被写体

岸亜里沙

被写体

ファインダー越しの君は、僕にとって最高の被写体アイドル

僕はずっと君を見ている。

レンズを通して、様々な表情を見てきた。

町の片隅で、君の部屋の窓の向こうから。

ふとした笑顔、泣いた顔、怒った顔に、悲しい顔。

二度と無い、その瞬間瞬間を僕は切り取った。

そのどれもが、僕の記憶に鮮明に焼き付いて離れない。

君にカメラを向ける行為を、人は犯罪で気持ち悪いと罵るだろう。

だけど僕は、君を傷つけたい訳じゃない。

君をずっと見ていたいだけなんだ。

僕と付き合ってほしい訳でもない。

ただ君を撮らせてほしい。

君の人生が自由であるように、僕の人生もまた自由。

君は僕の事を知らないだろう。

だけどそれでいい。

これはカメラを隔てた恋愛。

だからお願いだ。

これからもずっと、僕の被写体になってくれ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

被写体 岸亜里沙 @kishiarisa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