レオン 完全版

トランスフォーマー大好き少女が、トランスフォーマーを見なくなるまでの物語。


マチルダ(ナタリー・ポートマン)の成長は、トランスフォーマーを通して描かれます。


姉の見ていたエアロビクス番組がつまんなくてトランスフォーマーに変えていたマチルダが、トランスフォーマーではなくエアロビクス番組を見るようになる。

レオンの家に転がり込んで、さっそくトランスフォーマーを見ていたマチルダが、レオンの前ではトランスフォーマーではなく、大人が見ているような番組を見ている自分を見せるようになる。


そもそもマチルダがトランスフォーマーを見なくなるのも、


マチルダ「とっても強くて賢い人(トランスフォーマーみたい……)」

レオン「マチルダ……(俺はトランスフォーマーじゃねえ!)」


このやりとりがきっかけです。


マチルダはレオンをトランスフォーマーとしか見ていない。

レオンはそんな子供なマチルダを相手にしない。

ねえ、トランスフォーマー見るの、もうやめたから。

わざわざアピってくるうちは子供なんだよ。


この映画から、ロリコンとか小児性愛とかを見出す人は映画の見方がわかっとらんのです。この映画にあるのはトランスフォーマー、それだけなんですよ、ぬわっはっはっは。


(すみません、ふざけました)


この時のリュック・ベッソン監督はナタリー・ポートマンに惚れ込んでいたと思いますよ。

女優としての輝きに惚れていたという解釈でもいいですけれど。


なので、監督の気持ちが投影されているレオン(ジャン・レノ)もマチルダに対する自分の感情を整理しきれていないキャラクターになっている、という理解です。


マチルダが性的に迫ってきたら、はっきりノーと言えるけれど、年頃の男の子とマチルダが仲良くしているとモヤモヤしてしまう。レオンは保護者の権限で2人を引き離すけれど、あの時のレオンの心情が100%保護者だったと考えるより、自分自身にも説明できない感情でモヤモヤしてるほうがしっくりくる。


それぐらいに、フィルムの中のマチルダは輝いている。

ナタリー・ポートマンの才能だけではない。

撮る側のリビドーがプラスされている。

それが私の理解です。


これが普通の映画なら、自己都合で消費しきっていいんですよ。


私は「マチルダと出会うことで、レオンの止まっていた時間が動き出した」というストーリーを強く愛しているので、レオンのマチルダへの愛情を純粋なものにしておきたい派です。だから、マチルダへの愛に恋愛はないのラインで解釈をまとめておきたい気持ちもあるのです。自己都合による作品消費であれば。


けれど、この映画は名作すぎます。


レオン、マチルダ、スタン(ゲーリー・オールドマン)の名演、見事な脚本、幸せなひと時と末路。ファッションセンス、染みる音楽、カメラワーク、全てがとても高いレベルで調和している大傑作です。だから映画の意図を見極めたくなるのです。


その視点に立つと、撮る側のリビドーを否定できません。

監督の感覚が、マチルダへの接し方に混乱するレオンの立ち位置に近しいことがうまく重なり、作品を素晴らしいものにしたのではないかと考えてしまうのです。


リュック・ベッソン、当時、30代。

宮崎駿監督を連想させます。

少女とおじさんということですけど。


「ルパン3世 カリオストロの城」では、宮崎監督のリビドーが明らかにクラリスにのっています。そしてクラリスに対するルパンに宮崎監督は自己投影しています。だからルパンがクラリスを抱きしめようとして我慢するシーンがある。ルパンを紳士にしきった方がカッコいいのに、30代の宮崎監督はルパンの恋情表現を省くことができなかった。クラリスのルパンへの憧れだけでまとめることができなかった。


これが「紅の豚」の頃になると、フィオに好意を寄せられても、ポルコは大人の余裕で対処できるわけですが、クラリスを描写していた頃のリビドーはフィオからは感じられません。他の女性キャラについても。


あの時のリュック・ベッソン監督、あの時のナタリー・ポートマンでなければ、成立し得なかった映画。

それが「レオン」だと思うのです。

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