第16話、ギルド登録
「あれ?」「橘さん、どこに行こうと?」「あ、すいません」。ラベンダー色のエーテル配管をなぞっていれば、たどりつけたはず...?『ぴっ?』「あ、文鳥?」「ちーちゃん、捕まえて!」「え」『ピー』「えっと、ちーちゃんは水浴びがしたいそうです」『ぴ』「....こんな精度はなかったはず....」
クロックタウンのギルドは、中心街から少し外れた場所にあった。
その建物は、重厚な石造りの壁と巨大なエーテル時計が特徴的で、威厳と静けさを漂わせていた。
「橘さん、今回は正式に同行していただくので、まずギルドでのボランティア登録が必要です」
リリーによると、私のような一般市民が魔物調査に協力するためには、ギルドでの許可と登録が必要だという。異世界から来た訪問者としての立場もあり、少し緊張感が漂う。
受付でリリーが私の背景を説明すると、職員は特別視することもなく、慣れた様子で手続きを進めてくれた。異世界人であっても、一市民として対応されるこの空気に、不思議な安堵感を覚え、職員と軽く談笑できた。
手続きが完了し、リリーが今回の件について担当者を呼びに行ってくれる間、私はロビーで待つことにした。広い空間には打ち合わせテーブルが並び、隊員たちが装備の点検や地図の確認に集中しており、これから私も仲間になるのだと思えば、気が引き締まった。
しばらくして、リリーが今回の担当者を伴って戻ってくると、担当者は早速調査概要を説明してくれた。
「調査対象は隣街との境目にある鉱山付近です。ここでエーテル濃度が急上昇しており、魔物の発生が懸念されています。通常のエーテル濃度変動では説明がつかない、異常な状況です」
「そんなに異常なんですか?」私が尋ねると、職員は頷く。
「ええ、今回は異例です。そこで研究所にも応援をお願いしています。通常、調査には大型の調査ギアを展開するのですが、準備と組み立てに時間がかかるため、橘さんのギアの探知機能を補助的に使わせていただければと考えています」と担当者が期待を込めて言うと、リリーが補足してくれた。
「まだテスト段階ですが、橘さんのギアには青いバラのエーテルバッテリーが使われており、エーテル濃度の変化を音で感知できる仕組みです。小型で追加バッテリーが不要なので調査ギアが設置される前に、手早く異常の兆候を察知できます。今回のような調査に役立つはずです」
2人の視線にグッと気持ちが上がる。私はゆっくりと首肯した。
簡単な打ち合わせが終わるや、私たちは地図室に案内され、鉱山周辺の詳細な地図やエーテル変動のデータを確認することになった。
渡された資料には過去のエーテル変動や魔物の発生記録、すでに今回研究所とギルドが検討した案が記されていた。
「この地図によると、鉱山周辺にはエーテル濃度が急上昇する地点がいくつかあります。今回の計画に沿って‥この位置ですかね、探知機能を試せば、ギアの効果も確認できそうです」
私が地図を指差して言うと、リリーも頷いた。「そうですね。橘さんのギアで調査ギアを組み立てる前に現地でエーテルの濃度変化が正確に感知できれば、効率的です」
私はギルドから正式な派遣指示が出るまでに、さらにギアの調整を続けることにした。
手の中で光る青いバラのエーテルバッテリーが、街の守りに役立つ日を待ちわびているかのように輝いていた。
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