第16話 元世界王者さん、elleに代わり世界を変える
第5回FLOWアジア大会本戦 第一試合
開始から25分
第5リング収縮開始 残り人数9人 5チーム
第5リングでさらにエリアは小さくなり、今俺がいる街だけが残るようになる。
ここに来てリング運に恵まれてきたな。
「このままハイド継続か?」
『そう…………いや、ちょっと待ってくれ──』
それだけ言い残し、アミアは無言になった。最強IGLの超思考モードだ。
なので、アミアの考えがまとまるまで俺も無言になり、よく耳を澄まして敵の動向を探る。
少しして。
『──ふむ。そうか……よし、読めたぞ』
"こう動こう"ではなく"読めた"。もちろん未来を、である。
ほんと、クレイジーすぎるよな、
:えなんて?
:FPSで聞く単語じゃねえな
:読め、た……!?
:やべえって……
:どうなってんだよ
『はやめに移動しときたいから、とりあえずさらに南下したさきにあるコンテナの中に行ってくれ』
「? おけ」
:えっえ?
:このタイミングでハイドやめるマジ?
:しかも移動距離……
:撃たれるくね?
:ってか1人ってバレるくね?
今いるのはこの街のちょうど中心にある1番デカい建物、それも北側の方。
第5リングの範囲の上の方から、その反対の縁際までの大移動である。
どデカい大会のこの小ささのリングでするには、かなり大きな決断となるが、それを指示したのには他でもない──aMa。
足音には十分警戒して移動を始める。
「って、ほぼいない…………というかこの建物誰もいない……?」
『やっぱな』
余裕たっぷりのアミアの声が聞こえてくる。
そのまま移動してくれ、とアミアから告げられたため、足を止めずに例のコンテナに向かう。
その道中でアミアはそのカラクリを話し始めた。
『まず、今回のリングはかなり希少な"全南下"。それにあの崖エリアが入ってたんだ。この第5の収縮開始というタイミングだとまだ人がほぼいないのは分かるだろ? まぁ、0なのはさすがに驚きだが』
たしかにそれもそうだ。
言われてみれば至極当然のことで、少し理論的に考えれば分かること。
これにパッと気づけなかったのは、完全に俺の怠けだな。反省。
『そして次──「なぜ今、南下するのか」。こーれはなぁ…………正直俺のすごいところ、だな!』
「えっ急にどした?」
『いや、それ以外に言えねえんだよ』
「……今、アジア本戦だからな?」
『いやボケじゃないからな?』
ボケじゃないのか。ボケであって欲しかったんだが……。
こんなこと考えてる俺も相当か、うん……。
:なんかレイのアバター、表情豊かだな
『結論から言うと、第6リングも南下する』
一瞬、どころでは無い。アミアの言葉に俺の思考が停止した。
「えっと、予想?」
『いや? 確信だ』
──馬鹿げてる。
リングの決定はランダムのはずだ。完全なランダムではないためおおよその予測はできるが、確信は不可能だ。
そのはずなのに、アミアの理論は止まらない。
『実は過去にも何度か、似たようなリング展開があってな。東西南北、その何処かの方向にめちゃくちゃ偏るリングが』
『──1番北側に偏ったとき。第3リングだけ西側に逸れたんだが、第6も最後西に逸れた』
『──1番東に寄ったとき、第4で1回北に逸れたが、第6はそのまま東に進んだ』
『──1番西のときは、全部西に進んだ。これは少し話題になったよな』
『──1番南のとき、第3で一度北に逸れた後、第6でも北側によった』
何が何だかわからない。規則性と何も無いように思える。
『そこから俺はリングを研究したんだ。懐かしいな……3年前のあの夏、1日12時間は最低でもやってたっけ』
アミアのその言葉は、文章にすれば儚く思えるほど短いが、俺の鳥肌が立つには十分すぎた。
ゲームの中の、1つの試合の中の、たった1つの要素。それも、運営から直々にほぼランダムですと言われた要素。
それに長時間研究するなんて、俺のelle式の開発とは比にならない。
『──そして見つけたんだ、1つの法則を』
……っはは、おいおい────ランダムの要素で、法則を見つけた?
elle式とは比にならないくらいFLOWの戦略が広がるぞ。
俺は無事にコンテナに身を潜めることに成功し、アミアの言葉に集中する。
『他にも細かいことが複雑に絡み合うが──』
「それは対策されたくないので内密にお願いします」
『了解。ま、結局は──』
第5リングの収縮が、終わる。
『第3リングの方角が、第6リングを決定する』
俺が移動したこのコンテナがスッポリ入る南に、また寄ったのだ。
────今ここで、世界が変わった。
第5回FLOWアジア大会本戦 第一試合
開始から30分
第6リング収縮開始 残り人数7人 4チーム
《あとがき》
週間1位ありがとうございます✨️
aMaの覚醒がかさばったので分割します。
明日、第一試合ラスト。お楽しみに。
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