第20話 銀河帝国准将

 さて、今後のことについてシエナと相談しないとな。

 特にホーチ王国の行った一件については目に余るものがある。

 こんなに怒りを感じるのは久々だ。

 どうしてやろうか。とりあえず帝国の法律に触れないか検討しないと。

 そう考えていると、後ろから、

「今日こそは話してもらうぜ?お前の強さの秘密やら仲間のことやら色々な!」

 そういうテッドと、その横でウンウン頷くネリーの姿があった。


(あー、そういえば説明せずに引き延ばしてたな。うーんちょっとめんど・・・)


『艦長。一度情報を整理して、ある程度まで話しておいた方が、今後の活動が円滑に進むと判断します。人手が足りません。現地に協力者がいることは悪いことではありません。面倒がらずにお願いします』


(シエナは鋭いな)


「わかったよ。じゃあ時間を決めて男爵も交えて話をしよう」

 そう言うと、テッドが

「えっ?男爵様も一緒にか?緊張するから嫌なんだが」

 そう言って二の足を踏みだした。しかしネリーが

「何言ってんの?男爵様も、ということは大事な話に決まってるじゃない。なんで嫌がってんのよ」

 そう言ってテッドを納得させて一旦解散した。


 俺は一旦安宿に戻り、部屋でシエナと相談することにした。

 別に外でも通信は可能だが、込み入った話は邪魔の入らないところで集中して行いたい。



『国同士の争いに介入しないといったが、俺は正直ホーチ王国のやり方が許せない』

『殲滅しますか?』

『いや、その前に確認したい。今更かもしれないが、今後の行動によってはかなりこの惑星の政治に介入することになるだろ?それって帝国法的にはどうなのかと思って』

『未開惑星への私的な政治介入は重罪ですが、シエナ・ノーザンディアの立て直しと同艦の保護は元帥命令です。現時点での明確な違反行為はないと考えてよいと判断します』

『もし今後、例えばホーチ王国を制圧した場合は?』


『同国は、ラクテ銀河帝国准将の滞在するこの街に毒を放つという敵対的行為を行ったという事実があります。艦長が亡くなる事態が発生すれば、艦の存続の危機に直結します。ひいてはこの惑星をアデルから守ることができなくなり、惑星消滅の危機に陥ります』

『おぉう』

『よって、帝国に弓を成した小国など滅ぼしたところでなんの問題もないと判断します。ログを開示すれば正当性も主張できます』

『なるほど』


『さらに、帝国軍法第123条に、宙域司令官不在時の特例がありますが、これに鑑みればこの星系、いえこの惑星系を含む銀河系での最高司令官は艦長となります』

『・・・この銀河には帝国軍は全くいないのか』

『まだ資材不足により精査は不可能、よって断言はできませんが、座標が未知を示しておりますので、その可能性は非常に高い、と判断します』

『俺がこの銀河の最高司令官って。この前まで大尉だったんだけど』

『今は准将閣下です。マザーフレームである私が確認、登録しておりますので、この立場は確固たるものです、アリア・ドゥーネ宙域での承認事項なので、帝国本国にも伝わっているのは間違いありません。今となっては確認不可ですが』


 更にシエナは

『中期的目標として、旗艦を含む艦隊の立て直しも含まれております。ありとあらゆる資源を確保することが初期目標の要となりますので、ホーチ王国の油田を接収しましょう。国ごと押さえてしまったほうが、後々の行動が容易になります。大陸に拠点を作ることも作戦の早期実現に役立ちます。何なら帝国直轄領として設定し、この惑星の星都に指定してもよいかもしれません』と説明する。


『惑星を無理やり帝国に編入させるのは帝国憲法違反では?』

『アデルから未開惑星を防衛するのは帝国の義務でもあります。この場合、防衛が優先されます』


『わかった。ではホーチ王国の制圧作戦の実行時期は?』

『現地までの移動時間を考えると、すぐにでも可能です。艦長を前面に押し出す必要があるのでお勧めできませんが、それでも今あるドローン等や現在ロールアウト予定の航空戦力で敵国王都の制圧は容易です』

 

 計画としては、リーベル鉱山の地下から南東にある無人島までを地下鉄で結ぶ予定だが、それまでのつなぎとして現在、リーベル鉱山に作った簡易兵器工場が稼働中であり、そこから航空戦力が間もなくロールアウト予定である。


『俺が前に出る分は一向に構わない』

『私としては司令官である艦長に前には出てほしくないのですが、本作戦については安全性を考慮する必要がないほどですので、承認致します。それと、制圧後は隣国となるエルヘイム王国との折衝も必要になるかと思います。ですので艦長はエルヘイム王国の王族に接触を図り、関係を築いてください』

『えぇ王族の相手?』

『他に適任者が、というより帝国臣民が艦長しかおりません』

『ぐ・・・』


『私が代行しても構いませんが、人間同士のことなので艦長の方が適任と判断します』

『了解した。それと、男爵たちにはどこまで話す?』

『隣国を滅ぼすところまでは説明して良いかと思います。私たちの所属についてはぼかして説明するべきです。真実を話してもまだ理解できない段階であるのと、我々の戦力がこの惑星の統一可能な域に達するまでは、全力行動はできませんので、説明する意味が無いからです』

『惑星の統一?』

『統一するかどうかは戦力が揃ってから判断しても構いません。しかしそうした方が対アデルに対しての準備は捗ります』


『アデルのことについて知らせるべきだと思うか?』

『我々の行動の正当性を担保するためにも、ある程度の開示は必要かと思います。ただ一度にすべて説明しても現地民は受け止めきれないでしょうから、段階的で良いかと思います』

『うん、大体俺も同意見だな』

『懸念事項はやはりアデルです。作戦の初期で出現すると艦長の身に危険が及びます』


『そうだな、では、戦力の増強と、旗艦並びにマザーフレームの防衛を最優先事項として指定する。付随して惑星資源の確保だ。次にこの惑星に存在する各国の説得もしくは占領だ』

『了解いたしました』

『それと・・・この惑星の名前はなんていうんだ?』

『それぞれの土地によって呼び方が異なりますが、【ディアナ】と呼称している地域が多いようです。それに伴い、【ディアナ教】というのがこのあたりの最大宗教のようです。最も、いまだ天動説の認識ですので、自分たちの住む大地のことを主にそう呼んでいるようです』

『惑星ディアナか。いいじゃないか。今後はそう呼称しよう』

『了解です。アップデートしました』



 (よし、それでは男爵の館に向かうとしよう。

 テッドとネリーと一緒にお昼に向かうことを伝えており、了解ももらっている。そろそろ時間だ)

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