第3話 初期化

「これから、よろしくお願いします!」


「はぇ?」


突如としてそんなことを言い出した女性、日向。

何がよろしくなのか、鯨馬にはわからなかった。


「あの、よろしくってどうい・・・・・」


「あ、すみません!その、鯨馬さんって詳しいみたいですし、私何も知らないので色々教えてもらおうと思って。だめ、ですか?」


「ダメってわけじゃないけど、、、」


そこで鯨馬はふと顔を上げた。

そこにいたのは、セミロングの茶髪に濁りのない栗色の大きな目をした小動物のように加護欲を掻き立てる少女だった。


「む、今ちっちゃいって思いましたか?これでも成人はしてるんですよ。」


(いや、そんなことは思ってないです)

「可愛い」


「えぅ、あの、その、あ、ありがとうございまひゅ…」


(何だよ可愛いかよ!)


唐突に褒められ赤面する日向。どうやら褒められなれていないらしい。

それを知ると揶揄いたい気持ちが湧いてくる。


「かわいいなぁ日向ちゃん、かわいいなあ!」


「や、やめてくださぃぃ」




☆☆☆



一通りからかって満足した鯨馬。

側には耳まで真っ赤にしてうずくまった日向がいる。


「よし、ひとまずレベル上げに勤しむかな」


「れ、レベル上げ?」


瞳を潤ませ見上げてくる日向に鯨馬のチキンハートはノックアウト。


「くっ、心がもたぬ!・・・・あれ、そういえばゲームのデータは引き継がれてるのか?スペル選択があったからダメそうだなー。」


人差し指と中指を親指にこすり合わせる。これがマジカルアーツ•オンラインのステータスの開き方だ。


(チュートリアルなしってだいぶ厳しくないか?)


「何してるんですか?」


「あぁ、ステータスの確認」


『player name:不労鯨馬 Lv.1

 spell:【アークノヴァ】 

 health:100/100』


すごいのーまるだー。

記憶にあるのならこれだったのに。


『player name:『king』flow_gamer Lv.99

 spell:【アークノヴァEX】

 health:100/100』


EXとはレベルが50を超えた時に解放されるスペシャルアーツだ。

キングというのは世界一位にのみに与えられる称号で、これも消えてしまったので喪失感が半端じゃない。けど、サブキャラの育成だと思えばある程度はマシになる。しっかし、レベル1かぁ・・・・はぁ。

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世界が変質した話 おもゆ。 @BronzeEmpror

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