第2話 仕事

 第四部隊に配属されて初めての仕事は執務室での事務作業。隊長から仕事を貰って席に着く。もしかしたら俺だけ仕事の量がとんでもなく多いかもしれないと思ったがそんなことはなかった。むしろ、新人だからか俺の仕事はみんなと比べてかなり少ない。


 そういうところはちゃんとしてるんだな。そう思いながら仕事を進めて行く。


「「「「………」」」」


 誰も喋ろうとしない。俺がいることでこうなってるのか、それとも元々こうだったのか。どちらにせよ、こんな空間じゃ作業の効率が落ちてしまうな。いても居なくてもどっちでも良いみたいなこと言ってたし、物は試しだ。


「隊長、自分の部屋で作業しても良いですか?」

「……どうしてかしら?」

「効率よく作業を終わらせる為です。俺は1人の方が早く終わらせられます」

「……分かったわ。部屋での仕事を許可します」

「ありがとうございます。失礼します」


 俺は一礼してから執務室を出る。これで集中して作業が出来る。早く終わればそれだけ自由な時間が作れて、鍛錬や勉強に力を入れることができるな。俺は自室に戻って作業を再会する。


「ふぅ、これで仕事は終わりっと」


 昼食も取らずにずっと進めていたので相当早く終わった。後は自由時間は、飯を食ったら鍛錬に使うか。書類はまた後で出せば良いだろう。


▲▲



「ふぅ、こっちは終わったわ。2人は?」

「…終わった」

「こっちも終わりました」

「お疲れ様。2人もこの後の時間は各々好きに使いなさい」


 私は体を上に伸ばす。外ではもう日が落ちて来ている。ずっと座りっぱなしだったから体が固くなった気がするわね。


「なら、私は鍛錬してくる」

「私も鍛錬をするか。どうだ? 久しぶりに手合わせでもするか?」

「ん、望むところ」


 2人は立ち上がって執務室を出た。あの2人は相変わらず仲が良いわね。私はカップに入っている紅茶を飲みながらそう思った。



▲▲



「……リゼはあいつのことをどう思う?」


 シーファから突然尋ねられる。あいつとはおそらく、今日入って来た男の人を指しているのだろう。


「………別に、なんとも思わない」


 これが私の答えだった。彼に対する感情は無だ。必要以上の会話もしないし、居てもいなくてもどちらでも良いというのが私の本音だ。


「まぁ、私も概ね似たような感情だな。……ん?」


 訓練場の明かりがついている。消し忘れた…訳では無さそう。中から音がする。たぶん、今日入って来たアルバ? って人が訓練しているのだと思う。私たちが訓練場に入ると、アルバも気づいたらしく、私たちに対して少しだけ頭を下げる。


「お疲れ様です」

「お前、一体いつからここにいたんだ?」


 アルバは大量の汗をかいている。あの汗の量は1時間やそこらではない。アルバは少しだけ外を見た後、私たちを見た。


「大体ですけど、6、7時間くらいですかね」


 少しだけ驚いた。まさかそんなに長くここにいたとは思わなかった。シーファも私と同じで驚いているように見える。


「お2人はこれから鍛錬ですか?」

「そうだな」

「そうですか。では、俺はこれで失礼します」


 アルバは私たちに一礼して訓練場を出た。それにしても……


「ねぇ、シーファ。これ」

「ん? ……これは」


 魔法などの練習の為に使われる人形が頭、腕、足、胴体と射抜かれている。これは弓だろうか? 彼は弓を使う人、ということなんだろう。


「まぁ、どうでも良いだろう。ほら、始めるぞ」

「ん、分かった」


 私は人形に魔力を流すと穴が見る見る塞がっていく。本当に便利だ。この人形は高かったらしいがこの特性のお陰で壊れる度に買い替えなくて済む。


「では、始めるぞ」

「いつでも」


 私は剣を構え、シーファは杖を構える。訓練場では私たちの手合わせの音がずっと鳴り響いた。

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