第3話 けったいな薬局
よしくんは、自分の宿泊室に入ると、早速今夜の仕事の準備を始めました。
「あっ、 いっけねぇ、ビニテを切らしている」
どうやら、よしくんは、重要な道具の一つであるビニールテープを切らしてしまったようです。
よしくんは、フロントの女将さんに聞きます。
「電気屋さんって、近くにありますか?」
「駅前の道に、サンロード商店街があるから、確か入口辺りに電気屋があったと思うけどねぇ」
女将さんは、続けて言います。
「6時には、夕飯用意しておきますからね。 食堂のテーブルの上に部屋番号を置いてあるからね」
「はい。分かりました」
よしくんは、そう言うと旅館の駐車場の自動車に乗り込みました。
程なくして、サンロード商店街入口です。
よしくんは、商店街専用駐車場に入ります。
途中で、『サンロード横丁』という裏通りを見つけました。
「居酒屋、スナックがいっぱいあるなぁ。 休みは、ここに決まりだな」
そして、車を置くと電気屋に入り、ビニールテープを買いました。
店主の無愛想な角刈り頭のお兄さんに支払いを終えると、よしくんは、
「お伺いしますが、薬局は近くにありますか?」
と、恐る恐る聞きます。
「2軒隣にあるでぇ、 ただし、開店は夕方からや、 夜しか開けていない薬局や、 けったいな薬局やでぇ」
と、角刈り頭のお兄さんは、薄笑いを浮かべて言いました。
よしくんは、寒い季節は、乾燥して手のあかぎれに悩まされます。
「夜しか開けていない薬局かぁ」
よしくんは、独り言を呟くと電気屋を後にしました。
よしくんは、食堂で夕飯を食べながら考えています。
変電所の作業開始は1時です。
0時に変電所の門扉前集合で神池電鉄の社員と待ち合わせですから、その前に薬局に寄ることが出来ます。
その薬局は、普通の人が寝る時間から仕事が始まるよしくんと似ている薬局だと思いました。
夜間の救急病院とかと同じように、夜間に薬が必要になった患者のための薬局なのかなと、よしくんは考えました。
どうであれ、自分と同じように夜に働いている仲間がいることは、よしくんも孤独では無いと思いました。
そして、よしくんは、夕飯を食べながら食堂を見回します。
よしくんの他に宿泊客は、3人しかいません。
よしくんと同じように仕事で宿泊しているのか、観光で宿泊しているのかは、全く分かりません。
ただ、食事しながらビールを飲んでいるので、よしくんと同じように、これから仕事というのでは無さそうです。
よしくんは、他人の夕食時の飲酒、所謂に晩酌を羨ましく思うのでした。
ちょっと、アルコール依存症なのかもしれません。
さて、宿泊室で少し、休憩したら出発です。
まずは、そのけったいな薬局へ。
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