第6話
気持ち悪い嫌な汗が額を伝い落ちる。
勢いに任せたものの、正直言って75%は安心出来る確率では無い。
そう。普通に外れる可能性は大いにある。
パチンコで大当たり継続率が90%だったとしても、
1度も継続せずにハズレを引いてしまうことも多々ある。
10回に1回の確率だと考えれば大丈夫そうな気はしてしまうが仮に1000回だと考えれば100回も外れてしまう確率なのだ。
それに対して今回は更に低い75%。
25%のハズレは…1/4。
今更になって恐怖心が全身を包み込んでいた。
【スキル発動:ギルティラック】
結果.........抽選中
たった数秒のはずなのに永遠にも感じられるほど長く感じる。
頼む。
引くな。
ここで。
25%...。
引くな………ッ!!!
【スキル発動:ギルティラック】
結果.........抽選中
点滅している抽選中の文字が消えた時には結果が出てしまう。
怖いという気持ちが心を蝕んでいく。
早く、早く、早く。
そう思っていたはずなのに、いつしか心の中で永遠に結果が表示されないことを願い始めるほどに。
【スキル発動:ギルティラック】
結果.........CONGRATULATION!!
報酬:対象に対して強制的にマリオネットの発動
ビギナーズラックによる再抽選...失敗
「………ッ!」
繋がった…!!
まだ、終わりじゃねぇ!!
一気に吹き返す生への実感。
ジェットコースターのように急激に加速する安心感。
これで俺はまだ生きていられる。
……戦える。
さっきまで圧迫されて暗くなっていた視界が、俺の瞳が光を取り戻してゆく。
「我が下僕に命ずる!目の前にいるウルフを殲滅せよ!そしてそこの鳥は死んでも守れ!!」
強制マリオネットによって与えられる主からの命令。
これは絶対だ。
火を消し終えたウルフが殺意を込めた眼差しで俺を捉えていた。
全速力で走り始め、俺の首めがけて牙を剥き出しにしてこちらに飛びかかる。
目と鼻の先、吹けば息もかかる距離で、俺とウルフの瞳が交差する。
ヤツの牙が俺の首に触れるその刹那。
ナハナハのツタがウルフの体を絡め取り、目の前に迫っていたヤツの牙と瞳が離れていく。
宙吊りにされたウルフはどうにかして抜け出そうともがき始める。
だが、俺の命令によりヤツを殲滅することが目的のナハナハはそれを許さない。
始めのうちはもがいていたウルフだったが、躊躇無く絡みつくツタに為す術なく身動きが取れなくなった。
そして、まるで雑巾を絞るようにねじられてゆく。
…。
これ以上は見ている必要はない。
「そうだ、あいつは…!」
火を消し去ったことにより、視界が悪くなったことで白い鳥の姿を見つけるまで少し時間がかかる。
よし、見つけた!
俺は傷を負った腹を抑えながら、その白い鳥の方に近づいてゆく。
ブシャァッッ!!
背後から出来ることなら聞きたくは無い音が聞こえてきた。
ウルフの体が引きちぎられたのだろう。
複雑な気持ちだった。
奴らからすれば生きるために必要な餌だった。
食べるために。決して遊びじゃない。
この鳥だってそうだ。肉食じゃないにしても穀物やら虫やらを食べて生きている。
命は全て平等なはずだ。
だが、俺の介入により妨げられた。
そして食べるためでもなく奴らは俺に命を奪われた。
俺がしたことは、正しかったのだろうか。
そんなことを考えながら、
ナハナハに最後の命令を下す。
そして薄れゆく視界の中でその鳥を抱きしめながら俺は意識を手放した。
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