第4話 出逢い
自動車をサンロード専用駐車場に停めると、よしくんは角刈り頭のお兄さんに教えてもらった『サン薬局』を目指して歩きます。
10時を過ぎると、灯りの点いているお店は、サン薬局しかありません。
ピロピロ、ローン
よしくんが、明るい店内に入るとカウンターの向こう側に白衣の女性が立っています。
「いらっしゃいませ」
よしくんは、女性に見とれてしまいました。
昔、こんな歌がありました。
♪あーあー、わたしのハートはー、ストップモーション~♪
よしくんの心は、ストップしてしまいました。
ずうっと前から知っていたような、可愛い笑顔です。
中年女性のようですが、美人と言うより、愛嬌のある可愛い女の子のようです。
声は、若い女性のようにしか思えません。
「あのー、手、手荒れに効く、ク、クリームみたいな物、ありますかぁ?」
よしくんは、どきどきしながら、やっと声を出すことが出来ました。
「この、ハンドクリームがいいと思いますよ」
と言って、にこにこしながら、ハンドクリームを出してくれました。
「そ、それ、ください」
よしくんは、更にどきどきです。
「ありがとう、ございます」
支払いを終えると、よしくんは、やっと言います。
「夜、しかやって、いないんですか? この薬局」
「ええ、夜間緊急の薬局なんです」
「へーぇ、大変なお仕事ですね。 僕も今から押部谷で夜間作業なんです」
よしくんは、緊張が取れて、滑らかに喋りました。
よしくんは、名刺を取り出すと女性に渡しました。
「夜間作業で怪我などした場合の救急病院は、作業手順書に記載されていますが、緊急連絡先が夜間もやっている薬局だと心強いので、よろしかったら教えてください」
女性は、薬局の名刺をよしくんに渡すと、
「よしくんと呼んでもいい?」
よしくんは、女性の意外な返答にびっくりしてしまいました。
「あっ、はいっ、喜んで…」
女性は、
「いっこと呼んでね、よしくん」
と、打ち解けた良い感じです。
よしくんにとって、女性と、こんな出逢いが、待ってたなんて驚きです。
よしくんは、諦めていた恋をする、いや、恋人を持つ願いが叶うことは、思ってもいなかったのです。
すると、カウンターの奥でごそごそと音がしました。
いっこは、声を潜めて言います。
「お父さんが、お水飲みに起きて来たみたい」
どうやら、旦那さんでは無さそうです。
よしくんは、安心しました。
「明日の夜に、また、来ます」
すると、いっこは、
「この時間だったら、お父さんは寝てしまうから、よしくんとお話出来ると思うわ。昼間は会えないけど…」
と、言いました。
よしくんは、喜び、心踊りました。
「いっこと、お話したいです」
ピロピロ、ローン
よしくんは、ふわふわした気持ちを抑えて、店を出ました。
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