第17話、ミントと赤煉瓦の街
「瑞樹さん、どこにいくのですか?そっちは逆方向、海へ行くホームです。」
「え?」「あと、言いにくいのですが、その、シャツが前後逆です」「あっ!」
担当者からの指示で集まった日、クロックタウンのギルドで待っていたのはクロッカスの花と一体化した魔族の青年、リョウだった。
「藤堂亮介と言います。智大大蔵ギルドのエーテルギア運用責任者です。リョウと呼んでください。」
「はじめまして、リョウさん。橘瑞樹です。お世話になります。」私は軽く頭を下げた。
蒸気列車で15分、私とリリーを含めたクロックタウン側はリョウの話を聞いていた。
「実は、今回の通報者は僕でして。先日湖の清掃ボランティア中に気になることがあったんです。」
リョウは真剣な表情で続けた。「花の様子がおかしかったんです。色が変わっていたり、萎れていたり……」
「花の様子が? それは心配ですね。」花はこの世界のエーテルの流れに影響を与える重要な要素だ。
「ええ、だから早めに調査をした方が良いと思いました。特に最近、天空の城が通過してエーテルの変動が激しいですし。万が一を考えてクロックタウン側に連絡しました。」
「それでリョウさんが?」
「松明は自分の手で持たないと。今日はまあ、僕の街は列車で15分なんで迎えにきました」。
-そうそう、責任者が率先して動く。私は初めて会った時からリョウを好きになっていた-
仕事ではあるが、大きな木々や、エーテルの流れを感じる花々が線路沿いに咲いている景色に、私は興奮していた。
「すごい、赤煉瓦の花束みたい。」私は思わず感嘆の声を漏らし、リョウは嬉しそうに破顔した。
「智大大蔵にようこそ!」
智大大蔵は様々な花が咲き誇り、赤いレンガの壁に這わされた配線が独特な景観を作り出している。
特に、あちこちから香るミントの香りが心を和ませる。聞けばエーテル質がミントメインなんだそうだ。
「さあ、ギルドに向かいましょう。」
キョロキョロしている私に対して、クスりと笑いながら、リョウが道案内をしてくれた。
道すがら、朝飯がわりに私は少し買い食いを楽しんだ。普段は食べないが、旅情に誘われたのか、地元の特産品である甘ピタパンとハニーハーブティーのしょっぱ甘い匂いが食欲をそそった。
「これ、うまいですね!」私は笑顔で言った。
「ですよね。私も大好きです」リョウは嬉しそうに頷いた。
ギルドに到着すると、智大大蔵のギルドメンバーたちが集まっており、早速打ち合わせを始める。
「今日は調査のための準備を進めます。」クロックタウン側のリーダーが声を上げた。「まずは、瑞樹さんからギアの説明をお願いします。」
私は自分のギアついて説明した。「私のギアには、青いバラのエーテルバッテリーが使われていて、エーテル濃度の変動を音で探知することができます。」
メンバーたちは興味深そうに耳を傾けてくれて、私の話に引き込まれている様子が伝わった。
「それでは、まずは橘さんをメインとした先遣隊を組んで、解析ギアの設置場所を決めましょう。」リョウはそう言って、私たちは地図を広げてポイントを検討し、5つに絞った。
先遣隊はリョウとリリーを含めた5人。ギルドが用意してくれた昼食を持って外に出たが、まだ、なんとなく、私はピクニック気分だった。
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