第15話 マルヴィナ先生はお見通し!?
朝起きて鏡に姿を映すと、自然とため息がこぼれた。そこに映った私の顔は酷いものだ。こんな泣きはらした顔を学院の皆に見られたら、どんな噂を立てられるか分かったもんじゃない。
髪も結んだまま寝たから、波打ってぐしゃぐしゃに絡まっている。
キースみたいなさらさらの髪なら良かったのに。
鏡の中で指に絡まる赤毛を見ながら思い出したのは、風に揺れる綺麗な金髪。
ふと鏡に写る窓枠が目につき、昨夜のことを思い出す。
キースってば本当に無茶苦茶だ。それは今に始まったことじゃないし、朝、目が覚めたらいなかったのも、らしいといえばらしい。
きっと、あの窓から出てったんだろうな。
泣き疲れて寝ちゃうとか、私のこと子どもっぽいって思われたかな。実際、キースから見たら私は子どもだろうけど。
ブラシをドレッサーに置いて立ち上がる。振り返った先には、さっきまで寝ていたベッドがあった。
何も覚えてないけど、目が覚めたらベッドの上だったってことは、キースに運ばれたってことよね。また、お姫様抱っこされたのかな。
気恥ずかしさで、頬が熱くなっていく。
ダメだ。今日は何を見ても、昨夜のことに繋げちゃう気がする。休もう。
深呼吸をして、冷静を装って食堂に下りると、すでに朝食を終えたロン師が食後のお茶を飲んでいるところだった。
「ミシェルちゃん、少し顔が赤いけど大丈夫?」
「あの……少し調子が悪くて。今日は休もうかと」
「遅くまで起きておるからそうなるのだ。体調の管理、時間の管理、そういったことを怠らずにだな」
「はいはい。もう、おじいさまは心配性なんだから!」
「しかしだな。夜遅くに──」
「はいはい! そろそろ出勤の準備をしないと遅れますよ!」
説教を始めそうになるロン師の言葉を遮ったマルヴィナ先生は、テーブルの上に置かれたカップを下げながら急かした。
ロン師はため息をこぼすと、渋々といった様子で立ち上がる。
食堂のドアが静かに閉ざされるまで、その後ろ姿を見送ったマルヴィナ先生は、私を振り替えってにっこり微笑んだ。
「辛いことがあったら、いつでも相談するのよ。私は学校の先生である前に、ミシェルちゃんのお姉さん、だからね」
「先生……ありがとうございます」
「それと。今度はちゃんと玄関から入ってらっしゃい、て彼に伝えておいてね。窓から落ちたら大怪我しちゃうわよ」
ふふふっと笑うマルヴィナ先生の言った意味が、一瞬、分からなかった。まばたきを繰り返して考え、思い至ったのはキースのこと。
えっ、もしかしてキースが来てたことに気付いていたの?
もしかして、ロン師も知っているのだろうか。
食堂のドアを振り返った私は、言い訳一つ思い浮かばないくらいには、混乱と羞恥心に気持ちがどうにかなりそうだった。
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