劇場版 BanG Dream! It's MyGO!!!!! 前編 : 春の陽だまり、迷い猫
不器用な5人が不協和音のまんまで前に進む。
欠点のような個性が絶妙に絡み合って互いを支え合う。
まごうことなき青春バンドストーリー。
これは総集編ではない。
内容はTVシリーズ7話までなのだが、サキの話をバッサリ落として浮かせた尺を5人のディテールアップに使っているので、見たことないシーンが盛り沢山。ダイジェスト感はゼロなので、TVシリーズ未見でも問題なく見ることができる。
(サキの話をカットしたのは英断だし正解だと思う。サキがバンドを抜けた理由は、ともりが責任を感じるようなものでは本当にないため、物語のフックとして提示するには弱く、この劇場版のように、さらっと流すぐらいがちょうど良いと思えた)
興行としては、TVシリーズを見たファン向けに、ミステリアスなギタリストのラーナがバンドに加わるまでの前日談を1本分追加しましたという構成なので、オリジナル映画として見てしまうと、冒頭で主人公していたラーナが中盤からワンオブゼムになることに戸惑ってしまうかもしれない。
初見の人は「ラーナの短編+あのんが出てきてからの本編」の2本立てぐらいの構成で見ると良いと思う(いないかな?)
新作パートでラーナのキャラが詳細に描かれたことで、ラストナンバーでラーナが「春日影」を弾き出すくだりが何倍にもエモいものになっている。
空気を読まないラーナだけが、あの空間で「春日影」を弾ける。
ともりが苦しみから解放されることを誰よりも望んでいるのはタキだけれど、あの場で「春日影」を叩きだす蛮勇はタキにはない。
それができるのはラーナだけ。
タキはチームワークのできないラーナにキレ散らかしてたけど、そのラーナのマイペースなところが、身勝手なところが、タキの心からの願いを叶える。
最高のシナリオだ。
MyGOの素晴らしさは数え上げればキリがないけれど、どちらかといえば欠点に分類されるような個性が、ピンチを打開するキーとして描かれているところが本当に素晴らしい。
迷子のまま進んでいくし、欠点だらけのまま進んでいく。
普通の総集編映画だと「TVシリーズを見てるし、映画は見なくてもいいかな」という判断もありだと思うけれど、この映画は、TVシリーズを見た人に見てほしいし「TVシリーズを見たのに映画を見ないなんてもったいない!」と言いたくなるほどの出来栄えになっている。
TVシリーズを完走したのなら、MyGOの5人を好きになったはずで、映画はその5人のキャラが丁寧に深掘りされているし、実際、そよが思わせぶりな笑みを浮かべるだけで、見ているこっちはニヤニヤできる。
そうそう、そよさんですよ。
サキまわりの話をほぼカットしたことで、映画のそよは、最初から「思惑を持って」あのんに接近した感じになっていて、そよの隠れ腹黒がパワーアップしているのです。
全人類見なきゃ!
MyGOが最高なところは、場面場面でキャラの評価が激しくアップダウンするところ。
わがままキャラのラーナが最後に決めるところもそうだけれど、エゴイストなあのんが状況を前に進めたり、お姉さんキャラだったそよが爆弾化したり、人間が多面的に描かれていて、見応えがある。
欠点を直さない。
欠点を欠点のままで活かす。
言うのは簡単だけど、5人全員地雷原で物語を構成するのは本当に大変だったと思うし、何度も何度も自壊寸前までいかせながら、パズルのピースを奇跡的にはめて、5人に進ませる脚本は神のお仕事だ。
新作パートがとても丁寧に差し込まれていて、違和感がない。TV版からあったって言われても信じてしまうぐらいに自然。1クールの映画を前後編の映画にしてるなんてレベルではない。
ディレクターズカット。
いやプラス。
セルフリメイクの完全版だ。
総集編だから見なくていい←違う
総集編なんて代物じゃないし、TVで5人を好きになったのに、これを見ないというのは人生の損失に等しい←正しい
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