第34話 元プロさん、初っ端から場外戦略を披露する

第5回FLOW世界大会・DAY1 第一試合


試合開始 残り人数60人 30チーム




うおおおおおおおおおお!!!!!!!!


観客の凄まじい大歓声が会場に響き渡る。


『さぁいよいよ世界大会DAY1、第一試合の開始だああああ!!』

『最初は降下表明通り動くでしょうね』

『えぇ。初動ファイトと表明をしていない選手の動きに期待ですね』


:FILM-0も期待だよな

:それな

:ヴォーリアでどう動くのか

:↑でもアジア大会でもやってたじゃん。そんなに期待か?

:アジア大会は漁夫がしやすかったから成立してたけど、世界大会じゃそうはいかないからな

:しかも物資も少ない

:まぁ普通のプレイヤーなら終盤に入ったくらいで物資不足になってジ・エンドだな

:ただ新人のレイならまだしも、元世界王者のアミアがそれに気づかないわけが無い

:まだ始まってないのにおもろいって……!


60人全員の準備が終わり、ロードとキャラ円卓画面になる。


「キャラ変える?」

「いや、1試合目は慣れてるキャラで行こうぜ」

「おっけ」


俺は一定時間FLOW最速となるいつものキャラを、アミアは索敵スキルが使えるキャラを選択する。


そして全員の準備が終わるまでの待機時間となる。


「さて──切り替えるか」

「あぁ、今回ばかりは魅せプ無双とか考えんなよ」

「えっ」

「…………考えんな、よ???」

「なるべく頑張る」


いや、俺だって世界でも指折りの選手が集まるこの大会で無双できるとか思ってない。


ただ…………魅せプができたらなぁ、なんて。


「ほら、始まるぞ。邪念は捨てて集中するぞ」

「おっす」

「邪念は、捨てるんだぞ?」

「お、おっす」


60人全員の準備が終わり短いロードがあると、ついに画面は広大なマップの上を飛ぶ戦闘機へ切り替わった。


試合開始である!


戦闘機の航路は一直線だが、その開始地点は毎試合異なる。


南から北への一直線もあれば、北から南だってある。


今回はちょうど真西から真東への一直線であった。


よって、最北の地にあるヴォーリアに降下するには、その航路のちょうど真ん中当たりで降りればいい。


というわけで──


「行くぞ、俺たちが輝く戦いに──」

「「GOOD LUCK」」


その掛け声とともに、俺たちは戦場へ同時に飛び降りた。


『例年通り、公式の解説には観戦権限が与えられています。どうしましょう、まずはキノコ組見ます?』

『キノコ組は降下表明してましたっけ』

『えぇ、これまで通り東の街──アナトリーとセントラルの間の小さな街ですね。物資はなぜか5大都市であるヴォーリアより多いという』

『でしたら今回は、FILM-0の立ち回り見てみましょう。ヴォーリアからの立ち回りが気になります』

『確かにそうですね!』


:やったあああああ!

:新人の世界大会ほど面白そうなものないしな!

:ってかシンプルにアミアの立ち回りみたい

:いやそれな

:元世界王者がどう動くか気になりすぎる

:あれ、なんか降下低くね……?


俺たちは戦闘機から飛び降りてすぐに北を向いた。


──だが、そのキャラの角度はかなり下を向いている。

つまり、ヴォーリアには到底届かない。


それもそのはず。

俺たちは、ヴォーリアに降りる気など、


「ヴォーリアとセントラルの間の街、行くぞ」

「おう」


『こ、これ……まさか最初から狙って?』

『ま、マジか!? 今回が世界大会初のレイ選手がいるというのに、まさかの降下表明ブラフ!?』

『アジア大会を震撼させたFILM-0、世界大会でも暴れてる!!』


:うおおおおおお!!

:すげえ……

:あれ、でもこの街って前回世界2位だったArTrickアートリックいるよな?

:いる……いるけど!

:FILM-0だってそれは分かってるはずだろ?

:分かってて行った……!?

:おいアツいって!


俺たちもこの街に降りたことくらいあるが、練習などは一切していない。


対して、この街に降りている2チーム──前回世界2位のアメリカチームとヨーロッパ3位のチームはこの大会のためにめちゃくちゃ練習しているはず。


俺たちはこの街の銃やグレネード、弾などが入っている宝箱の場所は覚えていない。


だが────!


「降下だけは負けねぇ」


今回の航路から1番近い家に降りようとしていた敵よりも早く、俺は降下を終える。


すると、敵は被せることなく隣の家に行った。

安全を取ったか。


しかしこれはデカい。

僅かにだが、あの敵が練習してきたムーブを崩したことになるのだ。


──だが、それだけで終わるほど俺たちは甘くない。


「アミア降りれた?」

「おうよ。ちゃんとエルがどかした敵にぞ」


アミアは、俺が降下先を奪った敵が仕方なく降りた家の屋上に着地したのだ。


そして俺は、何か適当に武器を探し──今回は連射のはやい方のアサルトライフルを見つけた。


それだけ取ると、他の物資を漁ることなく、どかした敵の家に向かう。


ついでに途中で見つけた50シールド分のアーマーを着ける。

そして、敵のいる家に侵入した。


これで、1番下に俺、屋上にアミアと敵を挟む構図が出来た。


敵も足音でそれを理解していると思うが、もうそれはそこまで関係ない。


「アミア武器は?」

「あんま強くない方の単発撃ちピストルだけあったわ」

「おっけ凸るか」

「うい」


『おっ、FILM-0早速仕掛けましたかね?』

『人数差を無理やり作る。強引に見えてIQプレイだすご……』


:解説が言葉失うレベルw

:アジア大会のこじ開ける戦いと違うのか

:すげー順応してる……!


俺はダッシュで階段を駆け上がり、アミアは下る。


だが、敵もただやられることもない。


この建物は2階建てに屋上なので、俺たちの攻めの方がはやいと思ったが、敵の行動の方が一歩はやく、俺が二階に辿り着く頃には窓から出ていく音が聞こえた。


「この近くってどっか逃げれるっけ?」

「いや、それこそエルが降りた家くらいじゃないか」

「なら中に逃げられるより俺が窓から飛び出る方が早いか」

「ミスんなよ?」

「俺を誰だと思ってるんだ」


先ほどの敵のように窓から飛び出た俺は、無防備な背中にアサルトを撃ち込む。


空中撃ちでほんの少し距離もあったため少し外してしまうが、敵が家の中に入るより先にダウンさせることに成功した──。




第5回FLOW世界大会・DAY1 第一試合


第1リング決定 残り人数58人 30チーム






《あとがき》


投稿時間を17:02から18:02に変更します。

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