第15話 因果応報 その1
「突然だが、和菓子屋の倅さんが亡くなったらしい」
やや悲痛な面持ちでバンとタグの父親が二人にそう伝えた。3人でその店に立ち寄ってからまだ一月程しか経っていない。
「何があったんでしょう?」
バンが聞いた。
「よく分からないんだが、通常ではありえないような事故に巻き込まれたらしい」
情報通の父親もまだ詳しい状況を把握していないようだった。
「いわゆる天罰ってやつかな?」
バンが独り言を言った。
「めったなことを言うもんじゃない。人の不幸のことなんだから」
「すいません・・」
バンは久しぶりにヒンジの所を尋ねた日のことを思い出していた。
「そういえば、先生はあの時何を思ったのか分からないけど、急に黙り込んでしまったんだよな。あの時一体何を思ったんだろう。何を感じ取ったんだろう。これは是非聞いてみたい!」
バンは無性にヒンジの所に行きたくなった。
「明後日のお昼から告別式らしい。参列するつもりだがお前らも行くか?」
「はい。そうさせてください」
バンは和菓子屋の倅が亡くなったその原因を探ってみたいと考えた。
「明日、ヒンジ先生の所に行ってきたいのですが・・」
「ああ、構わないよ!いろいろ話を聞いてきたらいい」
父親はそう言ってバンからの申し出を承諾した。
翌朝、父親の車を借りてバンとタグはヒンジの所に向かった。
「突然、行っても大丈夫ですかね?」
タグが心配そうに尋ねた。
「大丈夫。昨日のうちに電話して了解は取ってあるんだ」
「おお! やっぱり
「こんなことで褒めたって、何にも出ないよ」
出発して直ぐの二人の会話はたわいもないものだった。しかし和菓子屋の倅のことに話が及ぶと顔つきが厳しくなった。
「事故ですかね。それとも事件なんですかね」
タグが一番気になっているところを口にした。
「実は昨日のうちに警察に死因についての話を聞いたんだ。先生の所に行くのに何も情報がないんじゃ困るしね。結果としては事故扱いらしいとのことだったよ」
「そんな話があったんなら、もっと早く教えてくださいよ」
タグが一寸不満そうに言った。
「悪かった。ほら、例の懇意にしている警察官。彼から話が聞けたのが夜遅かったんだ。もうタグは寝てる時間だったからさ。それで今になってしまった。
検証中とのこともあって詳しい状況はやっぱり聞けなかったけど、ただ昨日の段階では建設現場で原因がよく分からない足場の崩落事故が起こって、それに巻き込まれたようだとは言っていたよ」
「そうなんですか。何でそんな事故が起こったんでしょうね・・」
結論の出ない会話を続けていた二人はやがてヒンジの家に着いた。
「いらっしゃい! ヒンジが作業場で待ってるからそっちに行って」
コウが対応した。
「先生! 失礼します」
二人は作業場に入るとまず
「ありがとう」
ヒンジは二人のその行動にお礼を言った。
「先生、お忙しいところすいません」
「挨拶はいいから、あっちで話を聞こう」
ヒンジは休憩場所に二人を促した。
バンは把握している限りの全てをヒンジに話した。
「う~ん・・ そうか。事故扱いなんだね」
ヒンジは目を閉じて考え込んだ。というより誰かと話をしているようにも見える。
・・・・・・・・
「これは成るようにして成ったようだね」
ヒンジが呟いた。
「それはどういうことですか?」
バンがヒンジのことを覗き込むように尋ねた。そこにテグスがお茶を入れて持ってきた。ヒンジはそのお茶を一口すすり大きく息を吐いた。
「この事件には首謀核がいる」
「首謀者ですか?」
バンとタグが興味深そうに首をひねった。
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