#2 オオキトシユキと元妻の休日

 俺の左手から指輪がなくなったのに、妻の左手から指輪は消えなかった。

 あの後妻はオオキトシユキさんと結婚した。笑顔の2人の写真を見せつけるように送ると、すぐに妻は俺のLINEアカウントを消した。


             *


 私はタクローの妻。今はトシユキの妻。トシユキさんは大手の社長だ。やっぱり今は金!

 そして2人でウエディングドレスを着た写真を撮り、タクローに送信すると、タクローのLINEは削除した。

 これで準備万端、2人で幸せな生活を送る――はずだった。


 結婚生活17日目。私はエレベーターの中にいた。”億ション”と呼ばれる高級なマンション。やっぱ高級ライフはENJOYに限る!

 そして部屋に入ると——いつもは明るい部屋が、なぜか暗い。


「トシユキさーん?」


 寝てるのかな、と私は思った。そして明かりをつけ、部屋に上がると——


「トシユキさん!?」


 夫の姿はなかった。代わりにダイヤモンドと置手紙――


「ごめん、俺はフリーター。(訂正します、今はコンビニバイト。)年収はほぼ0。ごめん。家賃、払っといて! じゃあね。」


 もう一通、置手紙。


「追伸。ダイヤモンドを買うために5000万円費やしました。つまり1億円か……借金返済、よろしくね!」

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