elle vs 過去編

第25話 元プロさん、"元"じゃなかった頃

『ヌクヌクとまたFLOWを始めやがって。すぐに不幸を味わわさせてやるぞelle』




 数日置いてからツイッターのDM欄を見返しても、そこにあるメッセージは何も変わらないし、『Ray』に送られてきているものだ。


 送り主は分からない。捨て垢だったからだ。


 今までツイッターをあまり触ってないせいで設定が適当すぎたか。

 ちゃんとDMの制限もかけておかないとだな。


 っと、それより今だ。


 このDM、どうしたものか……。

 活動者になったからある程度の批判は覚悟していたが、は話が変わってくる。


 Rayがelleであることを知っているのはアミアだけ。


 だが、アミアのおふざけではないと確認は取れたし、アミアはこんな幼稚なことをするような人ではない。


「だとしたら、俺のプレイスタイルを知っているやつ?」


 いや、当時の俺にアンチはいなかったはずだ。

 これも選択肢から除外していいだろう。


 だがそうなると、本格的に分からなくなってきた。


 今パッと考えた情報をまとめただけでも、


・おそらくelleのプレイスタイルを覚えている数少ない人

・elleとRayが同一人物であると確定できる証拠を持っている人


 と、思い当たる人物が全くいないものである。


 だが、『無視する』という選択肢は取れない。

 不幸にさせる、と脅迫されているのだから。


 うーーーむ…………


「どうすりゃいい?」

『この世のほぼすべての品詞が消えてんだわ。もっと修飾しろ』

「人生初めてのツッコミされて驚きを隠せない」


 マジで何も思いつかなかったので、相棒に相談することに。


『いやでも俺、これじゃね?ってのは1つあるんだよな』

「えマジ?」

『Micro Gaming』

「…………あぁ〜」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は自分でも分かるくらいには分かりやすく嫌そうな声で返事をした。


 その単語は3年前から避けてきたものであり、しかし今回のDMに関わっているかもしれないと思えるものだったからだ。


 ──Micro Gaming、通称マイゲム。

 プロチームの事務所であり、5年前から2年間、俺が所属していたチームでもある。


 アミアが"元世界一"なのに対し、俺は"元プロ"であるのには、俺がもともとプロチームに所属していたという過去があるからだ。


 俺はFLOWの初代世界王者になった時にスカウトされたから入ったが、まぁ…………いろいろあって第2回世界大会で優勝した直後に表舞台から姿を消したのだ。


 アミアは俺の実質的に引退に付きそうようにFLOWをやめたので、そこに関しては今も申し訳なく感じている。


 しかし……マイゲムか……。


 いまだに俺につっかかってくることはないと思っていたが、マイゲムなら俺がelleだとわかるかもしれない。


 正式に所属するときに話したことがあるのだから。

 声が同じとかでバレる可能性は十分にある。


「いや、もうマイゲムしか選択肢が無いか」


 彼ら以外に、俺がelleだとバレる理由が無さすぎる。


 となると、マイゲム側も今になって俺にあんなDMを送る理由があるのでは無いか……?


 そう思っていると──


『これだろ。「マイゲム、今年はFLOW本戦出場者出ず」』


 ほぼ確定、か。


 だが、もう一度。


 またしっかり、過去と向き合わないといけないのかもしれないな──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る