FALL/フォール

高いところから落ちることほど怖いことはない!


そのことを突き詰めた映画が今の今までなかったことが不思議なぐらいのワンシチュエーションムービー。コロンブスの卵とはまさにこのこと。


内容はシンプルです。

高いところにのぼっちゃった。

降りられなくて困っちゃった。


それだけ。

本当にそれだけ。


それだけなのに恐怖がエンドレス。

まじのまじで戦慄映像です。

手汗ダラダラ、冷や汗ダラダラ。


高いところから落ちそうってだけなのに。


物語のギミックは、主人公の二人が、ちょっとした油断で何百メートルも落ちてしまうところに登ってしまうだけ。頑張れば頑張るほど、状況は悪化し、手を変え品を変えて危機が訪れて、二人が追い詰められていきます。


ゾンビとか地球外生命体とか、恐怖に必要なかった。

呪い話も必要ない。

怨霊も、妖怪も必要ない。

そういう凝った仕掛けは何もいらなかった。


高いところから落ちることが、これほどまでに怖いとは!


物語は大きく分けて二つあります。

ベッキーとハンターが無事に生還できるか?

そして、ベッキーは夫の死を克服できるのか?


この夫の死の克服のストーリーにはもうひとひねりが入っていて、ベッキーが親友だと思っていたハンターが、ベッキーの亡き夫ダンと男女の関係にあったのではないかという過去が持ち上がってきて、一気に不倫サスペンスの様相を呈してきます。


親友だと思っていたハンターが、実は裏切り者で、その裏切りを隠していたわけです。


そんなハンターが、ベッキーを最後まで見捨てないでいられるのか?

ハンターの裏切りに気づいたベッキーが、ハンターを見捨てないでいられるのか?


この要素は単に物語のスリルを上げるだけのものにとどまってはいません。

最終的にハンターは死ぬのですが、過去にベッキーを裏切り、その裏切りを隠していたと言う負い目を作ることで、ベッキーのみが生きて戻る結末に因果応報感を作り出しているわけです。死ぬやつには死ぬだけの理由がある的な。


うまい。


世の中のほとんどの傑作は「是非、スクリーンで見るべし!」といって話を終われるのですが、この映画は配信で見ることにして本当に良かったです。映画館で見ていたら最後まで耐えられる気がしませんでしたし、配信で見ていても何度か止めました。怖すぎて。

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