第13話 人間になりたい
タクシーが、旅館の玄関に着くと、旅館の玄関にロマンちゃんが立っています。
そして、よしくんが、タクシーから降りて旅館に入って行くと、フロントでみんなが待っていました。
よしくんが、振り向くと、ロマンちゃんが司会を始めました。
「えー、それでは、ここで、小話を一つ…」
すると、奈美ママが、
「ロマン、何ふざけているの、まじめにやりなさい!」
ロマンちゃんが、大きな声で言います。
「今から、いっこさん、よしくんの歓送会を始めまーす!」
いっこは、大きなスーツケースと共に嬉しそうに立っています。
よしくんも部屋から荷物を持って来ました。
そして、みんなの前に立つと、よしくんは、
「この3か月、大変、お世話になりました」
ぺこりとお辞儀するよしくんに、女将は、
「元気でがんばるんだよ。 また、遊びにおいでー」
と、涙を流しています。
全員で、いっことよしくんを拍手で包みます。
すると、奈美ママが、
「さあ、みんなで神出神社にお参りに行くわよ!」
奈美ママは、いっことよしくんを、縁結びの神出神社にお参りに連れて行きたかったのです。
旅館の玄関前に屋根に梯子を乗せた1台のワゴン車が止まりました。
「今から、神出神社へ行くでぇ!」
角刈り頭のお兄さんが、電気屋のワゴン車で迎えに来ました。
ワゴン車内で奈美ママが言います。
「サンロードの薬局は、神出にある病院薬局の出張所になって良かったわ」
「お父さんとしても、薬局が無くなってしまったのでは無いから、嬉しいと思うわ」
と、いっこが言うと、
「お父さんは、心配しないでね、 老人ホームには、様子見に、ちょくちょく行ってみるからね」
と、ロマンちゃんが、元気良く言ってくれます。
程なくして、神出神社に着きました。
ワゴン車から降りた、いっこ、よしくん、奈美ママ、ロマンちゃん、角刈り頭のお兄さんは、二拝二拍手一拝で参拝しました。
みんな、人間に化けた狸や狐なのに神様は、驚いた様子も無く、平穏な参拝でした。
そして、よしくんが3か月前に降り立った緑が丘駅です。
新開地行の電車が、ホームに近づいて来ました
「ようっ! 新婚さん! お似合いやないか!」
角刈り頭のお兄さんが拍手します。
「頑張ってねーっ!」
ロマンちゃんが、手を振ります。
奈美ママは泣きながら、
「よかった! いっこ、東京へ行っても、元気でね。また、遊びに来てね」
いっことよしくんは、電車に乗ります。
すると、自動改札を飛び越えて神池電鉄の社員さんが走って来ました。
ホームのみんなの所に来ると、はあはあ息を切らしながら、
「会社に連絡したのですがー 来週から押部谷変電所の増強工事があり、立ち会って欲しいとのことなのでー」
角刈り頭のお兄さんは、
「今度は、いっこと一緒にとんぼ返りやぁ」
と、言って、みんなで大笑いです。
ところが、みんなのお尻から尻尾は、出ていません。
雌岡山の女神様が、あたかも、人形のピノキオを人間にしたかのように、みんなを人間にしてくれたようです。
もちろん、電車の中で幸せそうないっことよしくんにも尻尾は付いていません。
でも、尻尾の代わりにマイナンバーは、全員に付けてくれたようでした。
おわり
いっことよしくん物語 ~薬局編~ がんぶり @ganburi
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