第5話  パフェを食べながら!

 待ち合わせの場所、僕等は駐車場に着いた。それらしい2人組はいない。僕と天野さんは車から降りてキョロキョロと周囲を見回した。すると、白い軽自動車から女の娘(こ)2人組が降りて来た。どうやら、僕等を品定めしてから降りてきたようだ。


「電話の人ですよね?」

「うん、僕は崔。こっちが天野さん。そっちは電話の22歳2人組やね?」

「はい、私は妙子、こっちは梓です」

「食事するには早いなぁ、まずはパフェでも食べる?」

「はい」

「天野さん、この近くにカフェかファミレスってあります?」

「あるよ、みんな、車に乗ってくれ」



 ということで、ファミレス。女性陣はパフェとコーヒー。僕達もパフェとコーヒー。妙子はちょっとぽっちゃり、キレイじゃない長い黒髪、メガネっ子で、正直に言うとちょっとダサイ。もっと服装や髪に気を遣えば垢抜けるだろう。勿体ない。梓は、かわいかった。まあ、正直、若葉や未唯、こづえ、弥生などと比べると見劣りするが、まあ、かわいい。2人とも小柄だった。妙子が157,梓が156らしい。


「2人は同じ職場? それとも学生時代の友達?」

「私達、ネットで知り合ったんです。私はフリーターです。梓は……」

「私もフリーターだったけど、今は何もしてない。妙子の家に居候させてもらってる」

「居候できるくらい、仲がええんやね」

「うん、仲いいよね~!」

「うん、仲良し!」

「梓ちゃんは、あまり喋らない?」

「うーん、そんなことないけど」

「電話の時から妙子ちゃんばかり喋ってる気がするねんけど」

「梓は人見知りするんです」

「へえ、妙子ちゃんの方が社交的なんやね」

「まあ、そうかも」

「今日はなんでテレクラに電話したん?」

「いやぁ、暇だったからちょっと遊んでほしいなぁと思って。崔さん達は?」

「僕等は彼女がおらんから、彼女になってくれる女性を探してるねん」

「2人とも、彼女いないんですか?」

「おらんよ。天野さんを見てや! こんなに男前やのに彼女がおらんのやで」

「本当、イケメン」

「私は、崔さんの方が好みかなぁ」

「お、梓ちゃんは僕を選んでくれるの? 嬉しいけど、それは珍しいなぁ」

「天野さん、喋ってくれないから」

「天野さん、言われてますよ、何か話してください」

「うーん、2人とも彼氏はおらんの?」

「いない」

「いない」

「梓ちゃんは彼氏がいるよううな気がするけどなぁ、雰囲気だけで判断してるけど」

「いない、彼氏と別れてこっちに来たの」

「元々はどこに住んでたん?」

「香川」

「あ、岡山県民とちゃうんや。でも、まあ、近いね」

「近いから妙子と親しくなれた」

「天野さん、もう少し喋ってくれないと僕しんどいです。天野さん、バトンタッチ、僕はしばらく黙ってるから、その間、天野さんだけで2人の相手をしてください。2人も、天野さんになんでも質問してや」

「天野さんは彼女がいないの?」

「うん、いない」

「いつ頃、別れたの?」

「結構、前だよ」

「どうして別れたんですか?」

「俺が口下手だから、想いが伝わらなかったのかも」

「天野さん、もっと喋りましょうよ。そんなに私達に興味が無いんですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど」

「私は天野さんに興味がありますけど」

「妙子ちゃんは、俺の何が知りたい?」

「好きな女性のタイプは?」

「うーん、わからん」

「芸能人で例えるなら?」

「うーん、わからん。好きなタイプって無いのかもしれない。会ってみて惹かれるかどうかじゃないの? こういうのって」

「天野さん、かなり遊んでるでしょう?」

「そんなことないよ」

「嘘! 絶対に遊んでる。何人の女の娘を泣かせたんですか?」

「泣かせてない、泣かせてない」

「天野さん、軽そう」

「梓ちゃんまで。俺のどこが軽そう?」

「外見。茶髪、髪型、ファッション、香水」

「これは、全部今の流行りだから」

「流行りの恰好をするところが軽そうなんですよ。崔さんも服に気を遣ってるみたいだけど、天野さんとはちょっと違う。香水も天野さんとは違うみたいだけど」

「男2人で同じ臭いやったらキモイじゃん」

「妙子は完全に天野さん狙いだね」

「そういう梓は崔さん狙いでしょ?」

「好みが分かれるのはいいね、喧嘩にならなくて」

「私は、梓とは喧嘩しないけどね」

「よし、話をまとめよう! まずはみんなで連絡先を交換しよう」


 僕の提案で、全員、連絡先を交換する。まあ、僕が妙子に連絡をすることは無いと思うが、一応、礼儀として聞いておく。


 ここで変なことがあった。僕は携帯がスマホになってから携帯操作が苦手になったが、ガラケーの時はまだ時代についていくことが出来ていた。画面を見なくても入力できる。この時も話しながら画面を見ずに入力していたら、“あづさ”と入力したはずが“あくま”になっていた。こんな派手な入力ミスをしたのは初めてだった。ただの偶然だと思いつつ、なんとなく気になった。


 その日は、それで解散した。天野さんが乗り気じゃないのがわかったからだ。


「天野さんは乗り気じゃなかったですよね?」

「うん、まあ」

「妙子は論外として、梓はちょっとかわいかったでしょ?」

「うーん、俺の好みじゃなかったから」

「まあ、連絡先の交換まで出来たんやから、今日はそれでOKでしょう? こういう成功体験は自信に繋がりますから」

「俺は2人に連絡しない」

「そこは天野さんの判断で。ほな、また女性を探さないといけませんね。また街に繰り出しましょう!」

「うん、今度はもっとキレイでカワイイ子を狙うわ」



 妙子達とはこれで終わりだと思っていた。だが、翌日の日曜の夜、梓からぼくに電話がかかって来た。


「はい、崔です」

「梓です。崔さん、今度、デートしませんか?」


 一瞬、考えた。今、彼女がいない。梓はちょっとかわいい。そいて、僕は暇だ。うん、断る理由は無い。


「ええよ、デートで行きたいところはある?」



「私、ホテルに行きたいです!」







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