。
右打席に入って、バットをふらふらさせて構えた。
5球目のストレートを芯でとらえてセンター前ヒットとなった。
「おお、初ヒットは3年生の北川さんだ。」僕が言った。
「長野。 北川さんって構え方変わっているよね。」窪島が言った。
「そうだね」僕が言った。
「そういえば、こないだ。新商品のチョコレートがでたんだ。」窪島が言った。
「え、そうなの。」
「買ってきたんだけど。長野も食べる?」
「食べる、食べる。」僕が言った。
窪島がポケットからチョコレートを出して僕に渡した。
僕は口に入れて、味を評価する。
「うん、かなり甘い味付けだ。若い人に人気がでるだろう」
「だよね、これ今後も店頭においていけるよね」
僕らがチョコレートの新商品に盛り上がっていると。
「1年、何やってる。」島津さんがこっちに来た。
「お菓子を持ち込んだらだめだろう」と島津さんに怒られた。
僕らはすいませんと言ってお菓子をしまった。
いつの間にか、2回表が終わって、スコアボードを見ると得点が0だった。
同じ1年の市田に聞いてみると。
3年生の向井がショートゴロに倒れたらしい。
藤沢の青春の高校野球 Taku @Taku777701
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