第2話
「おい!囚人のくせに態度でけぇんだよてめぇは!」
「………。」
いや、なんでこうなるかね。
俺は普通にお仕事探してただけなんだけど。
ー2週間前ー
「さて…朝は狙い台があったから後回しにしてたけど、良さそうな依頼があったんだよな。」
今日の宿代を薬草集めで稼いだ俺は、ギルド協会に気になっていた依頼がまだ残っているか確認しにきていた。
「……まだあるな。」
【依頼内容】
急募!
誰にでもできる簡単なお仕事!
お荷物が届いたら指定の住所に送るだけ!
☆住居料タダ☆☆残業ナシ☆☆時間指定ナシ☆
−報酬:週給120000p−
…。
怪しすぎるよな。
普通に考えて…。
俺が元いた世界でも見た気がするよ、なんなら。
絶対だめなやつだよ。
やめとこやめとこ、触らぬ神に祟りなしってね。
「これなら俺にもやれるか。」
【依頼内容】
家事のお手伝い
ギルドを通して信用できる方にお願いいたします。
−報酬:14時〜17時 2800p−
「今は…」
13時過ぎか。
場所も近いし、今すぐ依頼を受ければ間に合いそうだな。
依頼を決めた俺はボードからそれを左手で剥がし受付に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「結構離れにあるんだな。この辺の住宅街なら立地的にもそんなに値段も高くないだろうに。」
そこには整っているとは言い難い草木の中にぽつんと建った一軒家があった。
まぁ、風情溢れる自然の中で暮らしたい物静かな人かもしれんしな。
あまり干渉するとこでもないか。
「ごめんください。ギルドからの依頼で訪問いたしました。」
ノックをする。コンコンと小気味よく二度ほど。
ちょっと俺イカしてるじゃん。できる紳士っぽいじゃん。
…。
一応1分は待ってみたものの誰も出てくる気配がない。
もう一度ノックしようと左手をあげた時、ドアの向こうに人の気配がした。
よかった、間に合わなかったかと思ったわ。
「すみません、ギルドで依頼を通して家事のお手伝いにお伺いした・・・」
ガチャリ。
開いたドアの向こうにはめちゃくちゃナイスバディなお姉さんが現れた。
いやいや、普通に家の雰囲気的に老夫婦とかそんな感じだと思ってたんだけど。
かわいすぎるやん。
家事のお手伝いどころか僕の息子のお世話もお願いしたいところ。
「ごめんなさい、ちょっと手が離せなくて・・・」
俺もポッケに入れた手で息子を抑えているので手が離せない。
「いえいえ、間に合ってよかったです。さっそく何かお手伝いしましょうか?」
「お願いできるかしら。私は1階で洗濯物をやるから二階の寝室のお掃除をお願いね。」
ナイスバディな彼女は俺に家の中の案内をしてくれたのち、ごめんなさいねと他の部屋に向かっていった。
−−−ふむ。
とりあえず寝室に来てみたが、まぁなんというか。
普通に汚い。お部屋というより汚部屋。
こんな状態では、のちに待っているかもしれないサービスタイム時に支障をきたしちゃうじゃない。
「…やるか。」
とりあえず掃除なんかは魔法を使えば簡単に済むしな。
「………。」
魔法を唱えようと少し開いた俺の口が止まる。
けしからん、けしからんぞ。
よく見たら肌着なんかもそこらへんに散らかっている。
…やっぱり依頼だし、お仕事だし、そんな魔法でちゃっちゃと終わらすのはなんか違うじゃない。
やっぱりお手々汚してちゃんと綺麗にするのが礼儀ってもんよね。
しかし、ホウキやら雑巾やらは流石に持ち歩いていない。
「拝借するしかないか」
俺は少しだけステップ気味に階段を下りて彼女を探す。
一応さっき消えていった部屋に行ってみるが見当たらない。
おかしいな…。
「まぁ掃除道具くらい借りても文句はないだろ」
踵を返そうとした時、誰かが訪問をしてきた。
郵便屋が荷物を持ってきたらしい。
今しがた彼女がいないことは確認済みである。
代わりに受け取っといておくか。
「ありやしたー!」
郵便屋は元気に自転車に乗って去っていった。
異世界なんだから魔法で飛びなさいよ。
まぁ魔力の上限やらなんやらで燃費は悪いんかな。多分。個人差あるし。
「さてと…。」
荷物を受け取るときに気付いたが、玄関ドアを開けたすぐ左手前にホウキやらなんやらはご丁寧にバケツ付きで見つけることができた。
この世界では土足が当たり前だから入ってきたときには気づかなかったのね。
少し経って俺の腰も悲鳴を上げてきたころ、それを見計らったかのように急に激しく玄関がノックされた。
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