第2話 ステータスオープン!ってやつ。
カタログをパラパラと捲った僕は、とある疑問を女神様に質問をする。
「あの……これ能力の詳細とか書いてないんですか?」
そのカタログの各見開きページには、謎のイラストに厨二病全開な能力名と当て字のみが書かれていて、詳しい内容が何一つ書かれていなかったのだ。
「うん! 雰囲気で選んで♪
詳細はまだ教えられない決まりなの!」
「なんかホント適当ですね。まるでギャンブルじゃないですか」
「そっちの方がワクワクするでしょ?」
「こんな大事なことを雰囲気で決めるだなんて……」
先ず僕はそのカタログ内で気になった能力の候補を絞り、そこから選び出す事にした。そして見事第一選考を通過したのは以下の三つだった。
『
『
『
想像のつきやすい単純な名前より、このように大仰な能力名の方がきっとチート能力だろうと予想をしていたのだ。
先程の名前の件の失敗がある為、下手なミスをしない様に思い切り良く初めに気になった能力に決めた。
「じゃあ『
「オッケー♪」
女神は真面目な顔になり人差し指と中指で僕の額に触れ、「許せ、
「僕、何かの瞳術が開眼したりするんですか?」
「あ、そう言えばもうシルバーブレッドだったね」
「その名前で呼ばないでっ!」
すると、またも同じ機械音が鳴る。
《転生先での能力が決定しました。
能力の詳細を確認して下さい》
それに続けて女神が説明を始める。
「ステータスオープンって言うと能力の詳細を確認できるよ! ちなみに転生先でステータスは見られないから、今の内にしっかり確認しといてね♪」
これまたお決まりの展開に心が躍ってしまい、手を前に出しながら叫ぶ――。
「ステータスオープン!」
「別にポーズをキメる必要はないよ?」
今まで散々ふざけてきた女神が真顔でツッコミを入れてきやがった。
「べ、別に良いじゃないですか! 憧れだったんですよ!」
僕は顔を赤くさせながら出てきた画面を見る。
【能力名】
【能力概要】
掌に収まる大きさの物体等を生み出せる
【使用上の注意】
使用上限は1日10回迄(手指の数に準ずる)
※一回使用する度に手指の1本を突き指する
(日付変更時に突き指は完治する)
※もし1日11回以上使用すると、1回毎に指を1本骨折する
(骨折は日付が変更しても治癒しない。1日の使用上限は骨折していない手指の数に準ずる)
※能力によって生み出した対象物を金銭や貨幣としての使用、又は物々交換する際その対象物は消滅する
「なんだこの能力……。一体何が出来るんだ? それにデメリットも地味に重くないか……?」
「同じ能力を持った人のレビューも見られるよ!」
その女神の言葉を聞いて、僕は画面左下にある評価レビューという項目を押してみる。
【評価レビュー】
(50代男性Aさん)
「この能力のおかげで、妻に指輪を贈る事が出来ました」
(20代男性Tさん)
「この能力を手に入れてから、童貞だった僕が突然女性からモテるようになりました」
(30代男性Mさん)
「この能力を授かってから運気が上がり、毎日ツキまくりのヤリまくりです」
と、どこかの雑誌の裏表紙のような文言が並んでいた。
「怪しい数珠かよっ! なんなんですかコレ?
なんの参考にもなりませんよこのレビュー!」
「そう? こんなに高評価ばっかりのレビュー珍しいのに……」
不満そうな女神を横目にもう一度画面に目をやる。
「それよりもレビューを残す人がこんなに沢山いるって事は、手違いで死んだ人が僕の他にも大勢いるって事なんじゃ……」
女神は目をキラリと光らせて答える。
「勘の良いガキは嫌いだよ」
「おいあんたさっきから事あるごとに! さてはアニメオタクだな!」
僕はとうとう女神様をあんた呼ばわりしてしまった。
「だってぇ……。毎日毎日、職場と家とを往復する繰り返し。私にだって息抜きは必要なのよ!」
女神はその日常を赤裸々に語る。
「女神様も意外と大変なんですね。でもだからといって間違って人を殺すのはもう絶対辞めて下さいね」
「だからね! オタクのシルバーブレッド君ならこのノリを分かってくれるんじゃないかと思って、つい調子に乗っちゃった♪」
「それとこれ以上犠牲者を増やさない為にも、名前を確定する時はちゃんと確認とってからにして下さい」
「はーい♪」
女神は満面の笑顔で答える。
(コイツ絶対分かってないよ)
とうとう僕は心の中で女神をコイツ呼ばわりしてしまった。
「じゃあそろそろ転生させるね?」
「最初はどこからスタートなんですか?」
「街の外れにある草原だよ!」
「あるあるですけど、いきなりモンスターに襲われたりしませんよね?」
「大丈夫! めちゃくちゃ弱いから!」
「いやいや! 安全な所からスタートさせて下さいよ!」
「じゃあ送るね♪ いってらっしゃーい!」
「くそっ! 最初から最後まで全然人の話聞かないなこの女神!」
すると目の前がぐるぐると渦を巻き意識が遠くなった。
『
「まさか、この能力を選ぶなんてね……」
目が覚めて辺りを見渡すと、草原の中にポツンと建っている小屋の隣に僕は寝転んでいた。
「ここが異世界なのか……」
周りを見ても異世界に居るという実感が全く湧いてこなかったが、次の瞬間身をもって知る事になる。
ゆっくりと小屋の扉が開き第一村人に会えるのかと期待したが、それはすぐに絶望へと変わる。
「ギィィィ……」
と、小気味の悪い声を上げて小屋から出てきたのは、緑色の体に鋭い目つきをした二匹のゴブリンだった。
背丈も僕と同程度あるように見え、ただでさえ喧嘩などした事のない僕が戦って勝てる気など全くしない……。
「あのクソ女神、絶対許さん……」
思わず泣きそうになるのを堪えていると、僕と目があった一匹のゴブリンが手に持っていた石斧を勢いよく振り下ろした。
「うぉっ!」
間一髪で避ける事に成功したが、その石斧は地面にめり込んでいた。
(こんなの当たったら即死だよ……)
それを見た僕は気づいた時には背を向けて逃走していたが、そのゴブリンは足も速くすぐに回り込まれ挟まれてしまった。
まさに絶体絶命のこの時、小屋の方から声がする。
「おいお前、助けが必要か?」
声の主は小屋の屋根で横になっている、黒髪にハットを被っている男だった。
「はいっ! 助けて下さいっ!」
僕は全力で叫んだ。
「金貨30枚」
その男は3本の指を立てて言う。
「お金ならいくらでも払いますから、お願いします助けて下さい!」
僕がそう答えると男は屋根から飛び降りた。
「取引成立だな」
この男との出会いを、この先ずっと後悔する事になるだなんて、この時の僕はまだ知らなかった――。
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