第38話 混沌を戦い抜く者たち・前編

第5回FLOW世界大会・DAY1 第一試合


第4リング収縮開始 残り人数43人 22チーム




 まさかの激戦も最強のチームワークで乗り切ることが出来たが、まだ気を緩めることは出来ない。


 戦闘が終わってすぐに第4リングが確定した。

 全体の1/3ほどの大きさであった第3リングは、


・最北の街ヴォーリア

・ヴォーリアとセントラルの間、名の無い街

・セントラル

・北東の山(マップ全体の1/4より小さい)

・セントラルとアナトリーの間にある、名の無い街の半分

・リングを横断するように流れる川


 などの要素が含まれているリングだった。


 しかしそこから第4リングではさらにヴォーリアに寄ったため、北東の山の頂上やセントラルとアナトリーの間にある街はリング外となった。


 北東に寄るものと思っていたが、どうやらここから北寄りになっていきそうだ。


 第5リングでセントラルはすべて外れるだろう。


 あそこは遮蔽もあるし、高さのある建物も多いため、最後の戦いには向いてない。

 はやめに外れてくれたのはめちゃくちゃありがたいな。


 しかし…………そんなこと言ってる場合でもない。


「さて、勝負の5分だな」


 第4リング・残り人数40人越え・山が無くなり高さのある地形変動はほぼなし。


 条件は完璧に整っている。


「あぁ──混沌のはじまりだ」



 ◇ ◆ ◇   ※三人称視点



第5回FLOW世界大会・DAY1 第一試合


第4リング収縮開始────混沌開始 北東の山




『俯瞰カメラで混沌の様子を届けようと思いますが……いつ見てもすごいですねこれ……』


 観戦の俯瞰カメラでは、いうなれば天からの神の視点であり、細かい動作は追えなくなるが、特定のプレイヤーではなく一度に多くのプレイヤーを見ることができる。


 また、プレイヤーの上には名前と体力バーが表示されている。


 そのため、どれだけプレイヤーの数が多いのか、一目瞭然である。


『現在映しているのは北東の山の俯瞰カメラですが、えーっとこれ……ここだけで5チーム、10人ですか……!?』



 1チーム目──FILM-0

 アジア大会2位通過


 2チーム目──NerUネル

 アジア大会5位通過


 3チーム目──BASTARDバスタード Q

 北米大会1位通過、第4回FLOW世界大会1位


 4チーム目──ArTrickアートリック

 北米大会3位通過、第4回FLOW世界大会2位


 5チーム目──Silhouetteシルエット

 ヨーロッパ大会6位通過



 錚々たる面々が集まっていた。


『第4回FLOW世界大会チャンピオンと世界2位が北東の山に集ってたのか……』

『第2回世界王者のアミア選手も来ていたということは、混沌が早期に始まると予想できたプレイヤーが来ていたということでしょうか?』

『いえ、おそらくそれは全プレイヤーが想像できていたでしょう。その中でも、山上を取り切れるくらい対面に自信のあるプレイヤーが集まったのでは?』

『確かに……FILM-0によって返り討ちにあいましたが、対面最強で名高いあのBASEstべーセストも来てましたからね……!』


 北東の山を取りに来たプレイヤーだけでも、多くの推測を立てられる。


 そして、その推測もかなり的を射ていた。


 混沌はライブ配信越しに見る以上に険しいもので、2大会以上連続で出場している選手はそれを色濃く実感している。


 今回、第3リングに入っていた主要の街がヴォーリアとセントラルだった。

 だが、ヴォーリアは建物の数も他の街と比べて少なく、混沌を凌げれるかはプレイヤーの地力に依存する。


 そのため、攻め筋が少なく射線の通りづらい山上から辺りを見下ろせる北東の山は、今回のリングで唯一と言っていいほど、混沌の凌ぎ場所に向いていたのだ。


 だからこそ、5チームしか北東の山に来ていなかった。


 対面が強すぎるプレイヤーが攻めてくることなど、簡単に想像できたからだ。


『しかしこれ……FLOWは高低差による落下ダメージが無いとはいえ、下山して第4リングに向かっている最中に──ぶつかりますよね?』

『普通ならそうですね…………よく考えればここで戦うメリットがお互いに無いと簡単に思いつきますが、それをプレイ中にこの10人全員が思いつけるかどうか……』


:多分、FILM-0とBASTARD QとArTrickは気づいてるよな

:3チームとも世界大会最上位の経験者がいるんだもんな

:問題は残りの2チームがなんかしでかさないか……

:ここで物資消耗するときついよなぁ

:いや、ちょっと時間がかかるだけでもリング収縮に飲まれるかもしれんぞ

:全員変な動きせずに移動してくれれば

:いや、それはそれで第5リングで厳しくなるくね?

:きっつ…………!!

:やっぱ混沌の間は戦い合うしかないのか……?


:待ってSilhouette動き出してね?

:!?

:言ったそばから……!

:あ、でも戦闘とかではなさそう


 ほぼ並列の状態でリングを目指していた5チームだったが、突如Silhouetteの1人が超高速で前進した。


 Silhouetteは重力逆転スキル持ちが1人と、ある地点と地点を瞬間移動できるポータルを設置できるスキル持ちが1人。


 ポータルの設置は、発動地点から数秒だけ半透明となって高速で移動し、スキル終了地点と繋がるという仕組みである。


 ポータルは設置すれば敵味方関係なく使用でき、マップに永続的に残る。


 周りを走って移動する敵にいつ攻撃されるか怖かったのか、


 ポータルで一気に前進→重力逆転スキルで浮かび上がる→グライダーを展開する


 という、短期間で長距離移動できる技を使うつもりだろう。


 もしかしたら、先にリングに入り後から来た残りの4チームを倒そうとしたのかもしれない。


 だが────


『いやぁ、Silhouetteチームこの重圧に耐えられませんでしたか……』

『脱落確定ですかね』


 ポータルの発動中は『半透明』なのだ。

 だが"半"とはいえ、90%くらいは透明なのだ。よほど警戒してない限りは気づかない。


 しかしこの混沌の中はその【よほどの警戒】に当たるのだ。


 戦闘になるのはお互いにデメリットしかないが、万が一に備えてめちゃくちゃ警戒している。


 混沌の最中は、どれだけ戦闘にならないかも大事だが、それと同じくらい重圧に負けないかも大事なのだ。


 ──ポータルのスキル発動時間が終わり、ポータルの出口が現れた。



 ダダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!!

 ダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!!!

 ────ドンッッッ!!!!!



 あらゆる武器の銃声が一斉に鳴り響く。

 そしてそのすべてが、ポータルの先に向いていた。


 弾避けどうこうの話ではなく、確定死である。


『この感じ、NerUも混沌での立ち回りを理解してそうですね』

『この集団はかなり賢いし第4リングには辿り着けそう』

『ほか見てみます?──キノコ組、とか』

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