グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
愚帝コモンドゥスが闘技場にて討ち倒され、長い時が過ぎた。
もはやこの地上に、リドリー・スコット卿の暴虐を止める者はいない。
古代ローマに対する綿密なリサーチをした上で、それを平然とぶっ壊す!
「コロッセオに水を張って、模擬海戦が行われたことがあった」
↓
「よおし、本物の軍船が自由自在に動き回れるほどの水深を作って、中に人喰いサメを放とうぜ!」
それ、絶対、古代ローマでしてたことと、ちゃう……。
主人公が奴隷になって最初に戦ったヒヒ、あれ、他の惑星のヒヒだよね……。
皇帝お気に入りの巨大サイ、もはや地球上の生物の大きさじゃないよね……。
気にするな! 楽しめ!!
いや、マジで。
ノリとしてはユニバーサルスタジオが「グラディエーター」のアトラクションライドの制作を申し込んで、リドリーがそれを作成した上で映画化した、みたいな感じです。
サービス満点!
お話は戦いの連続ですが、絵が単調にならないよう、一つひとつのバトルに趣向が凝らされていて、すごく贅沢です。
(この辺からマジのマジでネタバレの話をするので、未見の人は回避してください)
続編を楽しくみるコツは、偉大な前作と比較しないこと。
パート1を超えるパート2って、本当に難しいです。
パート1と同じでいいとか口では言うものの、実際にそっくりそのまま同じものが出されてしまうと退屈してしまったり、あまりに違いすぎても、パート2にそんなん求めてない、という気分になったりします。
ちょうどいい塩梅って、人によって違うから、本当に難しい。
わたしは心地いい裏切りと、サービスいっぱいの2時間半に満足できました!!
(本当にネタバレしますね)
「グラディエーター」は復讐の物語です。
「2」もしっかりとそうなっていました。
まさか、ポール・メスカル演じる主人公ルシアスではなく、デンゼル・ワシントン演じるマクリヌスの復讐の物語だったとは!
これはしてやられました。
ルシアスは血統上も、思想上も、物語の正統後継者です。
賢帝マルクス・アウレリウスの孫であり、「堕落したローマ」を「偉大だったローマ」に戻そうとする者です。
マクリヌスは、それら全てを否定する者です。
マルクスは立派な人間などではなく、ローマが偉大だったこともない。
マクリヌスにはそれを言うだけの資格があります。
「2」の一番見事な設定は、マクリヌスの人物造形です。
史実ではゲタ、カラカラのあとに即位した皇帝です。
マルクスの奴隷であったという事実など、当然のことながら、どこにもありはしません。
待ってましたの史実歪曲リドリーマジック!
それでいい! それがいい! これは映画だ!
ローマの奴隷が、成り上がりの果てに実質的なローマ皇帝になる。
ローマ人たちの腐敗を利用して、ローマの権力構造に食い込み、支配者となる。
マクリヌスこそ、真の復讐者だった!
うまい!
そしてもったいない!
もっとマクリヌスのシーンが欲しかった!
奴隷時代の屈辱の回想や、マクリヌスの強さを見せる無双シーンを入れて、ガンガンに盛り上げた上で、ルシアスとの対決に入って欲しかった!
マクリヌスは最後に死ぬしかない。
それだけの悪行を積んでいる。
だが、彼を復讐者にしたのはローマだ。
彼にはローマを蹂躙する理由がある!
「グラディエーター」は悪役の映画なんですよ。
どれだけ魅力的な悪役を描き出せるか。
デンゼル演じるマクリヌスは、ホアキン演じるコンモドゥスとは全く違ったタイプでありながら、コンモドゥスに負けないポテンシャルを秘めた悪役でした。
惜しむらくは、彼に割かれた尺の少なさ!
マキシマスvsコンモドゥスで2時間半作った「1」に比べると「2」は人物が多いんですね。
個人的な好みで言えば、ルシアスの話をシンプルにして、マクリヌスの盛り立てに尺をさき、最後の二人の激突を盛り上げて欲しかった。
(偉大な前作と比べるものではないと言っておきながら、比べるやつ……)
あまりにマクリヌスが良かったので、映画を見終わった後「イコライザー」からイメージを借りて、マクリヌスの無双シーンとか勝手に妄想したりしてしまいました。
だって、マクリヌスの殺し方、イコライザーっぽかったんですもの!
デンゼル・ワシントン、大塚明夫、最強!!
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