第24話 元プロさん、現役選手に善戦する

 俺は自陣塗りをしつつ、相手の編成を再確認する。


 まずは俺と同じ10ガロン。あおちからの報告で、俺のように自陣塗りはしておらず、前線に上がってきていることは分かっている。


 スナイパーとは戦わないように動くだろうから、必然的にクラエクが戦わないといけない。


 だが、エクプロはその爆発の直撃を当てないと2回で倒せないが、ガロンは当たりさせすれば2確。


 飛距離もガロンの方があるため、あおちは対面不利になるだろう。


 なら────


「さくち、自陣塗り頼めるか?」

「そう、ですね。あと少しですし、前線が厳しそう……頼みました!」

「任せろ」


:まぁそれがよさそうだな

:武器相性的にはさくちが射程勝ちしてるが、ワイパーは慣れないと当てるのムズいしな

:あとガロンは簡易シールドで無理やり距離詰められるもんな

:あれ、ワイパーって対物ダメ高いんじゃ?

:高いけど一期生レベルなら壊される前に詰められる

:なるほどなぁ


:レイが……頼もしい!?

:さくちがめっちゃ元気に会話してるのに

:俺たちでするか……

:かわいい

:かわいい

:レイの任せろマジでかっこいい

:声がいいから許せちゃう

:声ニキきちゃあああ


 俺はアミアが作ってくれたインクの道に潜って一気に前線に進んでいく。


 それまでの道で、急速に思考を巡らせる。


 相手のもう一つのシューターはスペシャルウェポンがエナドリスタンドである武器だ。


 エナドリスタンドは、味方に移動速度上昇や復帰時間短縮など、さまざまなバフが得られるものだ。


 スペシャルウェポンは、一定量塗るとメーターが溜まって使えるようになる。

 そのため、そのシューターが自陣塗りを1人で担当しているようだ。


:これだよなぁ一期生の戦略

:スペシャル溜まったら前線にいる味方にスーパージャンプして急に来たと思ったら、エナドリスタンド置くだけ置いてすぐ帰る

:つえーんだよなぁ

:レイたちにエナドリ無いのきついな


 そして、最後はロングエクプロ。


 これに関しては、無理やりどうにかするしかないな。


 そんなこんなで、俺も前線に合流。


『ガロン頼めるっすか!?』

「了解。ロンエクはいいのか?」

『きついっすけど、ガロンの方がきちぃっす!』

「おっけ」


 俺は敵のガロンとちょうど対面になっていたあおちと敵のシールドの前にシールドを投げる。


 そして、あおちを守りつつ立ち位置を入れ替わる。


 すると、敵は自インクに潜りしぶきを上げながら少し後退した。

 所持インク量の分が悪かったのだろう。


 が、そんなに無理して下がれば──


 すると、俺の想像通りガロンの敵が爆散した。


『そこは俺が動ける範囲だぜ?』


 アミアが敵のスナイパーの射線が通らないように立ち回りつつ、ガロンの敵を抜いた。


『ナイスっす!』

「前線上げるか?」

『そう、だな…………敵のスナイパーに注意しながら少し上げようか。シールドをそこに置いたら結構進めるはず』


 アミアは後ろから広く視線を巡らせながらそう言う。


 俺はアミアの指示に従ってシールドを設置する。

 するとスナイパーの射線が俺たちに通らなくなり、敵陣に侵入できそうだ。


「あおち行くぞ」

『はい…………っす』


 あおちは少し歯切れ悪そうに答えた。


 疑問に思いつつも、俺は敵陣に侵入できるような道をインクで作る。


 ────が。その動作は死というアクションにより強制シャットダウンさせられた。


 潜伏をしていたらしいロンエクの、背後からの直撃によるワンパンだった。


「なっ!」

『やっぱまだいたっすか!!』


 あおちの返事の歯切れが悪かったのは、ロンエクの姿が見当たらなかったからのようだ。


 あおちは振り向いて応戦しようとするが、それより先にロンエクの弾が飛んできて、爆散する。


 だがそのすぐ後にアミアが抜いてくれたおかげで、壊滅的状況だけは避けることが出来た。


 また均衡状態か…………。


「強いな……」


 その後もなかなか均衡を打ち破ることができず、それどころか少しずつ押され始めた。


 相手のスナイパーの位置がコロコロと変わるせいで、俺たちの攻め場所が見つけられなかったのだ。


 そして────。


「試合終了…………負け、か」


 39.6pt : 45.6pt


 俺たちの負けだった。


『やっぱ慣れないゲームはまだムズいっすね〜』

『だな。まだまだだなぁ』

「あのレベルの人がたくさんいるとか、このゲームムズすぎだろ……」

『もっと配信とかでも練習しないと、ですね!』


:いや善戦しすぎだろwwwww

:まだまだ……?

:うめぇよ……うめぇよ!!

:※あのレベルは極一部のトッププレイヤーだけです

:レイ! あれあんたらの先輩やで!!

:↑あれ呼びは草

:人間離れしてるかなしゃーないww


「え、あれうちの先輩って」

『マジっすか!?』

『そりゃ強いわけですよ……』

『先輩強いな……』

「アミアの先輩ではないだろ」

『先輩たちにもを勝てるくらい強くなるっすよー!!』

『おー!です!』


:草

:草

:向上心も最強レベル

:おーですだってよお前ら!

:尊い……尊い!

Ray:最高……


『レイさんバレてますよ』

「きゃっ……俺のことそんなに見てくれてるの?」

『……はぁ』


:ため息たすかる



 そんなこんなで配信は進んでいき、2時間ほどで配信は終了した。


 いやぁ、楽しい配信だった……さくちかわいいかった……


 ピコン♪


 そんなことを考えていると、サブモニターから通知音が聞こえてきた。


「DM?」


 俺は送られたDMをクリックして開いた。


 そこには────


『ヌクヌクとまたFLOWを始めやがって。すぐに不幸を味わわさせてやるぞelle』


 脅迫文があった。


 しかし、俺はその文章ではない箇所に恐怖を覚えていた。




「こいつ……なんでelleの名前を?」

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