第11話 いっこ救出作戦1
毎晩、よしくんは、いっこの薬局でドリンク剤を飲み、押部谷変電所の作業を順調に行って来ました。
そして、そろそろ、押部谷変電所の仕事も終わります。
緑が丘のみんなと仲良くなったのに、お別れが近づきました。
よしくんは、夜間作業が終わり旅館に帰る途中、サンロード横丁を通ります。
そして、スナック奈美のお店の前に来ると、いっことスナック奈美に呼ばれたときの事を思い出します。
カラン、カラーン
「ようこそ、スナック奈美へ」
奈美ママが、よしくんといっこを出迎えます。
二人がテーブル席に着くと、奈美ママは二人の前に座ります。
「単刀直入に言うわね。 よしくん、いっこを東京へ連れて帰って」
よしくんは、突然の話に目が点です。
「いっこを、あの薬局から救い出して欲しいのよ」
奈美ママは、続けます。
「いっこと結婚してやってくれる?」
いっこは、下を向いています。
「よしくん! 男ならいっこを抱きとめてやって」
奈美ママの強い口調に、よしくんは、
「もちろん、いっこがお嫁さんになってくれるのなら… お願いします!」
奈美ママは、
「いっこ、いいね?」
と、いっこに念を押すと、いっこは深く頷きました。
すると、ロマンちゃんがカウンターで、
「いっこさん、よしくん、おめでとう!」
と言って、クリスマス用のクラッカーを鳴らしました。
パーンッ
よしくんは、いっこに言います。
「お父さんの事は、どうするの?」
よしくんが、一番心配している事です。
奈美ママが、よしくんに言います。
「あのお父さんは、いっこを夜間薬局に閉じ込めて働かせてきた人間なのよ」
続けて言います。
「薬剤師だった奥さんに先立たれているの」
奈美ママの口調が強くなります。
「もともと、お父さんは薬剤師では無いから、いっこに奥さんの代わりをさせたのよ!」
よしくんは、とつとつと、
「でも、いっこを育ててくれたことには、感謝するべきだと…」
いっこが、口を開きました。
「いっこは、役所に戸籍が無いし、マイナンバーカードも持っていない…」
続けて言います。
「だから、高齢なお父さんに公共のサービスを受けてもらう手続きは出来ないの」
よしくんは、
「そうだね。自分もそうだよ」
奈美ママは、
「でも、お父さんは人間よ。いっこという娘もいない、身寄りの無い後期高齢者なの」
と、言うと、いっこが、
「それがー、お父さん、ね、実は、順番待ちの特老、特別養護老人ホームに入居出来るの!」
いっこは、笑顔でよしくんを見つめます。
よしくんの沈んだ顔が、明るくなりました。
奈美ママは、目を潤ませ、
「そうよ! お父さんにとっても幸せな道が開けたの!」
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