第4章：折れた骨

2017年11月27日、1時07分 -

ギャングたちの足音が遠ざかり、路地は静寂に包まれた。僕とバスティアンだけが残り、起きた出来事にショックを受けている。アドレナリンが消え始め、疲労感と混乱が押し寄せる。頭の中で何が起こったのかを整理しようとする。バスティアンを見ると、彼の目にも同じ感情が浮かんでいた。この先、ダンテと再び遭遇することは避けられないだろう。

急いで彼に近づき、立ち上がろうとする彼に腕を差し出す。「大丈夫か？」

傷だらけの顔を心配そうに見ると、彼は痛みに顔をしかめながらも笑みを浮かべてうなずく。「ああ、完璧さ」と、いつもの明るさを見せる。

雨が小降りになり始める。バスティアンは負傷した腕を慎重に抱え、痛みの影が見える。骨折は明らかで、早急に治療が必要だ。まずは彼の隠れ家に戻って気持ちを整理しよう。

「ここを離れよう」と言い、彼の横に立ち支えながら進む。足取りは不器用なダンスのようで、まるで二つの魂が消えかけているかのようだ。一歩一歩が肉体的にも精神的にも重い。顔の痛みが先ほどの出来事を思い出させるが、文句は言えない。バスティアンはきっと痛みをこらえているに違いない。額には真っ赤な痕があり、細い血の筋が伝っている。

「気分はどうだい、バスティアン？」心配して尋ねる。

彼は皮肉な笑い声を上げる。「はは、もし僕がひどく見えるなら、相手の拳の方を見てみるといいよ」と、痛みの中でも目に輝きを宿して言う。そのユーモアに、彼の精神が簡単には折れないことを思い出す。

お互いを支え合いながらゆっくりと進む。彼がつまずくたびに支え、僕の体力が尽きかけると彼が肩に手を置く。

ようやく、まるで永遠に歩いたかのように感じながら、目的地に到着した。バスティアンに負担をかけないように急いでコンテナを動かす。「さあ、入って。閉めるのは僕に任せて」と彼を中に入れるのを手伝う。湿った空気が包み込むが、ようやく安全な場所にたどり着いたという安堵が心に満ちる。

中に入ると、次の段階が始まる：彼の腕の手当てだ。「細長い棒か板が二本必要だ。腕を固定するために」と伝える。

「奥の出口近くのテーブルに緩んだ板があると思う」と彼は疲れた声で答える。痛みを感じているはずなのに、その意志の強さには感心する。

板を見つけ、破れたシャツを裂いていく。「よし、バスティアン、こっちに来て」と彼の腕をそっと持ち、一枚の板の上に置く。彼の口から痛みのうめき声が漏れる。「ああっ！なんてこった！」

「ごめん、でも腕を固定しないと」となだめながら、自分の手がわずかに震えるのを感じる。初めてのことで、これ以上傷つけたくない。

「いやいや、違うよ、君の顔のことさ。まるで紫の風船みたいだ」と彼は僕の顔を見て笑い出す。その笑い声につられて小さな笑みがこぼれる。少し乱暴に二枚目の板を腕に置くと、今度は本物の痛みの叫びが上がる。

「どうしたんだい、バスティアン？自分の顔を見たことはあるかい？僕のと大して変わらないよ」と冗談を返す。笑いは張り詰めた空気を和らげる。

「これから布切れで板を縛るよ。痛かったら言ってね」と注意しながら、余計な痛みを与えないよう慎重に板を固定する。

「ねえ、レアン、どうやってこんなこと覚えたの？」と彼が尋ねる。

「孤児院にいたからね。骨折は日常茶飯事だったし、僕が何度か原因になったから、固定方法の基本を学んだんだ。罰として無理やり教えられたけど」と笑いながら答える。

最後に、残った布切れで腕を吊るための三角巾を作り、腕が適切な位置にくるようにする。手当てを見て、ほっとした満足感が湧く。

「さて、これからどうするか考えないと。今やったのは腕を固定しただけで、ちゃんと治せる人が必要だ。それからこの場所からおさらばしよう」と言う。しかし彼の態度は急に変わり、真剣な表情になる。

「ねえ、レアン、君はここから出て行くべきだ。僕のことは置いていって。結局、君には十分迷惑をかけてしまった」と彼の言葉に胸が痛む。もし出会ったばかりなら、そのまま背を向けていただろう。でも、これまで一緒に過ごしてきたのに、彼はそんなことを言うのか？

