学園と修さんと私
第26話、青春、再び- 夢を追いかける花たち
『pppp...』『パチ』「ふう。目覚まし前に起きれましたね」
6月のある朝、異世界に来て二カ月目の始まり、私はアントン工科高等学院の門をくぐった。
新たな学舎は、灰色のレンガに白い陶器の配管が絡みついている可憐な建屋だった。正直に、前世がある私に学生生活とは面映かった。
「おはようございます」「橘さんですね、ようこそ。どうぞこちらへ」
まず案内されたのは、職員室の一角にある小さな会議室だった。そこに集まっていたのは校長と担当教員、そして事務職員が数名。控えめだが、入学式をしてくれた。
「橘瑞樹さん、ようこそアントン工科高等学院へ」
校長が温かな微笑みを浮かべて私に挨拶する。彼の背後には、この学院のスローガン「実りあれば頭を垂れる」と刻まれた額が掛けられていた。
「アントン工科高等学院は、エーテル技術と自然の共存を目指し、技術者と人材を育成しています。君がここで多くを学び、成長してくれることを期待しています」
短い言葉だったが、校長の言葉からこの学校が追い求める理想の一端が伝わってくる。エーテルと自然を共に学ぶこと、人として成長することを重視しているようだ。
「はい!」
そのまま、別室に案内され、担当教員が簡単にカリキュラムについて説明してくれた。担当のエヴァンス先生はここの創立者の子孫というシルバーとピンクに近いパープル色の髪をもつ女性だった。
アントン工科高等学院では、1年から3年で基礎的なエーテル技術と一般教養を学び、4年からはより高度な実践的授業やプロジェクトが始まる。
優秀な生徒は飛び級もできるらしい。この体での初めての学生生活。学生時代は何をしても楽しかった。だから、この時間を大切に過ごしたいと思っていた。
「それでは瑞樹さん、さっそくクラスへ案内します。まずは今日の授業を見学してみましょう」
エヴァンス先生に連れられて廊下を歩く。エーテル配管からは優しい藤の香りが漂っていて、少し、立ち止まりかけてしまう。
「ああ」「瑞樹さん?」「ああ、いえ。すいません」
教室に到着すると、すでに授業が始まっていた。私は一番後ろの席に腰を下ろし、エーテル工学の基礎講義を静かに見学することにした。
教官はミニひまわりの植木鉢の前でエーテルの特性とエネルギー変換の仕組みについて解説し、さらに植物がどのようにエーテルを蓄え、循環させているかを話している。
「エーテルを自然から学ぶことで、我々の技術は成り立っています。植物や生態系と共に歩むエーテル工学こそ、持続可能な未来の鍵なのです」
授業の最後に、教官が私を生徒たちに紹介してくれたから、休み時間にクラスメイトたちが集まってきた。「はじめまして!」「ねえねえ、異世界人ってほんと?」「ああ、うん」「あ、購買いった?」新しい仲間たちと共に学ぶという、どこか懐かしくも新鮮な感覚が胸に広がった。
昼食を取りに学食にみんなと向かう。改めて、リリーやこの学校の先生、そして新しい仲間たち。彼らとの出会いは、私に新たな学びの喜びと目標を与えてくれたように感じて、自然に笑顔になっていた。
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