第5話 夜間作業
午前0時、よしくんが、変電所の門扉の前で待っていると、神池電鉄の自動車が来ました。
よしくんの作業開始は、午前1時で門扉集合後、神池電鉄の社員立会のもとで作業します。
電鉄変電所は、普段は無人で、中央の電力指令所から遠隔制御されています。
NTTの時報の声、
「…午前1時ちょうどをお伝えします。プッ、プッ、プッ、ポー」
遮断器の大きな音、
バーンッ!
き電が停止しました。
遮断器は、大きなブレーカーで、架線に電気を供給するのを制御するものです。
昔、神奈川の電車の事故で電気の供給が切れずに供給し続け、その結果、電車が燃えて多くの乗客が焼け死んだことがありました。
だから、今では、この遮断器が電気鉄道では、重要な機器となっています。
神池電鉄の社員さんが実際に電気が来ていないかチェックします。
続いて、別の社員さんが遠隔制御の通信装置を操作します。
「遠方から直接に切り替えました」
これで、完全に電車への電気の供給は切れました。
当然、電車は、もう線路を走っていません。
よしくんは、バーンッ!という大きな音で、さっきまでのいっこに対しての、ふわふわした気持ちも収まったようです。
よしくんは、変電所内のコンクリートで囲まれた小部屋を見ていました。
遮断器が収納されているのですが、強い電気を切ったり入れたりするのでコンクリートの小部屋に閉じ込められています。
それは、まるで牢獄のようです。
いっこは、お父さんに薬局に閉じ込められているようでした。
しかも夜間にたった一人で薬局にいるのです。
いっこは、可愛いのになぜだろうか?
お父さんに仕えることで婚期を逃してしまったのか?
でも、いっこは、人間だし、自分とは叶わぬ恋なのだ、とか…
思い悩むよしくんでした。
そうです。
大きな問題は、自分は狸、いっこは人間ということです。
ホストになった狸は、
「遊ぶだけなら人間の女と付き合うのも有りだぜ」
と、笑いながら言っていました。
よしくんは、女性と付き合うなら真剣にお付き合いして結婚したいと思うのです。
よしくんにとっては、結婚が前提条件なんです。
だから、女性と遊びの付き合いは出来ないんです。
さらに、いっこは、お父さんと呼ぶ人間に監視されています。
きっと、いっこには、自由が無いのです。
そして、よしくんは、自分自身に言い聞かせます。
①いっこを、可愛いと思ってはいけない!
②いっこを、好きだと思ってはいけない!
③いっこと、お付き合いしてはいけない!
④いっこと、結婚することはできない!
などなどと、自分を戒めるよしくんでした。
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