「何を言ってるんだ、バスティアン？一緒にここを出るんだ」ときっぱりと答える。

彼は涙を浮かべそうになっていて、驚く。彼は簡単に泣くタイプには見えない。「できないんだ。ここを離れるわけにはいかない。ごめん」とつぶやき、瞳は涙をこらえている。

「どうして？」彼の反応に困惑して尋ねる。「この街を出なければ、ダンテとあのギャングたちに骨を折られるんだぞ」と訴えるが、彼は内なる葛藤に囚われている。

「ここを離れられないんだ。これが彼らから僕に残された唯一のものだから」と頬を一筋の涙が伝う。

「誰のことを言ってるんだい？」とささやくように尋ねる。

「この場所は両親から残された唯一のものなんだ」と彼は告白する。その言葉に驚く。

「君の両親？彼らはどこに？」と戸惑いながら尋ねる。

バスティアンは話し始める。「このカフェは、かつて両親が持っていたんだ。第三次大戦の前はね。彼らはここで働くのが大好きで、出会ったときからの夢だった。でも戦争で全てが変わった。父は空軍の元パイロットで、徴兵された。2002年9月18日にエリスタロから海外に旅立った。そのとき母は妊娠したばかりだったけど、父はそれを知らなかった。彼は戻らず、戦闘中行方不明と宣告された。僕は2003年7月5日に生まれた。

母は戦争に覆われた国で僕を育てるために一人で立ち向かった。カフェで働いていたけど、お金も食べ物も常に不足していた。ほとんど食べられない日もあった。食べ物を売っているのに皮肉だよね。両親はこの場所をいつも夢見ていたけど、母一人では全てを背負えなかった。彼女は結核を患い、病気が彼女を弱らせ、店を維持することを困難にした。それで政府にカフェを差し押さえられた。ここは僕たちの唯一の家で、住む場所もなかったのに、残されたものが無情にも奪われたんだ。

でも母は厳しい冬に僕たちが死ぬのを許さなかった。役人に気づかれずに再び店に忍び込む方法を見つけた。でも最終的に病気が彼女を襲い、僕が5歳のときに亡くなった。それ以来、ほとんど一人で生きてきたんだ。遠い親戚のジギーだけが、残された家族との唯一のつながりだ。両親から残されたのはこの場所と、母のお気に入りのナイフ、そして父のパイロットジャケットだけなんだ。それらは簡単に手放せない大切な思い出なんだ」

彼の話を聞いて、ショックを受ける。喉に塊ができ、息が詰まりそうだ。「ごめん、バスティアン。本当に知らなかった」とつぶやく。

彼は悲しげな表情を浮かべている。「謝らないで。君のせいじゃないよ」と彼は理解ある言葉を返すが、その目には悲しみが宿っている。「これで僕がここを離れられない理由がわかっただろう。君は遠くへ行くべきだ。あのギャングとの問題から離れてね。僕はいつも通り自分で何とかするよ」

黙って彼の言葉を考える。くそ、どうすればいい？彼を置いていきたくない。でもここに留まるわけにはいかないし、ダンテの戦いに行かなければ、彼らに見つかって全身の骨を折られるだろう。しかも彼は腕がこんな状態で戦えるはずもない。それでも何かが彼を置いていくことを拒否している。バスティアンは僕に強い印象を残し、無視できないつながりができている。彼を見捨てることはできない。

「バスティアン、僕があの戦いに行くよ。ダンテのゲームに乗って勝ってやる」と決意に満ちた声で言う。その言葉が空気を満たす。

彼は僕を見て、凍りつく。「でも、レアン、それは危険だ。ダンテの本当の意図もわからないし、罠かもしれない」と心配そうに警告する。

ためらわずに答える。「僕の見たところ、もう彼の罠にかかっている。それが唯一の選択肢だよ」

彼の顔には心境の変化が見える。「わかった、僕も一緒に行く。君を一人でその罠に落とすわけにはいかない」と宣言し、彼らしい笑顔が戻る。「まだ丸一日準備する時間がある」と楽観的な調子で付け加える。

それでも彼が行くのは良い考えだとは思えない。しかし、彼の考えを変える力もなさそうだ。「わかった、バスティアン。一緒にやろう」と言い、腕を差し出す。手は固く握り合う。どんなものにも立ち向かう準備ができた。「ありがとう、レアン」と彼は答え、その心からの感謝が満ちる。

「でもその前に、腕の治療が必要だ」と強く促す。「何だって！？僕の腕は完璧だよ」と叫ぶ。この子は頑固だ。彼の腕は明らかに骨折している。

「無理しないで。明らかに折れてる。助けてくれる人を知っていると思う。彼女は僕の大切な友達なんだ」