第33話 元プロさん、4年ぶりに世界大会の場に入場する

夜が明け、ついに世界大会本戦の土曜日になった。

時刻は正午。本戦開始2時間前。


俺とアミアは例のバカデカ建物の会場に来ていた。


「でけー……」

「今から俺たち、ここで戦うのかぁ……」


FLOW世界大会の会場は観客動員も行っている。


そのため入り口は選手用と観客用が用意されていて、観客用にはたくさんの人が並んでいた。


そしてなぜだか俺たちに──いや、俺にみんなが視線を向けていた。


「ははっ! おいアミアー! 俺めっちゃ注目されてるー!!」

「黒サングラスアフロマスクアロハ野郎だからだろ」

「その通りだけどカタカナ多すぎて見にくいんだ」

「ごめんそれ誰視点?」


そう、俺はVTuberなのでリアルの情報を渡すわけには行かないのだ。


だが、『elle』としての情報は幾分かバレている。


し〜たけさんのおかげせいで現代のFLOWプレイヤーにはelleっていう存在の意識があんま無いからいいけど、古のプレイヤーが観戦に来てたら詰むからな。


「ってか黒サングラスアフロマスクアロハ野郎は蓮も同じだろ」

「そりゃ俺が素顔晒してたら翔の正体バレるからな」

「ノリノリでやってたのに」

「全然そんなことなかったぞ? 俺もやりたきゃねーよ!?」


そんなことを話しつつ、注目がめんどくさいのでさっさと中に入る。


選手用の入り口から入ると、観客からはまったく見えない廊下を通り、ある部屋についた。


「選手の皆さんの待機室です。定刻までお待ち下さい」


入り口に立っていたスタッフが教えてくれる。


ってか、明らか外国人なのに日本語ペラッペラじゃん。すご。


そんなことは置いておき、改めて部屋の中を見る。


めちゃくちゃでかい部屋で、大量のゲーミングデスクとゲーミングチェア、そしてPCやらヘッドホンやらが整然と並べられていた。


既に何人かの選手が入場を終えていて、キーボードを叩く音が響いていた。


「みんな練習始めてるな」

「それよりもう変装解いていいんじゃね?」

「きゃっ///」

「素顔照れるやつが大会来んなよ」

「その通りだけどせめて仲間くらいは優しくあってくれよ」


雑談をしつつ、黒サングラスアフロマスクアロハを外す。


……長いな、これ。まぁいいか


「で、これどこでもいいのかな座るの」

「いいだろ多分」

「あ、デスクの上に名前が貼ってありますので、そちらにお願いします」

「「あ、ハイ」」


ダメだったみたいだ。よく考えれば60人も来るんだし、そりゃそうか。


その後、挨拶に来てくれた選手の何人かと軽く話をしつつアップを終え、ついに本戦開始時刻となった。


『──さぁ今年もついにこの時期がやってきました!! 第5回目の開催となるFLOW世界大会! 今年も実況はわたくし────』


FLOWの日本公式チャンネルでは、本戦の観戦ライブが開始していた。


同接は驚異の30万人。

第5回となるのにここまでの人数を誇るのは、さすがの一言である。


会場は、中央に選手のプレイスペースが設けられており、それを囲うように観客の席がサッカー場のように作られていた。


そんな中、選手の入場が始まった。


プレイスペースの真上には4方面の観客に対応したモニターがあり、1チームずつ紹介ムービーが流れ、その後入場していく。


アジア大会上位者から順に入場していくため、俺たちはし〜たけさんたちの後、2番手である。


アメリカなので会場の中では英語でアナウンスが入っている。


英語が苦手な訳では無いが、訳すのはめんどくさいので日本のライブを視聴する。


『さぁまずは1組目!! アジア大会を2大会連続1位で通過したチームキノコ組の入場だあああ!!』


:きちゃあああ!!

:我らがキノコ組!!

:今年も頑張ってくれええええ!!!


実況の盛り上がりに合わせて、物凄い勢いでコメントが流れる。


「いや……しーたけとなめこだからってのはわかるけど、キノコ組ってダサくね?」

「言うな」


『さぁさぁ続いて! 突如として現れた最強の新人と第2回世界王者のアミアのタッグ!! 今回大会で最も期待されているといっても過言ではないでしょう!! チームFILM-0だあああああ!!』


英語のアナウンスも終わり、拍手が巻き上がったのを合図に、俺とアミアは入場する。


ちなみに変装しているのがレイであると隠す必要は無くなったので、アミアの変装は無くなり、俺だけ黒サングラスアフロマスクアロハの状態である。


やっぱ、いいなこの空気感────!!


「おいエル、なんかパフォーマンスしようぜ」

「おっいいね。じゃあれやろ」


そして俺は歩きながら左手をズボンのポケットに入れ、銃の形をした右手を前にまっすぐ伸ばす。


アミアも対になるように前に腕を伸ばす。


『これは無課金おじ◯んだあああ!』


「なぁエル。ゲーム会場でこれはダサくね?」

「なぁアミア。俺も思った」


その後30チームの入場が終わり────



ついに、俺たちにとっては4年ぶりの世界大会が、幕を開けた!!!!!





《あとがき》


世界大会における小説の形です。

「」は選手たちのセリフ。

『』は実況・解説であり、選手には聞こえません。

また、配信のコメントも選手たちは一切見えてません。

以上のことを理解いただいた上で、次回より世界大会をお楽しみください!


また、新作の異世界ファンタジーはじめました。

ぜひ!

https://kakuyomu.jp/works/16818093087456906813/episodes/16818093088182661524

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る