第35話 元プロさん、混戦に備える
第5回FLOW世界大会・DAY1 第一試合
第1リング決定 残り人数58人 30チーム
場外戦術がうまく刺さり1キル取ることが出来たが、まだ油断することは出来ない。
世界大会という、全員が世界王者を目指して戦う舞台なので、セントラルなど他の街からわざわざ死の危険があるここに来ることは無いだろう。
さらに死の危険を減らすため、初動ファイトを避けようとこの街から逃げる人もいるかもしれない。
「多くてもあと3人か」
「どうするアミア? 漁ったら俺たち引くか?」
世界大会本戦も"キルポイント"と"順位ポイント"の合計、"大会ポイント"を競い合う。
キルポイントは1キル1ポイントで、順位ポイントは順位が高ければ高いほどポイントが多くなる。
最上位勢たちは全員対面が強いので、キルポイントはついでで考えたほうがいい。
俺だって負けるつもりはサラサラないが、全然事故る可能性があるのも否定できない。
ここは
「そうだな……この街って世界2位とヨーロッパ3位だっけ?」
「いえす」
「さっきエルが倒したのがどっちのチームか分かんねえし、世界2位の
「となると移動がいいか」
今回は第1リングが北寄りなので、ヴォーリアを漁ることもできる。
ヴォーリアは俺たちが降下表明してたし、多分人はいないだろう。
悲しいことになんか恐れられてるらしいし。
「しっかし、移動きついよなぁ」
そう。
今回、初動先を奪って無理やり1ポイント取るというのをしたため、この街の中でも1番下に降りたのだ。
最速で降りた方が降下中に撃たれないからだ。
しかしそのせいで、マップ最北にあるヴォーリアに移動するにはこの街を横切るか、街から出て外回りで行く必要がある。
ただ、この街は東西どちらも山なので、登るのがめんどいし、登ってる途中に撃たれる可能性もある。
バトロワなので当たり前だが、どのルートも危険があるので難しいところだ。
「アミアはショットガンとスナイパーだろ?」
「まそうだな。エルがショットガンとSMGだっけ」
「おう」
「物資状況は?」
「回復もグレネードもスモークもあるが、アーマーが白だし弾も少ないな」
「だよなぁ。山上陣取るのも手だけど──」
「いや、ヴォーリアは必須かな」
「うーん…………なら外回りで行くか」
「おけ」
アミアがスナイパーを持っていることや、
その後、この街はセントラルが近いので、敵が移動してくるのを恐れ俺たちはすぐに移動した。
◇ ◆ ◇
移動中、牽制の意味であろうアサルトの弾が数発飛んできた程度で、大きな戦闘になることなく移動できた。
俺たちの戦略通り、ヴォーリアには敵がおらず安全に物資を漁っていると、試合開始10分が経ち第2リングが確定した。
「東の山か」
「悪くないな」
第2リングが閉じきっても、まだ全体の1/2ほどの大きさなので、まだ猶予はある。
しかし問題は残り人数である。
キルログがまったく流れてこないのだ。
FLOWでは画面右上にミニマップがあり、そのしたにキルログが表示される。
だが、残りチーム数と残り人数はマップを開かないと行けない。
俺はマップを開いてみる。
第5回FLOW世界大会・DAY1 第一試合
第2リング収縮中 残り人数53人 29チーム
「…………マジぃ?」
「ん、どした?」
「いや残り人数……」
「残り人数? …………ってエグいなこれ」
下手な物語でも見ないのような数値であった。
まだ5人しか減ってないこともヤバいし、なにより1チームしか減ってないことがヤバい。
残り人数がバグってるが、それでもこのリングの大きさならまだ蘇生が可能なのだ。
最大58人まで復活する。
これは────マズイ。
「これ早けりゃ第3リングあたりから大混戦起きるぞ…………」
バトロワにおいて大人数、狭い範囲で起こる現象──レベルの高すぎる試合でしか起こらない混戦。
「移動するぞ」
「どこだ?」
「山上1択。取れなきゃ運ゲーだ。取るのも運ゲーだがな」
常に接敵するその時に備え、俺たちは早々に移動を開始した。
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