第15話、新たな力
『ppppppp....pp』「あ、目覚ましを消し忘れてた」「たちば、なさん、今日は起きてましたか」「ええ、おはようございます」「おはようございます」
昨夜はエーテルギアの改造に夢中になり、気づけば研究所を出る頃には夜遅くなっていた。
今日はいよいよ実験を行う日。
期待と緊張が入り混じり、目覚ましより先に目が覚め、軽くジョギングをして、目覚ましを消して研究所に向かった。
研究所には、もうリリーがスタンバイしていて驚いた。「橘さん、いよいよギアのテストですね」「ええ、今日はよろしくお願いします」。『にゃー!』『ワン!』「頑張って!」「応援します!」「いやー、初めてのギア試験とか、ドキドキだよね」
どうやら、いっぱいの応援団が来てくださった。
嬉しくて、笑ってしまう。
この改造したギアには「青いバラ」のエーテルバッテリーが組み込んである。新たに音でエーテル濃度を探知する機能と、光が当たった先で音が鳴る機能を加えたのだ。
体育館ぐらいの広さの実験室にはダミーのエーテル発生源がいくつか用意してある。「まずはエーテル濃度の反応から見てみましょう」。
楽しそうなリリーに促され、私はギアのスイッチを入れた。青いバラのエーテル光が溢れ、耳元には微かに音が届いてきた。
このギアはこの音の強弱によって、近くのエーテル濃度の違いを感じ取る仕組みだ。
駆け足でダミーに近づくと、大きな音になった。
「いい感じですね!」
リリーが、珍しく興奮している。
「ええ!順調です!」
私も興奮が抑えきれず、大きな声が出てしまう。
さらに、もうひとつの機能である「光が当たった先で音が鳴る機能」も試してみた。
光を向けたところで音を立てて反応を確認する機能で、猫探しと逆に追い払う機能だ。
『BAN!!』
「成功だ!」「おめでとうございます!」「やったね!」『ワン!ワン!』「よし、仕事にするかー」『うにゃ!』「ほら、行こうかー」
リリーとそのままハイタッチ。無事に動いたギアの青いバラのエーテルが発する淡い光の煌めきを感じ、達成感が広がった。もう、笑いが止まらない。
「いろいろ試しても?」
「もちろんです」
昼頃には実験もひと段落し、研究所のカフェでリリーと食事を取ることにした。
エーテルの効率化について話し込んでいると、ふとリリーが「橘さん、ギルドと自警団についてどれくらいご存知ですか?」と尋ねてきた。
「少し本で読みましたが、街の安全を守るための組織ですよね?」
リリーは頷き、丁寧に説明してくれた。「はい。ギルドは国の省庁の一つで、街と街の間の安全を守り、災害派遣にも出動します。街の内部は警察が担い、自警団は準公務員として、災害や魔物の発生時にギルドに協力する体制を取っています」
「リリーさんも地方公務員として、研究所からギルドに応援に行くんですね」
「はい。研究所も街の機関の一部として、もしもの際は即座に対応できる準備をしています」
リリーは少し真剣な表情で、続けた。
「実は、橘さんが来られた魔法嵐のあと、世界樹の近くで魔物が発生しそうだと、魔族の街から連絡がありました」
「魔族の街から?」
「ええ、魔族はエーテル質に変化した存在ですから、自分のエネルギーを使うエーテルギアは負担が大きいのです。なので、危険な現象が発生した場合、こうして近くの街に連絡を入れてくれます」
なので、少し会えなくなるとリリーはいう。
「よければ手伝わせて貰えませんか?改造したギアの探知機能が役立つかもしれません」
リリーは少し驚いた様子だったが、すぐに微笑んで「ありがとうございます。では、午後はギルドへ行きましょうか」と言ってくれた。
私はこのギアが早速役立てるかもしれないという喜びと新たな冒険の予感で、もう楽しくなっていた。
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