第52話 初依頼
ゴブリンの魔石を回収に来たフレアとコレット。
コレットが、「うわぁ」といいながら解体用ナイフを使ってゴブリンの魔石を取り出すと、フレアも見様見真似で他のゴブリンの死体から魔石を取り出す。
フレアはすぐに解体の仕方を覚えて、フレアが3体、コレットが2体のゴブリンから魔石を取り出した。
「ほんとにフレアちゃん物覚えが早いよねぇ」
そう言って感心していると、
「ねぇねぇ次はどこに行くの?」
とキラキラした目で聞いてくる。
フレアのお尻に犬のしっぽの幻影が見えたコレットは、次の目的を説明する。
実はさっきギルド登録したときに、失敗してもペナルティのない依頼をひとつ受けていたのだ。
依頼内容は、お金持ちが出した依頼で、この周辺に群生している「ルペシェ」という甘い果実を採ってくるというものだった。
このルペシェの実は、数が少なく、町にはなかなか流通しない。
全く採れないわけでもないのだが、欲しい時には売っていない、そんな果実だ。
ルペシェの木の植樹もあるようなのだが、なぜかうまく実をつけないらしい。
なので欲しい時は野生の実を採りに行くのが手っ取り早い。
依頼人は子どもの誕生日が近い貴族らしく、なんとかその実を使ったケーキを用意したいとのことで、割のいい報酬の依頼だった。
運のいいことに、コレットが依頼が貼りだされる掲示板を見に行ったときにちょうど職員が貼りだしたので、すぐにはがして依頼を受けることにしたのだ。
貼りだされた依頼は早い者勝ち。
もちろんランクによっては受けられないものがあるが、それはFランクでも受けられる依頼だった。
運よく依頼をゲットしたが、ルペシェの実が見つかるかどうかも運任せだった。
とりあえず、木になる実ということで、顔を上げながら実を探して歩く。
ボケーっと口を開けて上を見て歩いているが、なかなか見つからない。
年頃の女の子がしていい顔ではない。
「そんなすぐに見つからないよねぇ」
コレットはがそういうと、
「そなんだね~」
とフレアが答える。
このままずっと歩いていても見つからなかったら一日無駄になる。
「よし、それじゃあ魔物を探して討伐していこうか?魔石なら売ってお金になるし、フィアウルフとかなら安いけど牙や毛皮は売れるみたいだしぃ」
「うんっ!そうしよう」
明らかにテンションのあがったフレアを見て、
(討伐の最中にルペシェの実が見つかれば採集しよう)
コレットはそう切り替える。
二人は魔物を探して森の中に入る。
なるべく深入りしないように、浅い部分だけを探索していく。
しかしいてほしい時に限って魔物もみつからない。
「うーんなかなか見つからないねぇ」
とコレットが声をあげると、
「あっちにたくさんの魔物の気配がある」
とフレアがその方向を見つめる。
「じゃあそっち方面に言ってみよぅ」
とコレットはフレアが見つめた方向へ進むが、フレアは
(かなり数が多そうだけど、まぁ大丈夫かな)
と判断してコレットのあとに続く。
目的地は、崖のすぐそばにあった。
奥の方を除くと、それこそ魔物の姿は見えないが、それらしい洞穴の入り口が顔をのぞかせている。
「あ~いかにもな洞穴だねぇ」
「うん。間違いなくあそこにいっぱい魔物がいるね」
虫型ドローンに洞穴の中を確認させると、中にはウルフ系の魔物の巣窟となっているようだ。
中規模だが、所謂ダンジョンというものだった。
中にはかなりの数がいるみたいだ。
「ちょっと数が多すぎるみたいだね。少しづつおびき寄せられればいいんだけど」
「うーん無難に避けた方がよさそうねぇ」
フレア一人ならここの魔物が全部いっぺんに襲い掛かってきても問題なかっただろうが、コレットを守りながらだと万が一のことがある。
魔物狩りより、友達の方が大事だ。
「そうだね。ここはちょっと避けようか」
とフレアが言うと、コレットが
「あっ!」
という声をあげる。
「どしたの?」
と聞くと、コレットが指さす先、崖の下側に生えている木にルペシェの実が生っている。
依頼書に書いてあったイラストと特徴が一致するので、間違いなさそうだった。
崖の高さは約10メートルほどだが、崖のへりに沿って手を伸ばせばギリギリ届きそうな位置だ。
崖の下からだと木が高すぎて届かなさそうなので、崖のへりから採ることにする。
しかし洞穴が近いので、魔物に気付かれないようにそーっと崖のへりを歩く。
万が一魔物に気付かれても、コレットを抱きかかえて崖の下に飛び降りれば大丈夫。そのあとに自分が木によじ登って採ればいいや、と考えてコレットのあとに続く。
二人で足音を立てないようにそーっと、そーっと崖のへりを歩く。
そうして魔物に気付かれることのないまま無事に実のそばまでたどり着いた。
フレアがコレットの左手をもって崖のへりで踏ん張り、コレットがへりから身を乗り出して右手でルペシェの実を掴む。
「「やった!」」
二人して初依頼の成功を喜んだその瞬間!
洞穴から大量のフィアウルフが勢いよく飛び出してきた。
まるで獲物が油断する瞬間を狙ったようなタイミングだ。
フレアはコレットを自分の後ろに庇い、剣を構えようとしたその時、
突然二人の足元が崩落する。
「しまっ・・・!」
コレットと手を放してしまっていたせいで、抱きかかえて遠くへジャンプすることもできなかった。
一瞬の出来事で、二人は崖の崩落へ巻き込まれる。
ドォーーーーーーーーン!
大きな音とともに二人は崖下へ落下したのだった。
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