孤狼の血
監督の白石さんは最初にオファーが来た時、この手のジャンルは「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」でやりきったし、その上さらに何ができるのかと、この作品を引き受けることに躊躇いを感じたそうです。
……どこが?(にっこり)
取調室に絶対にあるアイテムを使った見たこともない拷問。
機械のように人を殴り続ける日岡(松坂桃李の死んだ目がすごい!)。
トイレのすごいアングル。
どっからそんな発想出てくんの???
画面作りの天才。
汲めども汲めども尽きることのない(暴力)アイデアの泉ですよ。
極め付けは、豚の糞!
映画冒頭いきなりのやつです。
最初にこれを見た時、他人事として見るはずです。
食わせようとする輩、食わされようとする輩、何があったか知らんけど、えげつないことしやがんな、おえっ。
吐き気は催しても心は震えません。
ところが、です。
映画終盤、同じシチュエーションが繰り返された時、私たちの心は激しく震えます。
嫌な予感はしたのです。
なんで遺体の腹が膨れているのか。
検死の結果、遺体の中から異物が検出されていたことが報告されます。
ヤクザたちは彼に一体、何を食わせたのか。
あんなに尊敬すべき人を、愛すべき人を、正義の人を、命をかけて市民を守ろうとしてきた人を、アイツらは……
ブッ殺す!!!!!!
ほんと、暴力映画を撮るために生まれてきた人ですよ、白石監督は。
(ガミさんの死に方は原作とは全く違います。あのアイデアは映画のオリジナルです)
東映ヤクザ祭り。
昭和の文化が蘇ります。
顔でだいたい役柄がわかるんですよ。顔映画。
ピエール瀧、アンタにしかできない役どころがあるんだから、二度と警察のお世話になるようなことするんじゃねーぞ、とか。
そしてこれは、役所広司演じる脱法刑事大上章吾の映画です。
序盤は役所さんのハチャメチャ刑事っぷりを楽しめます。
賄賂、拷問、放火、なんでもやります。
役所さんもノリノリです。
演じていて、さぞ楽しかったろうと思います。
物語は、松坂桃李演じる新人刑事日岡の視点で進みます。
最初は日岡が完全なる善で、悪徳刑事である大上をジャッジする立場なのですが、物語が進むにつれて、大上の大きな正義が浮かび上がってきます。
表向き善人ぶってる上司たちはヤクザと裏金で繋がっていて、本気で市民を守るつもりがない。
大上は公然とヤクザと付き合うけれど、それはヤクザを飼い慣らして、街を守るため。
善と悪の境目が消えていきます。
そしてヤクザは豚ではありません。
凶暴な獣です。
飼い慣らされたふりをして、いつ牙をむいてくるかわかりません。
ヤクザは組織ですが、大上は警察内部で孤立した孤独な狼です。
そもそも日岡自身が、大上をクビにするために送り込まれた警察上層部からのスパイです。
序盤に提示された構図がくるっとひっくり返ります。
善だったものが悪で、悪だったものが善。
さらにその上、大上は日岡がスパイであることにとっくの前から気づいていて、その上で日岡の中に市民のために戦おうとする強い正義感があることを見抜き、日岡を育てていこうとしていたことがわかるのです。
いつの日か、彼が本当の意味での刑事になってくれると信じて。
ガミさん!!!!!!
大上さんの熱さに泣く映画です。
大上さんの強さに泣く映画です。
そんな大上さんが、ヤクザの罠に落ち、筆舌に尽くし難い最期を迎えたことを知った時、心は松坂桃李にシンクロします。
クソども全員ぶっ殺す!!!!!!
養豚場で、気絶した相手をなおも殴り続ける松坂桃李の目!
怒りに我を忘れている彼の目を見て、ハッと我に帰り、彼がチンピラを殺す前に気絶したことで、ホッとするわけです。
心は完全に白石監督の手のひらの上!
当然、この下りも映画オリジナルです。
続く「孤狼の血 LEVEL2」でも、えげつない絵面がどんどこ出てきます。
汲めども汲めども尽きることのない(暴力)アイデアの泉です。
警察じゃけえ、何してもええんじゃあああ!
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