第2話 なぁお前間男だろう?首置いてけ!
鬼ヶ島の領地に入り、鬼ヶ島家の邸宅まで辿り着く中で何度も鬼ヶ島一族の襲撃があったが、皆で悉くを返り討ちにしてやった。ぶっちゃけ大半は犬士郎がホワッシャァという叫び共に殴りつけると敵が爆散するので俺達はそんなに大したことをしていない気もするが気にしない。最近だらしねぇなって?だって犬士郎マジで強いんだもん。仕方ないね、全てはチャンス!
「ここがあの女のおうちね!!」
ついに鬼ヶ島の邸宅の門の前にたどり着いた事の達成感と共にそう告げる。ちなみに門番はすでに始末した。
「――――よっしゃぁ、吶喊(ブッコ)もうぜ桃ちゃん!!俺はクズをブチのめしたくてウズウズしてるんだ」
もう辛抱たまらん♂という様子でイキり勃……たつ雉助の言葉に答える。
「ああ、―――行こうぜ、皆!!」
お互いの顔を見合わせて頷き合った後、4人で門を蹴破り、鬼ヶ島の邸宅に殴りこむ俺達。当然敵の抵抗も激しいが、猿吉が投石でけん制する間に俺が刀で敵を斬り捨て、あるいは雉助が槍で突き殺す。もしくは問答無用で犬士郎の拳で粉砕していく。敵の八割ぐらいは犬士郎が蹴散らして無双しているのでもう犬士郎一人でいいんじゃないかとか思うけど、気にしない気にしない。一人はみんなのために、皆は一人のためにっていうしな!!
「やるな犬士郎、戦乱の世に産まれた拳法、“ほくとうしんげんこつ”の使い手……!!俺達も負けてられねぇ!!」
犬士郎に負けじと俺も刀を振るい、鬼ヶ島の侍を鏖殺しながら進む。そうしてたどり着いた屋敷の奥の広間に鬼ヶ島の当主と思しき若い美男子とその後衛、そして玉子がいた。金屏風の前に胡坐をかく男と、その男にしなだれかかりながらこちらに侮蔑の笑みを浮かべる玉子。そしてその周囲をこれまでの雑魚とは違うとわかる屈強な武士達が固めていたが、示威怒のいっていた事はどうやら本当のようだ。
部屋は左手の襖障子は開け放たれて庭に面しており、右手側には隣室のふすまがあるので兵が伏せている可能性を警戒しなければいけない。
「この俺の屋敷に土足で上がるとは無礼な。万死に値するぞ、下郎共が」
「キショッ。何なのよ、桃太郎!さっさと死んでよね、あんたたちが生きてたら私が悲劇の村娘にならないでしょう?あんたたちをここで殺して、もう一回村を襲わせないといけないなんて二度手間かけさせるんじゃないわよ、このクズ」
玉子の自分勝手な物言いに堪忍袋の緒が切れそうになるが、その前に行っておくことがある。
「やはり村を襲ったのはお前達だな。村の子供達も、お前の友達も、お前の両親も襲撃で死んだんだぞ」
「それがどうしたの??私が幸せになるためなんだからしかたがないじゃない。あはははははっ!!」
小馬鹿にするように笑う玉子に、怒りを通り越して呆れしか湧いてこない。こいつは救いようのないクズだ。
「……吐き気を催す邪悪だな。そうかそうかお前はそういう女なんだな。よし、それじゃあ――――落とし前の時間だオラァッ!!」
それぞれに武器を構えながら突貫すると、鬼ヶ島側もこちらに向かってきた。
人数差では負けているが、長く一緒に育ったが故の連携や犬士郎無双で何とか拮抗している。
そんな様子を面白そうに眺める、鬼ヶ島の当主と玉子……クソがっ、はやくあいつらをぶった斬ってやりてぇのに!!
だが頼みの綱の犬士郎も、ぶよぶよの脂肪で拳法が通じない武士の相手で手間取っている。これは形勢不利か、と思ったところで背後から声をかけられた。
「どうした、腰が引けているぞ。しっかりせんか桃太郎!!」
声に振り返ると、爺さんが居た。―――マジで?!?!
普段はにこにこと温和な笑顔を浮かべている爺さんが、今は白髪の長髪を振り乱し獰猛な眼光を浮かべている。着物の上に陣羽織、右手に刀、左手に火縄銃という出で立ちは山で芝刈りをしている普段の様子とは違う。
そしてその隣には婆さんもいる。婆さんも、上等な着物姿をきていて普段と様子が違う。エェーッ?!?!桃太郎びっくりだよ。
「爺さん?!婆さんも、どうしてここに?!」
「なに、討ち入りに童4人では荷が重かろう。支度に手間取ったが、久しぶりに儂もひと暴れしてやろうと思ってな」
俺の言葉に爺さんがにやり、と不敵な笑みを浮かべる。えぇ、爺さん本当はそんなキャラだったの?俺、家に帰ってからどんな顔して爺さんに接すればいいんだよ。
「ハハハ、こいつは傑作だ!増援は死にぞこないのジジイとババアか!!おもしれぇ見世物だぜ、野郎どもあのジジイとババアをぶったぎってやれ!!」
言葉と共に隣室の襖が開いて3人の伏兵が襲い掛かった。助けに入ろうとしても距離が遠い。
「御爺貴(オジキ)ィ!!!!」
「―――男が騒ぐな桃太郎。この時代に年寄りをみたら“生き残り”と思え」
流れるような動きで襲い掛かる兵士の首を刎ね、心臓を突き、眉間を撃つ爺さん。一呼吸の間に3人の屈強な男を瞬殺しよったぁ!?つよっ!!強ッ!?!?!?!?
そうか、爺さん世代は世の中が平和になる前の戦乱を生き抜いたんだもんな。それにしたってその殺気とか戦場慣れしてるのは雑兵って感じがしないけど。
「まったく、いい年して無茶をするのね」
婆さんの呆れた声に、刀についた血を振り払いながら不敵な笑みを浮かべた爺さんが返す。
「幾つになっても男は刀を振り回すのが好きなのさ」
うっ、不覚にも爺さんをかっこいいと思ってしまった、ずるい。
「――――さぁ、往くぞ。皆殺しだッ!!郎党一人も此処から逃がすなッ!!」
爺さんの力強い声に、俺達は気合をいれなおして眼前の敵に再度向き合う。なんかよくわからんけど猛烈に勝てる気がしてきたぞ!!!!
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